A WICKET SENSE OF HUMOUR
俳優:ヘンリー・ロイド=ヒューズ
インタビュー
August 2021
ヘンリー・ロイド=ヒューズが、自身について赤裸々に語ってくれた。
クリケットとユーモアをこよなく愛する、生粋の英国紳士の一面を垣間見られるだろう。
text tom chamberlin
photography sandro baebler
fashion direction sarah ann murray
Henry Lloyd-Hughes
ヘンリー・ロイド=ヒューズ
1985年英国生まれ。2005年に映画『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』でロジャー・ディヴィスを演じた経験をもつ。その後もテレビドラマや舞台を中心に活躍している。
ヘンリー・ロイド=ヒューズは非凡な人柄の持ち主だ。社交的でカリスマ性に満ちたその話術には一瞬不意をつかれるが(クリケットに例えることが好きな彼に先んじて申し上げると)、彼の“球筋”に慣れてくると、歯切れがよく前向きな会話のキャッチボールはとても楽しくなる。その振る舞いにはもっともな理由がある。彼は俳優としてさまざまな役柄を演じ、英国のテレビ界でトップランナーのひとりとして活躍してきた。代表的な役としては、『The Inbetweeners(原題)』に登場する学校のいじめっ子マーク・ドノヴァンや、英国によるインド統治時代を舞台とした大人気作『Indian Summers(原題)』のラルフ・ウィーランなどが挙げられる。長編映画でも、古典文学を脚色した『アンナ・カレーニナ』や『Madame Bovary(原題)』で主要な役どころを演じて頭角を現した。そして何より彼は、ファッションに情熱を注いでいるのだ。
インスピレーションを与えてくれる人物と、その理由を教えてください。
作家のスティーヴン・ベレスフォードです。彼はすこぶる話がうまいんです。話を聞くためだけに、わざわざ彼に会いに行ってもいいくらいですよ。逆に耐えられないのは、僕流に言うと、やたらと口数が多いのに“打率が低い”人ですね。
今や貫禄たっぷりで、順調にキャリアを築いていらっしゃいますが、これまで何に苦労されましたか?
非常に波がある世界ですが、どんなときも自信を持つこと、失敗してもめげずに挑戦することですかね。大変なのは、落ち込んでいるときでさえも“立ち上がってテンションを上げてくれ”と言われること。これが難しいんです、昔から。
前進し続ける力の源は何でしょう?
スポーツですね。僕は自分のすることをしょっちゅうスポーツに例えるんですが、これがとても役に立つんです。撮影中、100人や200人のクルーがいるところで出演シーンを成功させようとする俳優の孤独さは、何千人もの観客の前で打者線に立ち、ボールの回転のわずかな違いに集中しようとする打者の姿と重なると思います。そこには興味深い教訓があると心から信じているんです。もし本気で極める気になったら、いつの日か、スポーツ心理学を使って演技の謎を解明する本を書くでしょうね。本の出来は非常につたないでしょうが(笑)。
では、仕事以外で熱中していることは?クリケットでしょうか?
ええ、クリケットは大好きなスポーツのひとつで、プレーにも試合観戦にも目がありません。もし自分のチームのために活躍して得点を重ねられたら、“大作映画への出演が決まりました”と電話で言われるくらい有頂天になるでしょうね。演技スタイルに影響を与える人物は?フィリップ・シーモア・ホフマンですね。僕にとっては驚くべき先見の明の持ち主で、彼のキャリアに対しては大いに畏敬の念を抱いていました。
怖い映画を撮るとしたら、行きたい場所はありますか?
カリブ地域へは一度も行ったことがないから、行ってみたいですね。クリケットの歴史が素晴らしいから、というのが唯一の理由ではないですよ。
ジュエリーをたくさん身に着けられますよね。何の影響でしょう?
ヒップホップカルチャーですね。ちょうど僕らが若い頃、ブームでしたから。ヒップホップで重視されるのは、恐れることなく自分を表現すること。あのド派手なスタイルに関して僕が大好きだったのは、対極的なイメージを持つアイテムを大胆に組み合わせていた点です。自分も常にその方向を目指しています。うまくいくときもあれば、駄目なときもありますが。僕は安易にものを選びません。長い時間をかけて徐々に増やしてゆくんです。だから、2本の指輪は二十歳のときから着けています。人を混乱させるのも好きですね。10年前から“dad(パパ)”と書かれた指輪を着けているけれど、子供はいないんです(笑)。
特にファッションに対して気をつけていることはありますか?
僕は概して、あらゆる洋服の流行に遅れないようにしています。けれど、今は視覚的な刺激にあふれた時代だから、ファッションに対して気後れする必要はないでしょう? 僕の場合は、スタイリッシュな人たちの写真を何日でも夢中で見ていられるから、むしろ自制すべきかもしれませんけどね。見ているとものすごく満足するんです。
もしゾンビが大発生したら、まず何をしますか?
きっと、たくさん持っているクリケット用バットのうちの1本を取ってきて、武装するでしょう。幸いなことに3本持っていますから、1本は僕用で、もう1本は妻用。運が良ければ、3本目はあなたのものということで(笑)。
本記事は2016年7月23日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue11