シンガポールのクラシックが面白い vol.05

ジェラルド・シェンとダイアナ・チャンはともに1986年生まれ。高校の同級生で、2004年から付き合い始め、2013年に結婚した。もうひとり職人の女性がいて、3人体制で手がけている。

Scene 4 ▶ 夫婦で営むハンドメイドネクタイ工場
VANDA FINE CLOTHING ヴァンダ ファイン クロージング
端正で美しすぎる世界最高品質のタイ

　本当に本当に素晴らしいネクタイだ。線の引き方、ハサミの入れ方、針を通す際の軽やかなタッチ。ジェラルド・シェンはすべての動きが洗練されていて、ヨーロッパの工房の職人にはまずいないタイプだ。作業台に生地を広げる際、フワッと一瞬撫でる姿なんて、まるで生地と対話しているかのようだ。彼が手がけるネクタイはヨーロッパのそれにはない端正さを備えている。どちらかというと日本人のメンタリティに近いのだろう。

　デニムからファッションの世界に興味を持ち始めた1986年生まれのジェラルドは、ウェブサイト“ S t y l e f o r um ”をとおしてテーラードの世界に傾倒していった。2010年、ジェラルドはまだ学生で、当時はガールフレンドだった妻のダイアナが、ジェラルドの企画のもとポケットスクエアを作り始めたことからすべては始まった。ジェラルドがファイナンスとエコノミーの修士号を取得した2011年、彼はそっちの世界に飛び込むのではなく、自らのパッションに忠実に、ヴァンダ ファイン クロージングを立ち上げた。

　このブランドが唯一無二なのは、すべてがジェラルドの美意識で統一されている点だ。それは、非常に非常に趣味のよい生地のセレクトに始まり、アンラインドの6フォールドを基本とする軽やかな仕立て、完璧主義の美しい仕事を指す。これは、自らが職人としてすべてを手がけているからこそ為せる業だろう。

ふたりのネクタイ作りは、完全に独学。まずヴィンテージのネクタイを買い集め、分解し、芯地や糸、作りを検証し、インターネットの動画を何度も見て吸収していったという。シンガポールの若い世代に感じるのは、何かを達成したいというパッションだ。

ハンドロールの細さは世界トップクラスクラシックでありながら端正な仕立てで非常にモダンな雰囲気を醸し出す、英国製シルクのネイビー×赤のダブルバーレップタイ。ヴァンダ ファイン クロージングのネクタイは裏地なしの6フォールドが基本で、大剣裏はハンドロールで非常に細く処理されている。1文字あたり10SGDを追加すれば写真のようにイニシャルの刺繍も入れられる。生地のセレクトから仕事のすべてに至るまで、この美しさだ。オーダー時に画面上で幅と長さを選択できる。

ハンドステッチの一針一針が優しく美しく入った、とてもクリーンな仕立て。

ベージュとブルー無地は手織りのインドシルク。右はシンガポールの国花“Vanda（ラン）”があしらわれたジャカードのウールシルク。タイは基本的に受注生産で、各170SGD。

eコマースで購入可彼らのコレクションはeコマース（www.vandafineclothing.com）での販売が基本。幅と長さはいくつかの選択肢の中から選択できる。ネクタイの場合、発送まで約10日。送料は16～18SGDで、380SGD 以上は送料無料。