BOB DYLAN THROUGH THE LENS OF JERRY SCHATZBERG

レンズを通したボブ・ディラン

October 2018

 彼らの親密さは、シャッツバーグの写真を見れば一目瞭然だ。どのショットを見てもディランはとてもリラックスしていて、素直に自分をさらけ出しているように見える。イメージはユーモアと親近感でいっぱいだ。彼は夢のような被写体だったとシャッツバーグは言う。周囲にあるものに溶け込み、何にでも自然に接していた。お互いに強い信頼で結ばれていた。

 

「私はモノや小道具でいっぱいのスタジオを用意した。彼にそれらを渡して、彼がそれをどう使うかを見たかったんだ。彼はどんなモノも、とてもうまく使いこなしていた。彼も撮影を楽しんでいたよ。なぜなら、それは半分遊びみたいなものだったから」

 

 

 これらのポートレイトには、ディランの素直でナチュラルな表情が写し込まれている。見たままの彼が、そこにいる。例えば、ペンチと女性の絵を持っていたり、タバコを持って佇んでいたりする写真があるが、そういった写真は、ディランの本質的な何かを切り取っている気がする。

 

 シャッツバーグは、主にスタジオ内でディランを撮影したが、一番有名な写真で、アルバム『ブロンド・オン・ブロンド』のジャケット写真となった一枚は、ニューヨークの街中で撮られた。とても自然な出来だった。それはディランが彼に公式に依頼した、唯一の写真だった。

 

「私は“ブロンド・オン・ブロンド”が何のことだかよくわかっていなかった。まぁ、今でも何のことだかよくわからないけれど・・。でも私は『もちろん撮影はOKだ』と言った。その日は、なんだかスタジオの外に出たい気がして、彼にミートパッキング・ディストリクト(かつて精肉工場があったマンハッタンの地区)へ行こうと誘ったんだ。子供の頃、日曜日の午後に、よくそこへ行って、ステーキとポテトを食べたことを覚えていたから、親しみがあるエリアだった。もともとは屠殺場があったところで、独特の雰囲気を持っているんだ」

 

 その結果、傑作が生まれた。レンガの壁をバックにした、ちょっとピンボケ気味のディランの写真は、永遠に人々の心に刻まれることとなった。

 

「クルマでロケハンしていたら、いい感じの場所があったから、ただそこで写真を撮っただけだった」

 

 

 シャッツバーグとディランが最後に会ってから、すでに長いときが過ぎた。しかし、ふたりは今でも連絡を取り合っている。写真集のなかで発表されたイメージは、音楽界における不世出の天才の本質を捉えるだけではなく、彼らの絶え間ない友情を証明するものでもある。

 

 「私は時にクレイジーで、時にワンダフルで、時にそれら両方を備えている人だった。そんな人間は、一人しかいない。ミュージシャンとしても、友人の一人としても、そんなヤツはディランしかいないんだ」

 

 

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