THE NEW DRESS WATCHES

ドレスウォッチ進化論②優美なる一体感。ブレスレットを纏ったドレスウォッチ

October 2025

ドレスウォッチにはレザーストラップを組み合わせるのが、常套である。しかし手が込んだブレスレットなら、エレガントな雰囲気となる。
text norio takagi

ROLEX
パーペチュアル 1908
気品を高める7連の専用ブレスレット
スモールセコンドやアップル型の時針などクラシカルなディテールで構成されたコレクション専用の7連ブレスレットは、名付けて“セッティモ”(イタリア語で7番目との意)。各リンクはわずかにカーブし、しなやかで優しい装着感をかなえる。特許を出願した特別なアタッチメントシステムにより、ケースとの調和も図られ、気高き印象が一層増している。自動巻き、18KYGケース、39mm。¥5,273,400 Rolex

 ロレックスのオイスターブレスレットに代表される、最も広く普及するリンクを横3列に連ねた構造は、頑強にしてスポーティな印象である。しかし2023年にデビューしたクラシカルスタイルの「パーペチュアル 1908」に新たに追加された横7列の専用ブレスレットは、入念なポリッシュ仕上げとも相まってドレッシーな雰囲気を湛えている。一般的なリンク式のブレスレットは、横列のリンク数が多くなるほどエレガントになるという、これは好例だといえよう。

 そうした一般的なリンク式とは異なる、独自構造でブレスレットの新たな美を創出するメゾンも複数存在する。パテックフィリップもその中のひとつだ。黄金比に基づく楕円ケースを特徴とするドレスウォッチの定番「ゴールデン・エリプス」に昨年追加された新ブレスレットは、並列したバーを2対4列のリンクでつなぐ構造で、今までにない造形美を実現した。また、ブランパンは2018年、マイヨンと呼ばれる小さなパーツを連結したミルマイユと名付けたブレスレットを世に送り出した。必 要なマイヨンは、形や大きさが異なる31種類、500個以上。これらを手作業で規定の位置にピンに通していく気が遠くなるような工程を経て、密でしなやかなメッシュ状がかなえられる。

 これらチェーンやメッシュ仕立てのブレスレットの始祖的存在が、金属線を編み込んだミラネーゼである。ジャガー・ルクルトは今年、「レベルソ」に初のミラネーゼを与えた。14本のロープを束ねたような美しい編み目は、計約16mもの金線を用いることで生まれる。優れた工芸技術がブレスレットをエレガントにする。

PATEK PHILIPPE
ゴールデン・エリプス 5738/1
しなやかに腕に沿い美を伴う鎖構造
ブラックダイヤルで2針、ケース厚は5.9mmと極薄で、まさにドレスウォッチの典型である。その専用ブレスレットは、2対のリンクがV字を成すよう上下を入れ子状にすることでヘリンボーン柄の上質なニットにも似た複雑な構造美を創出した。必要とするパーツは、363個。バックルの上下でコマ詰め・コマ足しができる仕組み。自動巻き、18KRGケース、39.5×34.5mm。¥9,760,000 Patek Philippe

BLANCPAIN
ヴィルレ ウルトラスリム
手仕事で織り成す美としなやかさ
モデル名の通りケースは8.7mm厚と、薄くドレッシーである。しかし100時間ものロングパワーリザーブを誇り、実用性にも秀でる。独自のミルマイユブレスレットは、ケースとの接面を円弧状に設え、完璧な一体感を織り成した。500個を超えるマイヨンは、組み上げた後にそれぞれの間にブラシを入れて仕上げることで、しなやかさと美を育んでいる。自動巻き、SSケース、40mm。¥1,936,000 Blancpain

JAEGER-LECOULTRE
レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド
初のミラネーゼはケースも専用設計
コレクションを象徴する反転式構造であっても、ケースは7.56mm厚とスリム。初のミラネーゼのためにラグを再設計し、美しい調和を図った。2本合わせて約16mもの金線を密に編み込んだ後、適切な圧力でプレスすることでしなやかさと剛性を併せ持たせた。ダイヤルはゴールドのグレイン仕上げ。ワントーンの外観に気品が漂う。手巻き、18KPGケース、45.6×27.4mm。¥6,424,000 Jaeger-LeCoultre

本記事は2025年7月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 65

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