THE NEW DRESS WATCHES

ドレスウォッチ進化論①小さく、薄く、これが正義。小径・薄型ドレスウォッチ

October 2025

小さく薄くシンプルなモデルこそが、ドレスウォッチの王道。新作にも定番でも、珠玉の名作が見付けられる。
text norio takagi

PATEK PHILIPPE
カラトラバ 6196P
4年ぶりに帰還した新生“クンロク”
柔らかな曲線でケースとラグがひと続きのフォルムや弾丸型の植字インデックス、ドフィーヌ針といった特徴的なスタイルを1932年に誕生したRef.96から継承。ローズゴールドのオパーリンダイヤルは、温かな雰囲気。ラグ間6時位置のダイヤが、プラチナケースの証しだ。搭載のCal.30-255 PSはツインバレルによりパワーリザーブ60時間をかなえた。手巻き、Ptケース、38mm。¥7,460,000 Patek Philippe

 前述したように近年、多くの時計ブランドはヴィンテージスタイルへと舵を切り、今年はその傾向が一層高まった。それを象 徴するのが、前出のA.ランゲ&ゾーネの「1815」であり、もうひとつが4年ぶりに復 活を遂げたパテック フィリップの、リファレンス末尾に“96”が付く通称「クンロク」である。バウハウスの影響を受け1932年に誕生した初代クンロクは、その後の時計デザインに多大な影響を与えた名作であり、そのスタイルをメゾンも大切にしてきた。最 新のクンロクは、前作5196よりわずかに大きく厚くなったが、それでも小ぶりで薄型のドレス感は堅持されている。

 飛田氏へのインタビューで登場した大型のドレスウォッチを先駆けたヴァシュロン・コンスタンタンの「パトリモニー・ラージサイズ」は、メゾンの重要な定番モデルのひとつとして「パトリモニー・マニュアルワインディング」の名でラインナップされるロングセラーモデルとなっている。現行 モデルは径39mmで7.72mm厚。今の基準であれば、小径・薄型である。薄型時計の名手ピアジェの「アルティプラノ」にも、ミニマルな2針が定番モデルとしてラインナップされる。そのスタイルは、1957年に誕生したCal.9P搭載モデルを規範とし、ドレスウォッチの名作のひとつとして時計ファンに認知されている。

 国産時計ではセイコーの「クレドール」に、小さく薄く、ドレッシーな2針がいくつも見つかる。1960年代のセイコー薄型機械式時計の系譜を今に受け継ぎ、入念な作り込みで美を創出。掲載モデル以外にもラインナップは数多く、「クレドール」はドレスウォッチの王道を行く。

VACHERON CONSTANTIN
パトリモニー マニュアルワインディング
青ストラップに装う定番ドレスウォッチ
ドーム型のダイヤルに合わせ、アプライド・インデックスも手曲げされ、4方向の楔形でメゾンを象徴するマルタ十字を象る。分針の先もダイヤルのカーブに合わせ曲げられ、ポリッシュ仕上げされたパール状のミニッツトラックを正確に指す。そのダイヤルをアンティークシルバートーンに整え、ストラップにはアジュールブルーを用い、若々しく装った。手巻き、18KPGケース、39mm。¥3,872,000 Vacheron Constantin

PIAGET
アルティプラノ オリジン
ミニマルを極めた極薄2針ウォッチ
1998年誕生のロングセラー機の限定モデルは、シグネチャーブルーのダイヤルがブルーラッカー仕上げに艶めく。PGのケースや針、インデックスの組み合わせは、時計のアズーロ・エ・マローネとも言え、スタイリッシュだ。ケース厚は、わずか6mm。小ぶりで薄く、ミニマルであっても、カラーリングと上質な仕上げで強烈なオーラを放つ。世界限定300本。手巻き、18KPGケース、38mm。¥3,300,000 Piaget

CREDOR
ゴールドフェザー U.T.D. GBBY972
屈指の薄さを誇る極薄キャリバー搭載
製品コンセプトは、“羽根のように薄く、軽やかで、空気をはらみ、艶やかで、優美”。コレクション名の所以である。シャンパンカラーのドーム型ダイヤルが上品な雰囲気。植字のバーインデックスの間のドットは、錐を操り、ダイヤルに直接刻んでいる。時計界でも屈指の薄さを誇る1.98mm厚のCal.6890を搭載。世界に誇る日本の技術だ。手巻き、18KYGケース、37.1mm。¥3,740,000 Credor

本記事は2025年7月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 65

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