Exclusive Interview: THE RINGMASTER
俳優:ザック・エフロン 驚異の変貌と努力
March 2024
photography brian bowen smith
fashion direction ilaria urbinati
Zac Efron / ザック・エフロン1987年、カリフォルニア州生まれ。11歳から子役として活動。2006年にディズニー・チャンネルのテレビ映画『ハイスクール・ミュージカル』で主人公を演じてブレイク。代表作は『ヘアスプレー』(2007年)、『セブンティーン・アゲイン』(2009年)、『ネイバーズ』(2014年)、『グレイテスト・ショーマン』(2017年)など。2023年12月にはハリウッド殿堂入りを果たした。
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ハリウッドは、いろいろな噂を引き寄せる場所だ。あの象徴的なハリウッドサインが設置されて以来、大衆はハリウッドに興味津々で、常に話題を求めてきた。テクノロジーとメディアによって情報の消化方法は変わったが、今日においても好奇心とゴシップだけが、人間の特定の側面を強める要因となっている。
ザック・エフロンの称賛に値する点のひとつは、若いうちからスターダムの頂点へ駆け上ったことである。傾向として、一般人は有名人のプライベートの詳細まで知りたがり、彼らの浮き沈みすら気にかけるものだ。しかし、エフロンは若い頃から賢く思慮分別を持っていたため、彼の人柄やプライベートについて実はあまり知られていない。まだ10代だったエフロンは、社会現象となったミュージカル映画『ハイスクール・ミュージカル』(2006年)で、一躍注目の的となった。それ以来、若きスターとしてマスコミや熱狂的なファンから視線を浴び、かつてないほどにさまざまな危険に晒されてきた。
本題に入ろう。この記事では安っぽいゴシップやプライベートについての噂話は掘り下げない。その分、インタビューでエフロンの人となりや、モチベーションの源泉に迫ることができた。彼はこれまでのキャリアを通じて、見目麗しい道化師からキングへと成長した。優れた政治家のように威厳ある地位を確立したのだ。
プロレスラーを演じる最新作 エフロンが主演する最新映画『アイアンクロー』(2023年。日本では2024年4月5日公開)では、彼が役作りのために肉体的にも精神的にも極限まで自分を追い込んだことがよくわかる。80年代に実在したプロレスラー一家、フォン・エリック・ファミリーを追ったこの作品で、エフロンは次男(長男ジャック・ジュニアは幼少期に事故死しているため、プロレスラーのフォン・エリック兄弟としては長男)にあたる、ケビン・フォン・エリックを演じた。
一家は父フリッツの指導のもと“史上最強”を目指して栄光を摑んでいくが、やがて信じがたい悲劇に見舞われていく。『アイアンクロー』という題名は、フリッツが生み出し息子たちに継承された必殺技(両手で相手の頭を鷲摑みにする)に由来するが、息子たちに対して持つ圧倒的な支配力のメタファーでもある。
映画のストーリーは息子たちが中心となるが、フリッツの父親としての責任や、息子たちを押さえつけたり支配したりすることの意味を問う作品だ。フォン・エリック兄弟は、父親から認められたいがゆえ、どんなに厳しくされ、価値観を植えつけられても、父親を信じ、愛するのである。エフロンはこう語る。
「フォン・エリック兄弟の物語の見どころは、プロレスの頂点への栄光の道のり。テキサスにいたらカメラにも映らないような時代に、彼らはトップレスラーとしてひとつの王朝を築き上げたんだ。初めのうちはアウトサイダーだった彼らが道を切り拓いていくことができたのは、非情でありながらも彼らにとって優れたコーチだった父親の存在があったから。今の時代だったら到底ありえない関係だろうね。父親の夢と希望を叶えるために、恐ろしいほど支配されていたんだ」
多彩な役とその役作り 予告編を観た人は、何人かの出演者の肉体が大きく変化していたことに驚いたはずだ。フォン・エリック兄弟は全員筋骨隆々で、さらに当時の理想的なヘアスタイルによって完成されていた。特に三男デビッドは、さながらダビデ像のようだった。80年代といえば、アーノルド・シュワルツェネッガーやシルベスター・スタローンの全盛期で、プロレスがカルチャーとして花開いた頃。フォン・エリック兄弟は、アルティメット・ウォリアーやミスター・パーフェクト、ハルク・ホーガン、ブレット・ハート、リック・ルードといったビッグネームに影響を与えた、時代の先駆者だったのだ。
そんな作品で役を演じることは、エフロンにとって舞台が整っていたといっていい。彼はこれまでのキャリアで、コミカルな役とロマンチックな役、ドラマチックな役を、華麗に行き来しこなしてきた。その出演作は、コメディ映画『セブンティーン・アゲイン』(2009年)から、ファンタジックなドラマ『きみがくれた未来』(2010年)、主人公の敵役をコミカルに演じた『ネイバーズ』(2014年)、ミュージカルの大ヒット作『グレイテスト・ショーマン』(2017年)、実在した連続殺人犯に扮した『テッド・バンディ』(2019年)に至るまで、実に多彩である。役作りは作品のジャンルによって技術的に異なるのだろうか。
ザック・エフロン主演。スタジオA24の歴代最高評価を記録した、衝撃の実話!
一世を風靡したプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックは、息子たちに必殺技「アイアンクロー」を継承し、“史上最強の一家”を目指していた。厳格な父を愛する息子たちはすぐに才能を開花させるが、やがて一家は不幸な運命に巻き込まれてゆく。スタジオA24製作の今作でザック・エフロンが演じるのは、温かいハートの持ち主で弟たちをまとめるケビン。完璧な肉体改造を披露する一方で、繊細な内面を見事に表現しており、キャリア史上最高の演技との呼び声も高い。
アイアンクロー監督・脚本:ショーン・ダーキン
出演:ザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト、 ハリス・ディキンソンほか
配給:キノフィルムズ
4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
©2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting
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本記事は2024年3月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 57