PHARE in Kobe
メイド イン ジャパンにこだわった、神戸の革小物のセレクトショップ“PHARE”で出逢う至高のアルチザンシップ
May 2024
photography yuki togo
ショーケースに飾られたバルコ カルピンテーロの製品たち。左上から時計回りに、船底を模した底面など、芸術的な立体フォルムのトートバッグ「fondo L」。W42×H28×D17cm。¥99,000/黄金のバランスともいうべき美しさを誇るウィメンズのハンドバッグ「ville」。W23×H15×D10cm。¥110,000/シュランケンカーフを用い、金具を一切使用せずに仕立てた丸底の巾着「lepli」。W18×H24×D13cm。¥44,000/継ぎ接ぎを少なく、ステッチや芯材も最小限に、革の魅力を最大限に引き出したバックパック「outil」。W30×H40×D18cm。¥155,000 all by Barco Carpintero / Phare
並んでいる革製品はどれもまだ名を知られていないブランドばかりだが、それらが大変素晴らしいものであることは、遠目からでもビンビン伝わってくる。湧き出たワクワクは、製品を実際に手に取ると、感動の溜め息へと変わる。これらはすべてニッポンの革職人が手がけたものだ。名は知られていなくともかくも素晴らしい製品を創造する革職人がニッポンにはまだまだたくさんいるのかと、我が国を誇りに思えてくるが、それこそが「PHARE(ファール)」が目指したところである。ここは素晴らしい職人を発掘し、その卓越した手仕事から生まれる革製品の魅力を我々に発信するべく誕生した、革製品のセレクトショップなのだ。
店名はフランス語で灯台を意味し、それにちなんで2023年11月1日(灯台の日)に、港町・神戸にオープンした。
「マーケットに合わせたものをご提案するのではなく、職人の皆さんが作りたいもの、彼らの思いを叶えるお店にしていきたいという理念のもとにオープンしました。私たちが惚れ込んだ作り手と素晴らしい革との出逢いから生まれた鞄や小物をセレクトし、お客様との出逢いの場としてファールがあれたら。そして、アルチザンの可能性を最大限に引き出せる場でありたい、そんな思いでオープンしました」と、店主の井上孝頌氏。
9名の革職人を抱える工房バルコ カルピンテーロは、革職人の藤原進二氏と鞄職人の鈴木 磨氏がコンセプトを設計し、2022年に始動したブランド。直線と曲線を絶妙に組み合わせた独特のフォルムを特徴とする。ブランドの象徴として、どのアイテムにも六角形のマークがさりげなく施されている。
左:革そのものの存在感を生かしながら、革の個体差も含めてひとつの鞄として表現したボストンバッグ。彼らの作品には常に革の美しさを最大限に引き出す美学がある。また、さりげなくワンポイントのクロコダイルがあしらわれている。ダレスバッグのように口金を用いているこちらはオーダーのみでの展開。W50×H30×D20cm。¥275,000(オーダー価格)Barco Capintero / Phare
右:ドイツのシュランケンカーフに対し、ワンポイントのゴートレザーの差し色アクセントが素敵な革小物。バルコ カルピンテーロの製品すべてに、幸運や長寿の象徴である六角形のマークが施されている。上から、長財布「chemin」。W20×H10×D2cm。¥68,200/名刺入れ「plier」。W10×H7×D1cm。¥16,500/キーケース「tuyan」。W7×H4×D3cm。¥11,000 Barco Capintero / Phare
左:女性ものの鞄にも大変定評があり、夫婦やカップルで楽しめるのがファールの魅力だ。上のボストン同様に特注の口金。革はドイツのシュランケンカーフで、要所にさりげなくオーストリッチがあしらわれている。ニューヴィンテージの雰囲気を醸し出すよう仕立てたそうだが、言い得て妙だ。ミニボストン「ferme」。W28×H16×D13cm。¥110,000 Barco Capintero / Phare
右:船底フォルムの底面から生まれる独特の曲線美。イタリアン型押しカーフ「アルチェ」の革のしなりがもたらす陰影も計算した上で仕立てられたトートバッグだ。口はマグネット式。ブランドの象徴、六角形のマークは、底面に施されている。左:「fond M」。W33×H23×D15cm。¥82,500/右:「fond L」。W42×H28×D17cm。¥99,000 Barco Capintero / Phare
そんなファールの店内でひときわ大きな存在感を放っているのが、革職人の藤原進二氏と鞄職人の鈴木 磨氏のふたりがコンセプトを設計し、スタートさせたブランド「バルコ カルピンテーロ」だ。ファールの母体は同じ元町に構える革製品の工房であり、ふたりは同工房の職人(全9名)だ。彼らの研ぎ澄まされた作品は、直線と曲線の見事なバランスからなるフォルムをしており、灯台の灯が交錯するかのような光のもと、独特の陰影を生み、得も言われぬ美しさを誇る。
平日は完全予約制でのオープン。土曜・日曜が予約不要での営業となっている。手にした瞬間、惚れ込むこと必至の製品が揃っているが、パターンオーダーとフルオーダーも可能だ。革のラインナップも見事のひとこと。これほどワクワクさせられた店は久しぶりである。
革職人としてキャリアを始動し、伊フィレンツェにて革製品の設計・制作を学んだ田中将実氏が2017年に始動。今日、プロダクトデザインを中心に取り組んでいる。ファールの空間デザインは田中氏によるものだ。左:お香立て「凛 Rin」W18×H4×D6cm。¥19,800/右:ウォルナット×イタリアンレザー×真鍮のティッシュケース「葛籠 Tsuzura」。W23×H8×D12cm。¥88,000 both by Takumi Tokyo / Phare
香川県高松市にアトリエを構えるラグタイムは、曲線と直線が織り成す美しさに定評がある。精緻で美しいステッチ、裏まですべてゴートを使用した見事な仕事に息を呑む。左から、コンパクトウォレット(W8.2×H9.7×D1.5cm)¥18,700/キーケース(W10.4×H6.1×D2.4cm)¥19,800/コインケース(W7.3×H6.5×H2.2cm) ¥14,300/ロングウォレット(W19×H1×D2.5cm)¥74,800 all by Ragtime / Phare
「シナリ」は兵庫県内の工房にて、デスク回りの革文具を中心とした製品を夫婦で手がけているブランド。外装・内装ともにゴートレザーを使用したダルマ足口金のペンケースは、ファールらしい配色で作ってもらったモデル。ペンの裏側で革を縫い割りし、独特の模様を作り出したペンも実に美しい。シャープペン各¥13,200、ペンケース(W19×H4×D4cm)¥22,000 both by Shinari / Phare
左から、革職人の藤原進二氏、ファール店主の井上孝頌氏、鞄職人の鈴木 磨氏。「いいものを届けたいという思いのもとに作っている職人のブランドを扱い、その魅力を伝えていくことが自分たちの役目」だと3人は口を揃えて話す。目指すのは、灯台のごとく道標となり、帰ってこれる場所となり、お客様の人生に寄り添う製品を届けることができる店だ。
兵庫県神戸市中央区栄町通2-2-8 カモメビル402
営業時間:12:00~19:00(平日予約制でオープン。土曜・日曜・祝日は予約不要)
TEL.070-9333-1154
https://phare-jp.com
本記事は2024年5月27日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 58