北川美雪の「良い服」は人生を変える
Good Clothing Can Change Your Life

VESTAのスーツコンサルタント、北川美雪氏が、「パワーオブスーツ」をキーワードに、スーツを単なる服ではなく「人生を変える武器」として捉え、その魅力をお伝えしていく。

【第3回】エレガンスは生き方を映す鏡

Sunday, April 6th, 2025

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マルコ・スポーラさん

www.reggianistretch.it/

 

 

マルコさんいわく、このセットアップは「機能性とエレガンスが共存する新時代のスーツ」だとか。

 

 

 

「服はただの布ではありません。それは人生を映す鏡であり、自分自身を表現するためのツールなのです」

 

 レッジャーニ・グループのゼネラルマネージャーであり、かつてロロ・ピアーナのAPACテキスタイル部門の副社長を務めたマルコ・スポーラさんは、スーツの持つ力について語ります。

 

 長年にわたりラグジュアリーファッション業界のトップ層と仕事をしてきたマルコさんは、「良い服」は人生を変えると強く信じています。スーツは単なる仕事着ではなく、それを着ることで内面が変わり、ひいては周囲の見る目まで変わると言います。

 

「イタリアには『L’abito non fa il monaco(服が僧侶を作るわけではない)』ということわざがありますが、私はむしろその逆で、『服はその人を語る』と思っています。人は初対面の5秒で印象が決まります。その瞬間に信頼や洗練を感じさせるかどうかは、服装が大きく影響するのです」

 

 スーツには自信を与える力がある、とマルコさん。姿勢を正し、振る舞いを洗練させ、相手に敬意を示します。そして何より、「自分がどうありたいか」を形にするものなのです。

 

 

 

新時代のエレガンスとは

 

 マルコさんは、過去のエレガンスはある種の「我慢」と表裏一体だったと指摘します。硬いウールスーツや堅牢な革靴、厳格なドレスコード。しかし、現代において装いの役割は変化しています。スマートワーク環境が普及する中、人々はリラックスしながらも洗練されたスタイルを求めるようになった、というのが彼の意見です。

 

「私がレッジャーニに惹かれた理由の一つは、伝統と機能性の融合です。レッジャーニは1970年代に世界で初めてウール生地にライクラを取り入れたテキスタイルメーカーであり、その結果、エレガンスを損なわずに現代のライフスタイルに適応する服が生まれました」

 

 

マルコさんが着用するレッジャーニのセットアップは、優れたストレッチ性と着心地の良さが特徴。その手元にはジャガー・ルクルトのレベルソ。伝統ある時計と最新の高機能素材の組み合わせが、現代のラグジュアリーの新しい形を示しています。

 

 

 

 日本の消費者は、ユニクロのヒートテックに代表されるように、機能性を重視する傾向があります。マルコさんは、ラグジュアリーと機能性を融合させたレッジャーニのファブリックが、日本市場でさらに支持を得ると確信しています。電車や飛行機で頻繁に移動するビジネスパーソンにとって、ストレッチ性と通気性を備えたウェアは、まさに現代の戦闘服です。

 

「今の時代、誰もが快適さを求めています。エレガンスとは、単に見た目の美しさではなく、着る人が心地よく過ごせることも含まれているのです」

 

 

 

新しい自由を生むビジネスウェアの未来

 

 レッジャーニのファブリックは、世界中のラグジュアリーブランドで使用されており、スーツだけでなくシャツやコートなど、さまざまなアイテムに採用されているそうです。

 

 インタビュー当日、マルコさんは現代的なカットのオーダーメイドレッジャーニセットアップを着用していました。オフィスウェアがノーネクタイへと進化する中、上質な素材で作られた洗練された柔軟性のあるセットアップが、今後ますます増えていくのでしょう。

 

 

クラシカルなデザインに、動きやすさを追求した機能性をプラス。レッジャーニのファブリックは、ラグジュアリーと快適さの両方を叶える、とマルコさん。

 

 

 

 現代の装いには、より多様なライフスタイルに対応する柔軟性が求められています。リモートワークの普及により、ビジネスウェアは従来のフォーマルウェアから、より洗練されたデイリーウェアへと進化しました。オフィスと在宅勤務を行き来するビジネスパーソンにとって、シワになりにくく、快適に着用できる服は必要不可欠なものになっていると言えるでしょう。

 

 

 

装いは自分自身への投資

 

 マルコさんは、服を選ぶ際、人は無意識のうちに「なりたい自分像」を思い描いていると考えているそうです。

 

「適切な服を選ぶことは、未来の自分に投資することと同じです。例えば、若いビジネスパーソンが上質なスーツを仕立てるとします。それを着ることで姿勢が良くなり、自信がつき、行動が変わる。すると周囲の評価も変わり、結果的にキャリアにも良い影響を与えるのです」

 

 マルコさんの考えるスーツは、単なる衣服ではありません。それは、新たな機会の扉を開き、人生を向上させる鍵なのです。

 

「上質なスーツはその人の存在感を高めます。それは、話し方や動作にまで自然な影響を与えます。だからこそ、服選びは慎重に行うべきなのです」

 

 

フラップ付きのポケットがジャケットに程よいカジュアルさをプラス。レッジャーニのファブリックとデザインが融合し、自由度の高いビジネスウェアとしての可能性を広げている。

 

 

 

未来を形作るツールとしての装い

 

 ビジネスの世界では、第一印象が極めて重要で、成功者の多くは、自分の外見に気を配ることで信頼感を与え、チャンスを引き寄せている、とマルコさん。

 

「服装は自己表現の一部です。どのように見られたいか、どのように振る舞いたいかを考え、適切に選ぶことが重要なのです」

 

 

マルコさんが着用する現代的なカットのオーダーメイドのセットアップは、高級素材ならではの質感と品格があり、ネクタイを足したクラシカルなスタイルにも違和感なく馴染みます。

 

 

 

 マルコさんにとって、適切な服を選ぶことは、自分自身への投資であり、自分のイメージを向上させる手段。それは、単なるブランドや価格の問題ではなく、自分の個性やライフスタイルに合った一着を選ぶことが大切です。

 

 マルコさんの装いは、単なるファッションではなく「未来を形作るツール」そのものなのです。

 

 

 

Author: 北川美雪(きたがわ みゆき)

東京・銀座のテーラー「VESTA by John Ford」のゼネラルマネージャー。英語、イタリア語、フランス語に堪能、メンズファッションのエキスパートとして25年のキャリアを持つ。確かな素材選びとセンスの良い仕立てに定評があり、国内外のトップ経営者、政治家、各国の要人・大使らが顧客として名を連ねる。歴代の駐日イタリア大使にも絶賛された。ファッションに関する深い造詣を持ち、多くの雑誌などで記事を執筆している。好きな食べ物は「てっさ」である。https://johnford.co.jp/