CELEBRITY CRUISE , ASUKAⅡ
洋上の社交場「飛鳥Ⅱ」で行くクルーズ旅
September 2024
海に浮かぶ豪華客船で極上の船旅を約束してくれる「飛鳥Ⅱ」が、2025年に最後の世界一周クルーズを終え日本国内を中心としたクルーズへ舵を切る。それに伴い、短期間のクルーズや国内の都市から都市への移動型クルーズが増え、今後は一層気軽に利用しやすくなるという。水平線を眺めながら過ごす快適な船内、美食やエンターテイメント、そして寄港地で受けるおもてなし。日本のクルーズの先駆けとして長年愛される飛鳥Ⅱの魅力を探る。
text chiharu honjo
@Tsuneo Nakamura
クルーズと言えばいくつもの国を歴訪し、世界一周やアジア、オセアニアを訪れる1~3か月のロングクルーズを想像しがちだが、飛鳥Ⅱではワンナイトクルーズや2泊~1週間のショートクルーズ、1~2週間のゆったりとした日程のクルーズといった、ゲストのニーズに合わせたクルーズプランも充実している。今回取材したのは太平洋沿岸を北上し、津軽海峡を横断し、秋田と青森を周遊するプラン。寄港地で竿燈まつりとねぶた祭を観覧する7日間の旅とともに飛鳥Ⅱの全貌をお届けする。
各国のクルーズ船が行き交う世界でも有数の客船ターミナル「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」を飛鳥Ⅱはゆっくりと離岸した。デッキではウエルカムドリンク片手に乗客が手を振り、桟橋にいる人々は黄色いハンカチーフを振りながら壮麗な豪華客船の姿が見えなくなるまで見送る。徐々に人々が小さくなり、横浜ベイブリッジの下を静かにくぐり抜けて進み出した。クルーズ船に乗って優雅な旅に出る、誰しも胸が高鳴る瞬間だ。
乗客定員数872名の飛鳥Ⅱは、海の上にいるということを忘れるほど静かだ。揺れが抑えられるように設計されている上、その日の天候や状況を見極めながら航路をとるため大きく揺れることはあまりない。デッキに出て海を見渡せば水平線が広がり、海風が爽快この上ない。大海原のスケールの大きさを実感できるのが船旅の醍醐味である。
飛鳥Ⅱの玄関である「アスカプラザ」。
見晴らしの良いラウンジ「パームコート」。
乗船時にはウェルカムドリンクが振る舞われる。
旅の始まりに華々しく出迎えてくれるのは、エントランスのアスカプラザ。二層吹き抜けの開放的な空間でホテルのフロントの役割を果たすレセプションがある。螺旋階段を上がるとショッピングエリアになっており、フォーマルシーンからカジュアルシーンまでクルーズの装いが揃うセレクトショップ、銀座・和光の高品質な商品、宝飾、雑貨、土産物まで豊富に取り揃えた4つのショップが並ぶ。
乗船時にウエルカムドリンクが振る舞われるパームコートは、天窓から陽光が降り注ぐ美しい空間。モーニングタイムは日替わりスムージーを飲みながら、ナイトタイムはバンドの生演奏に耳を傾けながら寛げるため、滞在中に幾度となく訪れる癒しのスポットだ。
最上級客室「Sロイヤルスイート」。
スイートルームはアスカデッキと呼ばれる眺めのよい上層階に位置する。海を臨む開放的なバルコニーがあり、リビングやバルコニーでインルームダイニングサービスを愉しむことができる。いずれの部屋も、ドレスアップ時の衣服を収納するのに十分なスペースのクローゼットや広々としたバスルームが備わり、ここが船の中だということを忘れてしまうほど居心地がよい。
特にSロイヤルスイートは88.2㎡という広さを誇る特別な客室。名画が飾られた高級感あふれるリビングルームには人間国宝による工芸作品やバーコーナー、独立した寝室があり、至れり尽くせりのサービスを受けながら優雅な時を過ごせる。デスクにはPC、プリンターも備わり、衛星回線によるインターネットが随時使えるため、自宅リビングさながらの快適さである。
陽光に包まれる「シーホースプール」。
眺望のよい「グランドスパ」の露天風呂。
「アスカ アヴェダ サロン&スパ」のヘッドスパルーム。
24時間利用可能な「フィットネスセンター」。
プールとジェットバスがあるトップデッキは、爽やかな潮風を感じながらプールサイドのデッキチェアでリラックスできる心地の良い場所。泳いで体を動かした後はジェットバスでリラックスするのもよいだろう。また、トレーニングマシンのあるフィットネスセンターには時間帯によってはインストラクターが常駐しており、トレーニングのアドバイスもしてくれる。
フィットネスセンターの向かいには、植物由来のヘアケア・スキンケアのブランドとして世界で知られるAVEDA(アヴェダ)初の洋上サロン&スパもある。ヘアカットやヘッドスパができるヘアサロンの他にスパメニューがあり、要望に合わせてスパスペシャリストが組み立てるカスタマイズトリートメントが好評を博している。完全個室のヘッドスパルーム、2人でトリートメントが受けられるペアルームもあるので乗船したら予約(有料)したい。
注目すべきは、最上階に位置する「グランドスパ」。ジェットバス付きの大浴場で身体をリフレッシュできるだけでなく、ドライサウナやスチームサウナもあり、水風呂に入ってととのうことが可能だ。オープンしている間は自由に利用できるため、露天風呂にゆったりと浸りながら大海原や夕日を眺めてくつろぐ至福のひと時を過ごせる。
「フォーシーズン・ダイニングルーム」。
飛鳥Ⅱのソムリエが山梨県にある駒園ヴィンヤードへ赴き、甲州ぶどうを育てて収穫したオリジナル限定ワインや、純米大吟醸「天狗舞」、本醸造「櫻正宗」、特別貯蔵8年の「晴耕雨読」など飛鳥クルーズオリジナルの酒も取り揃えており、「フォーシーズン・ダイニングルーム」を含むすべてのダイニングで楽しめる。いずれもお土産として購入することも可能。
「フォーシーズン・ダイニングルーム」の朝食メニューは和食。
船内には6つのレストラン&カフェがある。アルコール以外はすべてクルーズ代金に含まれているため、気の向くまま好みのレストランへ足を運べばよい。
エレガントな空間の「フォーシーズン・ダイ二ングルーム」は、朝食と昼食は和食、夕食は本格的なコースが用意される。フレンチやイタリアンのコース、会席など、シェフが毎日違う献立を考案するため、長い船旅でも飽きてしまうことはない。料理に合わせるドリンクについても、ソムリエがその日の料理に合うワインを数種類セレクトしているので、相談しながら選ぶこともできる。ディナー時はドレスコードがあり、日々装いを変えるのもクルーズならではの演出。フォーマルやインフォーマルの日はドレスアップして、華やかな雰囲気を存分に愉しみたい。
プレミアダイニング「ザ・ベール」。
有料のレストラン「海彦」。
ビュッフェレストラン「リドカフェ&リドガーデン」。
船内には、淹れたてのコーヒーや紅茶をいつでも飲める街角のカフェのような「ザ・ビストロ」や、ビュッフェスタイルレストラン「リドカフェ&リドガーデン」もある。リドガーデンのモーニングは、毎朝オーブンで焼き上げるパンや目の前で作る卵料理、フレンチトーストやパンケーキなどバラエティに富んだメニューが自慢。昼食はさまざまな料理が並ぶスタイル、昼食後には焼き立てピザや肉厚の自家製ハンバーガー、アイスクリームなどの軽食も用意され、いつも多くの乗客で賑わっている。
さらに、一部のスイートルームのゲスト専用のプレミアダイニング「ザ・ベール」、厳選された海の幸を味わえる有料のレストラン「海彦」もある。江戸前寿司や刺身、一品料理などを銘酒とともに堪能できるというから是非とも訪れたい。
船首に位置する「ビスタラウンジ」。
イブニングハイティー<スタンダードセット> ¥13,200(取材時の税込価格・1セット2名分)
特別な日には、一日6セット限定のイブニングハイティーをオーダーするのはいかがだろう。ルームサービスもできるが、船首で水平線を一望できるビスタラウンジにセッティングしてもらうのがよい。スタンドに飾られたオードブルやデザートが優雅に運ばれ、紅茶の他に、エレガントでバランスの取れた味わいの辛口シャンパーニュ「ローラン・ペリエ ラ キュベ」のハーフボトルも用意されるので、グラス片手にキャビアやローストビーフサンドを堪能できる。
オリジナルカクテルの「ワールドクルーズ」(左)と「メイデンヴォヤージュ」(右)。
メインバー「マリナーズクラブ」。
ラウンジ&バーも充実している。英国風のインテリアが落ち着いた雰囲気を醸すメインバー「マリナーズクラブ」では、飛鳥クルーズオリジナルカクテルからマリナーズクラブのシグネチャーカクテル、バランタイン17年、ローヤルサルート21年、マッカラン12年シェリーオークといったウイスキー、ヘネシーやレミーマルタン XOなどブランデーまで豊富にラインナップしている。
「ギャラクシーラウンジ」では、さまざまなショーやコンサートが開催される。写真は飛鳥Ⅱオリジナルプロダクションショー「CINEMAⅡ」。
映画館「ハリウッドシアター」。
カジノコーナー「モンテカルロ」。
華麗なショーやエンターテイメントも見逃せない。本格的なショーやコンサートが繰り広げられる大ホール「ギャラクシーラウンジ」、毎日異なる作品が上映される映画館「ハリウッドシアター」に加えて、カジノコーナー「モンテカルロ」もある。ここではルーレットやブラックジャック、スロットマシンなどをコインで楽しめる。ディーラーが遊び方を教えてくれるので、初めてでも十分に愉しめるだろう(日本籍の船のためコインは現金等に交換できない)。
タイムスケジュールは、毎日届く船内新聞「アスカデイリー」という紙面に記載してあるのだが、プログラムがびっしりと埋まっており遊びきれないほどある。参加したアクティビティ等で居合わせた乗客と歓談し交流することも、船旅の楽しみのひとつだ。
各寄港地では歓待のイベントが待ち受ける。場所によってさまざまだが、ブラスバンドや踊り、パフォーマンスなど地域の人々による温かいおもてなしが人情味あふれており実によい。着岸したら下船して周辺を自由に散策してもよいし、寄港地発着の観光ツアー(有料)を申し込むこともできる。今回はスケジュールに、秋田の竿燈まつりと青森のねぶた祭の観覧、海上からの花火大会鑑賞があり、大いに盛り上がった。
飛鳥Ⅱでのヴァカンスは、非日常の景色、美食の時間、アクティビティ、どれをとっても満足のいくものばかりで、さながら海の上に浮かぶ高級リゾートといった印象だ。客室からエレベーターでデッキを移動するだけで上質なサービスが待っており、目覚めればそこはもう寄港地。快適すぎて虜になりそうである。
そして滞在中、幾度となく感じたのは、どこへ行っても笑顔のスタッフがおり、飛鳥クルーズの一員という矜持の下、最高のホスピタリティーを発揮してくれること。すべてが機械化しつつある昨今、多くのスタッフが丁寧に歓待してくれる場所は他に類を見ない。
2025年夏頃には「飛鳥Ⅲ」も就航を予定しており、現在ドイツ・パペンブルクで造船中だという。贅を極めたロイヤルスイートや6つのダイニング、最先端のホログラフィックスクリーンに映し出される美しく斬新な映像体験など、すべてにおいて至高の空間を実現しているというから期待したい。
郵船クルーズ
TEL 045-640-5301(クルーズデスク/月~金10:30~17:00)