VITALE BARBERIS CANONICO

“VIGOREAUX(ウィゴロー)”の妙技:VBCの名作フランネルに宿る圧倒的な柔らかさ、色の深み

October 2025

イタリア・ビエッラの名門ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)のフランネルが、メランジ感の奥行きがあり、実に味わい深い。その美しさの秘密は、彼らの伝統的技法“ヴィゴロー製法”にあった。
text yuko fujita
photoraphy jun udagawa, setsuo sugiyama
VBCの名作フランネル01:
圧倒的なバランス感のよさを備えたスーパー100’sオリジナルフランネル

複数色にトップ染めした原毛を糸にすることで生まれる美しいグレーフランネルの霜降り感。そして、しなやかさ、気品に満ちた艶感、日常使いに適したミディアムウェイト。ビエラの名門が誇るマスターピース、オリジナルフランネルに、改めてスポットを当てたい。

 ひと言で表すとグレーフランネルなのだが、VBCのそれは、メランジ感の塩梅が非常に豊かで、なんとも味わい深い奥行き感がある。しなやかで、それでいてコシもあり、上品な光沢を湛えている。広く知られた英 国 製フランネルとは、まったく異なるアプローチの上質さだ。美しさの秘密は、ヴィゴロー製法にある。トップ染めした原毛を多色混ぜて紡ぐことで、独特の杢感と奥行きを生み出すVBCの伝統的技法だ。スーパー100‘sのウールを用いた340g/mのミディアムウェイト。スーツとして仕立てあがった瞬間からソフトで、着る人間を柔らかく見 せてくれる。“サルトリア”の仕立てとの相性のよさは抜群だ。VBCではさまざまな美しい色合いのフランネルを揃えているが、王道のグレーフランネルの雰囲気が格別ゆえ、ここはあえて英国のグレーフランネルと勝負すべく、グレー一択でオススメしたい。

イセタンメンズのバイヤー陣にすこぶる人気を誇るVBCフランネル

Masanori Mizota / 溝田将法1995年、東京都生まれ。2018年入社。シャツ・タイの販売を経てレディース領域へ異動し、販売やアシスタントバイヤーを5年間経験。昨年、メンズ館 5階テーラードクロージング部門のアシスタントバイヤーとなり、今年からバイヤーに。VBCの生地は「カバート」もお気に入りで、同生地で仕立てたコートとスーツを所有している。

ナポリのティト アレグレットでス ミズーラしたスーツ。生地が主張することなく、柔らかな雰囲気の仕立てにごく自然な感じで馴染んでいる。美しい霜降り感、チョークストライプの幅や調子も含めて理想的だという。温暖化が進む中で、より長い期間着られるのも、VBCフランネルの大きな魅力だ。

伊勢丹新宿店 メンズ館 5階
テーラードクロージングバイヤー
溝田将法氏が愛用!
「英国製フランネルで以前仕立てたスーツがややヘビーだったこともあり、なるべく日常 使いできるフランネルを探していたなかで選んだのが、VBCのフランネルでした。チョークストライプの調子やピッチ、何よりグレーの霜降り感がとてもきれいで、そこに色気を感じたのが 選んだ理由です。ウェイトはバランスがよい340g/mで、柔らかさとしなやかさがあり、サラッと着られながらクリースもきれいに入ります。この生地で仕立てた先輩たちから、想像以上に耐久性があると聞いていたのも選ぶ際の安心材料でした。価格のパフォーマンスも素晴らしいですし、自分でそのよさを実感した今、お客様にも積極的にご提案しています」

溝田氏着用のチョークストライプのフランネルは、メランジ感といい柄の出し方が絶妙すぎて、その美しさに目を奪われる。色は3色がラインナップされており、伊勢丹新宿店メンズ館5階で同じフランネルがオーダー可能だ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 66
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Contents

<本連載の過去記事は以下より>

ビエッラ本社と生地展“ミラノウニカ”を訪ねて知ったVITALE BARBERIS CANONICOの真価