THE NEW DRESS WATCHES
ドレスウォッチ進化論③さりげない複雑さ。実用的コンプリケーションウォッチ
October 2025
BREGUET
クラシック ミニッツリピーター 7637
朗々とした音色で現在時刻を知らせるブレゲ数字とブレゲ針とを配したダイヤルは、伝統的なグラン・フー エナメル製であり、濃密で質感豊かな黒を呈する。時打ちのゴングは、ゴールド製。同じ素材のケースと共鳴しやすく、また一般的なスティール製よりも倍音を生じやすいため、豊かで美しい音色を響かせる。ムーブメントのブリッジ全体に手彫金が施され、工芸的な美を湛える。手巻き、18KRGケース、42mm。¥41,833,000 Breguet
上の写真のブレゲのモデルは、一見するとブラックダイヤル+2針の王道ドレスウォッチである。しかし目ざとい時計ファンであるなら、ケース左サイドのスライドレバーに気づき、只者ではないと理解するだろう。そう、これは複雑機構の花形ミニッツリピーター搭載機であるのだ。ブレゲに限らず、ミニッツリピーターを単独で搭載するモデルは、2針やスモールセコンド式が多く、ドレッシーに着けこなしやすい。しかもスライドレバーは左サイドにあるため袖口に隠れ、その正体が気づかれにくい。これぞまさに、複雑機構のクワイエットラグジュアリーである。
下の3モデルは、パーペチュアルカレンダーをエレガントに仕立てた好例。同機構を長く得意としてきたオーデマ ピゲとジャガー・ルクルトは、ムーンフェイズを含む4つのインダイヤルに各暦表示を振り分ける伝統的なスタイルを踏襲している。見るからに複雑だとわかるが、優れた技術力でパーペチュアルカレンダー機構を薄く構築してみせた。結果ケースも、自動巻きであっても10mm厚前後に抑え、エレガントに仕立てている。
一方、パルミジャーニ・フルリエはムーンフェイズを与えず、ふたつのインダイヤルにカレンダー機構を集約。コレクションを特徴付ける古の技巧を今に再現した真のグレインダイヤルを悠々と広げ、主役とした。インダイヤル内も同様に仕上げ、かつ印字も細く小さく、存在は希薄。パーペチュアルカレンダーであることをことさら強く主張しない、シンプルな美を追求している。これまでにない静謐な佇まいで、同機構のイメージを一新した。
AUDEMARS PIGUET
CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ パーペチュアルカレンダー
リュウズ操作だけで全暦表示が調整可能ジュウ渓谷の名門は今年、パーペチュアルカレンダーの調整方法を革新した。リュウズの引き出し・戻しのポジションと回す方向の違いで、全暦表示を個別に調整可能としたのだ。また同機構を一体式とするなどして薄型化。ケース厚を10.6mmに抑えてみせた。スモークブルーのダイヤルがシックで、スーツにも合わせやすい。自動巻き、18KWGケース、41mm。価格は要問い合わせ。Audemars Piguet
PARMIGIANI FLEURIER
トリック パーペチュアル カレンダー
ダイヤルの主役は美しきグレイン仕上げややオフセットしたふたつのインダイヤルは、右が月・閏年、左がデイデイト表示。そのサイズや配置は、黄金比に基づき定められている。悠々と余白を残すダイヤルには、伝統的な技法に則るグレイン仕上げが行き渡る。ムーブメントも、ゴールド製。ブリッジには手彫りのコート・ド・フルリエが豪華な彩りを添えている。世界限定50本。手巻き、18RGケース、40.6mm。¥13,970,000 Parmigiani Fleurier
JAEGER-LECOULTRE
マスター・ウルトラスリム・パーペチュアルカレンダー
操作性にも優れる薄型永久カレンダーケース厚は9.2mmとスリム。ワイシャツの袖口にも無理なく収まってくれる。ブラックダイヤルとも相まって、正装にも使える複雑時計に仕上がった。ムーンフェイズを含む全暦表示が、リュウズ操作で一斉送りできるため、長く時計が止まって暦がズレても調整が容易い。使い勝手のよさが、名門マニュファクチュールの真骨頂だ。自動巻き、SSケース、39mm。¥4,444,000 Jaeger-LeCoultre
本記事は2025年7月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 65







