【第2回】京都とスーツの美しき融合
Sunday, March 23rd, 2025
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サンドさん | Sartorial Fusion
Instagram: @outbespoken
京都の町屋を背景に、季節の変化を繊細なカラーコントラストで表現し、リラックスした洗練を取り入れた装いは、サンドさんの真骨頂。撮影日、突然訪れた春の気配に合わせて、ネクタイやシャツなど小物のカラートーンを変えてみました。
近年、Instagramを中心にクラシックなスーツスタイルを発信し続けているサンドさん。ノルウェー出身ながら、日本の伝統的な風景と絶妙に調和したスーツの着こなしが話題を呼んでいます。彼のInstagramには、ヨーロッパやアメリカはもちろん、アラブ圏のフォロワーも多く、その理由は彼の色使いが彼らの美的感覚に合致しているからだといいます。
通気性に優れたアースブラウンのスーツに、クールな色合いのShibumiのネクタイを合わせ、冬から春への移ろいを感じさせるコントラストを生み出しています。
アートが生み出した美意識
ノルウェーで育ったサンドさんは、幼い頃から母親の価値観や「場にふさわしい装いをする」という考え方の影響を受けてきました。パーティーではタキシードを着たりとTPOに合わせた着こなしをしていたようですが、特に記憶に残っているのは、ヨーロッパ各地を旅してアートに多く触れた経験だそうです。美術館巡りをしながら、ルネサンス期の作品やモダンアートに影響を受け、自然と色彩感覚や美的バランスを磨いていかれました。特に、カラヴァッジョやスーラなどの作品に魅了され、色の持つ力を強く意識するようになったそうです。
ティーンエイジャー以降はカジュアルな装いが多かったと言う彼が本格的にスーツを着始めたのは、YouTubeをきっかけにトム・フォード氏のインタビューを見たことからだったとか。「スーツのディテールが、ほんの少し変わるだけで印象がガラリと変わるのが面白かったんです」と振り返ります。
温かみのあるポケットチーフが、クールな色合いのネクタイと絶妙なバランスを取ります。
スーツが変えた人生
「スーツを着てInstagramに投稿するようになってから、いろんな人と知り合う機会が増えました。SNSを通じて世界中のクラシックスタイルを愛する人々とつながり、それが新しいビジネスチャンスにもなっています」
もともと、仕事では服装規定がないというサンドさん。カジュアル中心の服装から、2021年を境に完全にスーツ中心のワードローブへとシフトされました。現在では40〜50着のスーツと20〜30足の革靴を所有し、ネクタイに至っては1,000数本、普段着もスーツのみとのこと。
「スウェットは持っていません。夏は甚平を着るくらいで、それ以外はすべてテイラードウェアです」と語ります。
ハイライズと2プリーツのトラウザーズはサンドさんの定番。エレガントでブレイシーズとのバランスも抜群。フラップ付きのウォッチポケットもアクセント。
朝のアイロンがけがもたらすもの
サンドさんの1日は、朝のアイロンがけから始まるそうです。
「ポッドキャストを聞きながら、アイロンをかけるのが僕の朝のルーチンです。アイロンがけをすることで気持ちが整い、最初のタスクをこなすことで、その後の1日がスムーズに進みます」
彼にとってスーツとは、単なる服ではなく、自己表現の一部であり、ライフスタイルそのもの。
「スタイリングに決まりはないですが、スーツのデザインに関して言うと、僕は3つボタンの段返り、ラペルは広め、パンツはサイドアジャスター付きの裾ダブル仕上げで、股上の深いものが好みです」
このこだわりとアーティスティックな感性こそが、彼のスタイルを唯一無二のものにしているのです。
トラウザーズは、5cmのカフ仕上げ。フルスーツにローファーを合わせるスタイルは、動きやすさと気品、そして形式に縛られない個性の表現です。テーラードでありながらリラックスしたスタイルを際立たせます。靴下はイルレガロ。
日本で見つけたナポリスタイルの魅力
サンドさんは日本に来て、日本製のナポリスタイルスーツのクオリティに驚かれたそうです。
「ナポリの伝統的な仕立て技術を取り入れながら、日本独自の丁寧な作りが加わり、より洗練されたものになっています」
彼が愛用するスーツの多くは日本製であり、既製品よりもオーダーメイドを選ぶことが多いそうです。「自分の理想のデザインを探すよりも、オーダーした方が早いですからね」
スーツと京都、そしてこれから
京都の街並みとスーツスタイルの美しい融合も、彼のInstagramの大きな魅力です。「日本の伝統的な風景に、クラシックなスーツスタイルが意外とマッチするんです。」 京都に住み続ける理由については、「東京はビジネス都市としての魅力がありますが、僕にとっては京都の落ち着いた雰囲気の方が合っています。鴨川沿いのカフェで過ごす、ゆったりした時間が好きですね」と話されます。 現在、新たなファッションプロジェクトにも取り組んでいるそうですが、その詳細はまだ秘密とのこと。
「ファッションに関わるものですが、今はまだ言えません。でも、Instagramでこれまで発信してきたことの延長線上にあるプロジェクトです」
サンドさんにとって、スーツは単なる衣服ではなく、彼の美意識を表現するキャンバスのようなもの。京都の街並みの中で彼がどのようなスタイルを生み出し、発信していくのか、これからも目が離せません。
写真:本人提供
Author: 北川美雪(きたがわ みゆき)
東京・銀座のテーラー「VESTA by John Ford」のゼネラルマネージャー。英語、イタリア語、フランス語に堪能、メンズファッションのエキスパートとして25年のキャリアを持つ。確かな素材選びとセンスの良い仕立てに定評があり、国内外のトップ経営者、政治家、各国の要人・大使らが顧客として名を連ねる。歴代の駐日イタリア大使にも絶賛された。ファッションに関する深い造詣を持ち、多くの雑誌などで記事を執筆している。好きな食べ物は「てっさ」である。https://johnford.co.jp/