January 2022

CARL F. BUCHERER : THRILLING NEW WATCHES

新時代を切り拓く次の一手

他のスイス時計ブランドとは違った出自をもつカール F. ブヘラは、そこから導き出されたロジックを武器に、新たな価値をもつ時計を作る。
text tetsuo shinoda

オリーブグリーンのダイヤルに同系色のファブリックストラップを組み合わせた新作「マネロ フライバック グリーン」。クロノグラフ秒針の赤も差し色として効いている。シックで落ち着いた色なので、実はビジネススタイルとも好相性。腕元に華やかなアクセントを加えてくれる。

 名門時計宝飾店「ブヘラ」のオリジナルウォッチを原点とするカール F. ブヘラは、時計販売を通じて学んだユーザーフレンドリーな姿勢を、新作時計にも見事に取り入れている。

 その象徴的な取り組みが、「マネロ ペリフェラル ビッグデイト」にも搭載されているペリフェラルローターだろう。ペリフェラル(Peripheral)とは「周囲」という意味で、動力ゼンマイを巻き上げる回転錘をムーブメントの周囲に環状に配置すること。時計愛好家はムーブメントの仕上げやメカニズムを鑑賞することを好むが、自動巻き式は回転錘で細部が見にくい。かといって回転錘を持たない手巻き式の場合は、その都度ゼンマイを巻き上げるのが面倒である。

 その点ペリフェラルローターは、機能的な自動巻き式でありながら、環状の回転錘がムーブメントの周囲を回るためムーブメントが隠れない。つまり、機能性と審美性の両方を満たすという愛好家にとっては嬉しいメカニズムなのだ。この技術のシリーズ生産に初めて成功したのが、このカール F. ブヘラであり、愛でて楽しい表現力豊かなムーブメントを製作し続けているのだ。

 また、過去の名作を復刻する手法はもはや定番といえるが、カール F. ブヘラは「マネロ フライバック グリーン」のように、表情豊かなカラーリングを加えることで、アクセサリーとして装う楽しさもしっかり確保している。

 どちらも時計のイロハを熟知しているカール F. ブヘラらしい戦略であり、ちょっと気の利いた一本を探している愛好家に刺さる時計が豊富に揃っている。

マネロ フライバック グリーン時計宝飾店「ブヘラ」が1960〜70年代に製作したクロノグラフからインスピレーションを受け、この時代の定番だったツーカウンター式にデザインしたレトロなクロノグラフを、トレンド感のあるグリーンカラーにアップデート。3時位置が30分積算計で、9時位置がスモールセコンド表示。レトロな雰囲気を強めるボックス型の風防は、サファイアクリスタル製になっている。ちなみにフライバック式とは、クロノグラフが作動しているときにリセットボタンを押すと瞬時にゼロリセットされ、そのまま計測を再開する機能のことである。自動巻き、SSケース、43mm。¥968,000 Carl F. Bucherer(スイスプライムブランズ Tel.03-6226-4650)

マネロ ペリフェラル ビッグデイトビッグデイトと曜日表示を備えたデイデイトモデルだが、表示レイアウトにはかなり個性が備わっており、自社製ムーブメントならではの楽しさが生きている。ダイヤルカラーは2色。ライトブルーダイヤルは表示がベージュ色、ダークグレイダイヤルは表示がオリーブグリーンとなっている。この凝った配色も楽しい。それぞれストラップとブレスレットが用意されており、全4バリエーション。すべて自動巻き、SSケース、41.6mm。
写真左から:ライトブルーダイヤル×メタルブレスレットモデル¥1,243,000、ダークグレイダイヤル×オリーブグリーンストラップモデル¥1,188,000、ライトブルーダイヤル×ベージュストラップモデル¥1,188,000、ダークグレイダイヤル×メタルブレスレットモデル¥1,243,000 Carl F. Bucherer(スイスプライムブランズ Tel.03-6226-4650)

搭載されるムーブメントは自社製のCal.CFB A2011。環状ローターで動力ゼンマイを巻き上げるため、美しい仕上げがよく見える。さらに自動巻き式ながらムーブメントが薄くなるので、時計全体の厚みも12.21mmに抑えられており、着用感に優れる。美観と実用の両方がハイレベルだ。

本記事は2022年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 44

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