HEIRS OF ELEGANCE
受け継がれるエレガンス──サヴォイア家と近衞家
October 2025
タイを決める前にふたりが最後まで迷ったのは下の各3本。近衞氏は日本古来の配色や発色を彷彿とさせるような色合いのタイ(左)。エマヌエーレ・フィリベルト王太子はすべてが紺地のクラシックな小紋(右)がお好みだった。
品質・上品さ・締め心地のすべてに感動
イタリアを代表するブランド、マリネッラ ナポリ 丸の内店にて、エマヌエーレ・フィリベルト王太子と近衞氏はペコラ銀座の新しいスーツに合う、それぞれがエレガントだと思うタイを選んだ。近衞氏は言う。
「実はマリネッラは初めてです。品質・上品さ・締め心地のすべてに感動しました。数多くの素晴らしいコレクションの中から、80年代のアーカイブを復刻させた英国製生地で作った、近衞豫樂院のセンスすら感じる明るいブルーの小紋のタイを選びました。スーツの裏地にも合う色と柄で、今日の装いにぴったりでしょう? それにしても、現代にはない色や質感の、英国製のアーカイブ生地を使って、ナポリの繊細な技術で仕上げたコレクションには、感服するばかり。日本の古の模様や色にも通じるタイもあり、いろいろ欲しくなってしまいます。自分はクルマが大好きで、小さい頃はジウジアーロのようなカーデザイナーになりたかった。それが人生で初めてイタリアを意識した時でした。ジュネーブが長かったので、両親に頼み込んで、近くの国までF1も見に行かせてもらいました。ジウジアーロ本人にもお会いしましたよ。古くなったけれど、ジウジアーロデザインのタイは今も特別な宝物です。マリネッラでもジウジアーロデザインのタイを作らないかな(笑)。次のスーツに合うマリネッラのタイを選ぶのが今から楽しみです」
これを聞いたエマヌエーレ・フィリベルト伊王太子は、「ジウジアーロですか! よく知っていますよ。私が子供の頃は、ヨーロッパには赤い旅団などの極左テロ集団が多くいて、サヴォイア家の跡取り息子として、自分も誘拐対象リストに入っていました。だから、スイス郊外にある安全なボーディングスクールに入ったのです。そこには自分以外にも世界中の王族がいて、タイは日常的に必須。1946年のイタリアでの国民投票では僅差で王政廃止となり、サヴォイア家はイタリアからの亡命を余儀なくされました。サヴォイア家のイタリア再入国の為、2002年に法律を改正した故ベルルスコーニ元首相は、マリネッラのタイしか着けなかったことでも有名ですね。彼から勧められて、マリネッラのタイはたくさん持っています。タイもブルー。今回はシンプルなブルーに特にクラシックな小紋柄のセッテピエゲを選んでみました。色合い・品格・品質すべてが最高です。マリネッラを筆頭とするナポリのものづくりはイタリアの誇り。ナポリには玄祖母のマルゲリータ女王の名前を冠した美味しいピッツァもありますし」。
マリネッラ ナポリ 丸の内1914年ナポリにて創業したネクタイの名店。
東京都千代田区丸の内2-6-1 丸の内ブリックスクエア1F
TEL.03-3217-2871
営業時間:11:00~20:00年中無休(1月1日と法定点検日を除く)
www.marinellatokyo.jp
神は細部に宿るエマヌエーレ・フィリベルト伊王太子のスーツは濃紺のイタリア生地で、クラシックとスポーティさが共存したシンプルな2つボタン、裾はダブル。近衞氏はチャコールグレーのイタリア生地で、チェンジポケット付きの重厚なスリーピース、裾はシングル。惚れ惚れする出来で、日伊を代表する大貴族の血筋が引き立つ。上流階級が顧客だったペコラ親方の一番弟子の佐藤英明氏だからこそ可能な表現だ。それをマリネッラのタイが華やかに引き立てている。
エマヌエーレ・フィリベルト伊王太子のラペルには、自身が総長を務めるサヴォイア家騎士団の頂点、聖アヌンツィアータ騎士勲章。国王等の国家元首のみが対象で、過去には歴代天皇陛下や近衞公爵も受勲。シャツはナポリのボレッリのス・ミズーラ。靴は旅行用のサントーニのダブルモンク。時計はたくさん持っているが、今回は旅行やランニング時にも重宝するアップルウォッチ。紺・緑・赤などがバランスよくちりばめられたシルクのチーフは、今回マリネッラで選んだもの。
近衞氏のカフリンクスは、祖父の三笠宮殿下のクラシックなものや、叔父であるヒゲの殿下の英国風のものなど、貴重な「お形見」。趣味のスキーを模した遊び心溢れるものも。時計は、ルイ・ヴィトン初の時計ライン「タンブール」。日本でのイベントの主賓だった叔父の高円宮殿下のお形見である。靴はバリーニ親方時代のスティヴァレリア・サヴォイアのス・ミズーラ。手まつりのチーフは、今はなきローマの老舗の貴重なアイリッシュリネン。







