THE NEW DRESS WATCHES

ドレスウォッチ進化論④色に宿る、スタイルの妙。個性を表現するカラーダイヤルウォッチ

October 2025

サーモン系をはじめニュアンスカラーが、今のトレンドの様子。さらにストーンダイヤルもいつになく数多く、色と質感で個性を競う。
text norio takagi

CHOPARD
L.U.C クアトロ – マーク IV
エレガントさを増した第4世代の“クアトロ”
2層の香箱を並列に置き、計4つで約9日間ものロングパワーリザーブをかなえる。これはメゾンの技術力を象徴するクアトロテクノロジー誕生25周年の記念モデルだ。旧作ではダイヤル上にあったパワーリザーブ計を、裏蓋側に移設。フロステッド仕上げによるダイヤルの美観を引き立てた。ケースは39mmと、小ぶり。控えめなエレガンスを醸し出す。手巻き、Ptケース、39mm。¥7,513,000 Chopard

 ブラックダイヤルはダイバーズウォッチをはじめとするスポーツ系では今も多用されるが、クラシック系では絶滅危惧種となっている。ドレスウォッチ=ブラックダイヤルというのは、今や昔。手首でも、カラーコーディネイトを楽しむ時代だ。実際、今年はヴィンテージスタイルの新作に、さまざまなニュアンスカラーのダイヤルがいくつも登場しているのだから。さらには装飾にも、各社が工夫を凝らしている。

 例えばショパールは、ダイヤル全体を霜が降りたようなフロステッド仕上げを施し、その質感に合う淡いブルーを与えた。荒れたような質感であるが、実に繊細でもあり、エレガントな印象を感じさせる。2015年創業のライネは、年間生産数がわずか80本あまりというマイクロメゾン。工房を率いるトースティ・ライネ氏は、美を追求する時計師としてコレクターの間で高く評価されてきた人物であり、ほぼすべてのモデルのダイヤルには、彼の手でヴィンテージの手動マシンを用いたギヨシェ彫りが施されている。そしてその模様を透かし見せるカラーリングも実に多彩で、個性を主張している。

 ストーンダイヤルも、今年のトレンドのひとつ。中でもH.モーザーは、異なる2種の半貴石を組み合わせた2トーンダイヤルとすることで、ひと際異彩を放ってみせた。またゼニスは、ラピスラズリとマザー・オブ・パールとの組み合わせで質感豊かなブルーダイヤルを生み出した。さらにダイヤル外周には本社社屋のレンガ造りを模したブリックギヨシェパターンを配して造作に凝り、伝説の高精度キャリバー復活にふさわしいダイヤルを築き上げた。

H. MOSER & CIE.
個性的かつ美しい半貴石による2トーン
エンデバー・スモールセコンド コンセプト ポップ
ロゴもインデックスもない“コンセプト”ダイヤルを、天然石で表現。2種類の半貴石の組み合わせは3通りあり、各組み合わせを反転させた6種類の2トーンダイヤルがラインナップされる。写真は、ビルマ翡翠とピンクオパールの組み合わせ。まさにポップな見た目だが、コーディネイト次第でドレッシーに装える。世界限定28本。自動巻き、SSケース、38mm。¥5,676,000 H.Moser & Cie.

ZENITH
G.F.J.
進化し蘇った伝説の天文台クロノメーター
1948~62年の間、スイス各地の天文台で行われた精度コンテストで240以上もの賞を獲得したCal.135が、現代の技術で再生。しかも駆動時間を40時間から約72時間にアップデート。精度は、驚異の日差±2秒。新生Cal.135は、ブリッジにレンガ造りの本社社屋をギヨシェで写し取り、工芸的な美で着飾った。アリゲーター、カーフレザー2本、計3本のストラップが付属。世界限定160本。手巻き、Ptケース、39mm。¥6,952,000 Zenith

LAINE
P37
ムーブメントにもギヨシェが行き渡る
37mmケースの新コレクションは、ギヨシェのパターンと色、針や植字インデックスの仕様が異なる5モデルをラインナップ。このサーモンカラーダイヤルには、他社にはない稲妻に似たスパイダーパターンのギヨシェを組み合わせた。また手巻きの名機プゾー 7001搭載であるのも魅力。そのブリッジも手彫りギヨシェが華やぐ。5モデル計99本限定。手巻き、SSケース、37mm。¥1,947,000 Laine

本記事は2025年7月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 65

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