VITALE BARBERIS CANONICO

“VIGOREAUX(ウィゴロー)”の妙技:VBCの名作フランネルに宿る圧倒的な柔らかさ、色の深み

October 2025

text yuko fujita
photoraphy jun udagawa, mitsuya t-max sada
VBCの名作フランネル02:
生地のプロ中のプロ鷹岡の荒幡 徹氏がオススメする!

スーパー120’sのウールを使用し、サラッとしたタッチを備えるライトフランネル。VBCらしい発色の美しさはブルー系で顕著だ。270g/mと、フランネルにしては驚くべき軽さを実現している。今後人気が飛躍的に伸びていきそうなシリーズだ。

 オーダースーツの世界では、数年前まで打ち込みのしっかりしたヘビーウェイトの生地が主流だったが、温暖化やライフスタイルの変化の中での反動もあるのだろう、秋冬でも軽やかでしなやかな生地の人気が高まっている。その中で、テーラーから注目を集め始めているのが、VBCのライトフランネルであると、テーラーの生地商社・鷹岡の荒幡徹氏は話す。

「大変上質なスーパー120’sのウールを用いたVBCのライトフランネルは、生地のとろみと適 度なハリ感が絶妙で、非常に現代的な仕上がりです。冬のベストセラーとして長らく改 良を重ねてきたフランネルは、ヴィゴロー製法が生むメランジカラーで色に奥行きがあり、色気のある光沢は、英国のフランネルとは異なるエレガントな雰囲気を備えます。ハイゲージのタートルネックニットとの相性もとてもよいですし、秋のうちからより長い期間着られることから、今後さらに人気が高まっていきそうな予感です」

Toru Arahata / 荒幡 徹1988年生まれ。アメリカブランドでの販売を経て、生地卸の鷹岡に。テーラーや百貨店に生地を卸し、トレンドを知り尽くす。生地メーカーと組んで、生地を企画し、仕かけることも。

VBCフランネルの魅力は“ヴィゴロー”と圧倒的に優れたフィニッシングにあり!

 VBCのフランネルは、トップ染め(原毛染め)した羊毛をカード工程で意図的に多色混ぜ合わせ、糸に紡ぎ、織り上げる「ヴィゴロー製法」を採用している。例えば、チャコールグレーのフランネルは、黒・白・グレーのトップ染めウールを混ぜ合わせることで、霧のヴェールを纏ったような豊かな陰影を描き出す。色の異なる繊 維を組み合わせることで、後染めや単色では決して得ることのできない、霧をまとったような深みのあるメランジ感を生み出せるのだ。

 単に美しいだけではない。しっとりとしたタッチと軽やかな風合いも、VBCフランネルの大きな魅力だ。縮絨させて目を詰め、丁寧に起毛を施し、毛足を整え、蒸気と圧力でプレスをかけるフィニッシングの工程。VBCはここにも秘密のレシピをたっぷりと注ぎ込み、重さに頼らずとも温もりを湛えた、大変ソフトで比類なきエレガントなフランネルを生み出しているのである。

本来は均一化を目的とするカード工程で、スライバーにフィッシュネット状のプリントを施して色糸がまだらに入るようにし、織り上げた際に霧のような色合いを持たせるのが、フランスのヴィゴロー製法。これを行っているメーカーは希少だが、これでしか出せない色合いがある。ここ数年で飛躍的に技術が向上した仕上げ工程にもVBC独自のレシピが生き、しなやかでコシがあり、上品な艶のあるフランネルとなるのだ。

VITALE BARBERIS CANONICO FAIR

10月1日(水)―10月14日(火)伊勢丹新宿店 メンズ館5階
メイド トゥ メジャー・オーダーメイド

10月22日(水)―11月4日(火)日本橋三越本店 本館2階
パーソナルオーダーサロン

オリジナルフランネルとライトフランエルを中心に、VBCの名作ファブリックを集めたVBCフェアを、上記日程にて開催。秋冬の定番フランネルに、新潮流が生まれそうな予感だ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 66
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Contents

<本連載の過去記事は以下より>

ビエッラ本社と生地展“ミラノウニカ”を訪ねて知ったVITALE BARBERIS CANONICOの真価