神戸から全国へ響くジャパニーズ レザー クラフツマンシップの新たな鼓動。FREE SPIRITSで出合った“革の手”たち
November 2025
photography yuko sugimoto
神戸の職人を中心に、日本全国の革製品ブランドを揃えるだけでなく、ショップ内に工房を併設。 高い志をもった職人が15名在籍し、切磋琢磨し合っている。左から6番目が村田光俊社長。
フリースピリッツは、日本のクラフツマンシップの鼓動が最も強く共鳴している場所である。全国から選び抜かれたメイド・イン・ジャパンの革製品ブランドが、静かな迫力をもって店内を満たしており、名の知れぬ小さな工房の品にも研ぎ澄まされた技と静かな美が息づく。ここでは知る人ぞ知る、自分だけの革鞄や革小物との出合いが待っている。
店の奥には、自社工房「バルコカルピンテーロ」があり、15名の職人の手によってオリジナル製品が日々生み出されている。その中心を担っているのが、革職人の藤原進二氏と鞄職人の鈴木磨氏を中心に始動した、工房と同名のブランド「バルコカルピンテーロ」だ。研ぎ澄まされた技と静かな情熱が宿った彼らの鞄には、凛とした美があり、手仕事の誇りが伝わってくる。そのほか「ヴェーデン」や「レンマ」などのオリジナルブランドも、この工房で製作されている。
フリースピリッツは、代表・村田光俊氏の「好き」と「愛」が形を成した場所だ。彼がこの店をつくったのは、ニッポンの職人の手仕事の魅力を正当に伝え、より多くの人にその素晴らしさを知ってもらうためである。だから、自社ブランドを求めて訪れた客には、職人が作業の手を止め、自身の手で作った製品の背景を語ってくれることもある。そこにあるのは、職人と使い手が心を通わせるような、まっすぐな対話だ。それと、「バルコカルピンテーロ」をはじめとするオリジナルの鞄は、驚くほど良心的な価格で手に入る点にも触れておきたい。そこに込められた誠実さと情熱に触れると、この店がなぜ多くの人を惹きつけてやまないのかが、よく理解できる。
フリースピリッツは全国で12店舗を展開し、その勢いをさらに加速させている。東京の1号店となった東京ミッドタウン八重洲店に続いて、原宿キャットストリート店も年内にオープン予定だ。興味深いのは、各店舗で一部ブランドを期間ごとに巡回展示していること。だからこそ、いつ訪れても“同じ”ではなく、どの店舗でも新たな出合いが待っている。訪れるたびに、違う物語が生まれるのだ。
ふたりの眼差しが宿る
自社工房の“手”の美しきエレガンス
フリースピリッツ神戸店の自社工房には15名の職人が在籍している。その中の革職人・藤原進二氏(写真左)と鞄職人・鈴木磨氏(写真右)がコンセプトを設計し、2022年に立ち上げたブランドがバルコカルピンテーロだ。こちらは、直線と曲線を巧みに融合させた造形、革の張りと柔らかさを共存させた表情づくりが魅力。シンプルでありながら、単にシンプルなだけではない、主張を備えたとても美しい鞄だ。もちろん、革小物も手がけており、どのアイテムにもブランドの象徴である六角形マークが控えめに刻まれる。 工 房のチームによる生産で、MTM、ビスポークも可能だ。
左:柔らかなシュリンクレザーの魅力を最大限に引き出したバックパック「ウティ」。W30×H40×D18cm。¥132,000、右:継ぎ目を少なくステッチや芯材も最小限にしたトートバッグ「フォンド L」。W42×H28×D17cm。¥88,000 both by Barco Carpintero / Free Spirits
細部にまで丁寧で細やかな仕事が息づくレディスの鞄も揃う。左:ドイツのシュランケンカーフを用いた「フェルム」。W40×H30×D13cm¥121,000、右:黄金のバランスともいうべき美しいまとまりを見せるハンドバッグ「ヴィレ」。W23×H16×D7cm。¥121,000 both by Barco Carpintero / Free Spirits
上品なシボ感を備えたオリジナルの柔らかなシュリンクレザーを使用し、金具を一切使用せずに仕立てた「ルプリ」は、美しいヒダとドレープが魅力。発色の美しい11色展開。コンパクトだが、マチがあるので収納力は高め。別売りで肩掛け用ショルダー(¥6,600)も用意している。W21×H25×D15cm。各¥33,000 Barco Carpintero / Free Spirits
ドイツ的で無機質な美しさを追求したミニマルデザインの鞄
上:革を大きく贅沢に使うヴェーデンらしく、前面の革をマチまで広げた贅沢な革使い。ステッチを極力表に出さず、ミニマルでありながら美しい存在感のある仕上がりだ。トップはファスナー仕様で、金具はすべて黒で統一されている。ハンドルは肩にかけられる長さになっており、使い勝手がよい。W40×H30×D13cm。¥49,500。下:ミニマルなデザインでありながら、フォルムの美しさが際立っているサコッシュ。W23×H16×D7cm。¥27,500 both by Werden / Free Spirits
ブランド名「ヴェーデン」は、ドイツ語で「生まれる、形になる」といった意味を持つ。無機質でありながら、無駄を削ぎ落とすことで立ち上がる造形美を追求し、2023年にフリースピリッツが立ち上げたオリジナルブランドだ。使用する革は国内で鞣したものに限定し、金具、縫製、仕上げに至るまで、すべて“純日本製”にこだわる。美しいデザイン、丁寧な作りでありながら、非常に良心的な価格を実現しているのも、このブランドの強みだ。
エクスクルーシブレザーのGIZAが輝く個性を放つコンパクト財布
イタリアはサンタクローチェのエクスクルーシブレザー、GIZAを用いたコンパクト財布「マリスコ」。ネビア加工による白味がかった独特の表情が特徴で、幽玄の美を勘えた奥ゆかしい色合いは、使い込むと色の深みと艶が増す。ブランドロゴの下にMade in Kobeの刻印が入る。8色展開。W10.5×H8.5 ×D1.5cm。各¥18,700 Lemma / Free Spirits
「神戸から世界へ羽ばたく」をコンセプトに生まれた、フリースピリッツのオリジナルブランド。国内外で高い評価を得ており、各種通販サイトでの販売実績が日本でトップクラスの革製品ブランドが、このレンマだそう。価格は大変良心的だが、上質なイタリアンレザーを使用し、神戸にある革工房で革職人がひとつひとつ丁寧に仕立てている。写真の「マリスコ」然り、革が確固たる個性を放っていて、大変美しい。女性から男性へのギフトとしても、大変人気があるという。
構築と感性そのあわいに宿る神戸発「バゲラ」の抜きんでた手仕事
ともに大学で建築を学んだ高田和成氏と高田奈央子氏夫妻が手がけるバゲラは、構造の本質を探る和成氏と、感性に基づく造形を得意とする奈央子氏の視点が交差するブランドだ。神戸市灘区にアトリエを構え、基本ビスポークだが、フリースピリッツのリクエストに応え、特別にごく少量のプレタポルテを制作した。従来の鞄の既成概念にとらわれない彼らの大胆な発想、造形美にうっとり!
上:オイルが沁みこみ重厚感のあるバケッタレザーを剝かずに仕立てたトートバッグ。3点留めのスタッズは自身で手がけたスターリングシルバーだから、モデル名は「シルバートート」。マチの内側にポケットをあしらうことで保形性を確保している。骨太感のあるステッチといい、かなりクールな鞄だ。W50×H30×D16cm。各¥715,000 、中・下:ドクターズバッグの高さを半分にした「ラグビー」は、それがラグビーボールのようなフォルムをしているから。革はレーデルオガワのオイルコードバン。開口部とパイピングにバッファローをあしらっている。こちらもスターリングシルバーで、自ら手がけている。グラマラス!W38×H18×D13cm。各¥770,000 all by Bagera / Free Spirits
神戸の革職人の作品を中心に、ニッポンの素晴しい革製品が揃うフリースピリッツ(写真は神戸店の店内と工房)は、今や全国に12店舗を構えている。今年1月31日、東京ミッドタウン八重洲店がオープンし、都内に初進出したが、年内に原宿キャットストリート店とキラリナ吉祥寺店のオープンを予定しており、今後は関東での出店が多くなる見込み。小さな工房の素晴らしい製品に出合える新スポットになりそうだ。ショップリストはコチラ。
フリースピリッツ神戸店兵庫県神戸市中央区栄町通1-1-5
TEL.078-381-7859
営業時間 12:00~18:30 無休
https://freespirits-kobe.com
本記事は2025年5月26日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 64







