Exclusive Interview: THE PRINCE OF SOBER ANARCHY
俳優ジョシュ・ブローリン、混沌を生きるプリンス
January 2026
photography brian bowen smith
styling melanie bauer
Josh Brolin / ジョシュ・ブローリン1968年、カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。1985年のヒット映画『グーニーズ』でデビュー。その後テレビや舞台でも活躍。2007年、『ノーカントリー』で高い評価を得て、翌年の『ミルク』でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。マーベル作品ではアベンジャーズ最凶の敵・サノス役と、デッドプールの相棒ケーブル役の2役を演じている。
2020年のISSUE73(INTERNATIONAL EDITION)。ジョシュ・ブローリンへの1回目のインタビューは、回顧的な内容だった。遠い昔の話、そして輝かしいキャリアの話をたくさんした。子役として『グーニーズ』(1985年)でデビューし、大人になって『ノーカントリー』(2007年)や『ボーダーライン』(2015年)、そしてマーベルの超大作には巨悪サノスとして出演。充実した人生、揺るぎないキャリア。ブローリンは何度でも表紙を飾るのにふさわしい人物だ。
栄光に浸る暇もなく、ブローリンはひた走る。仕事もプライベートも、素晴らしいチャンスが次々やってくるのだ。本業の合間にある山ほどの活動は、彼の人生を仕事と同じくらい充実させてきた。そして今、満ち足りているブローリンと向かい合い、話を聞き出すことにした。
カオスとともに生きる スタートに格好の話題は、彼が2024年に出した著書だろう。『From Under the Truck(原題)』は、伝記というより、時間を行き来しながら本人の心の内へと入っていくノンフィクション小説のようだった。思考の連なりを追いかけ、ときに暴走する語り口。薬物依存症の自助グループの集会でもひんしゅくを買いかねない、気分が悪くなるような描写も混じる。と思えば一瞬にして、愛、優しさ、そして父性や友情の価値を凝縮させた場面が現れる。この本の中にいる彼は、無鉄砲で短気で、不満を溜め込んでいる。しかし同じように依存症の状況にいる人の多くが楽な道へ逃げ込むのとは違い、ブローリンはむしろ自分の中のカオスをさらに巻き起こすような生き方をしてきた。近頃のアメリカでは秩序を壊す人間が英雄視されがちだが、彼は現代に必要な反面教師の役割を体現してくれる。
この本が描き出すのは、反抗心を捨てて救済されるような旅路ではなく、むしろその反抗心を破壊的ではなく建設的なかたちで受け入れ、人生に取り込んでいく道程。その背景には彼の再生がある。
「シラフになれたことが大きかった。自分を見つめ、それでいいと思えるようになったんだ。むき出しの自分でも、『これが俺だ』と覚悟を決めて、とことんやろうとできる限りのことに挑戦した。そしてやっと、『救いにたどり着いた』と感じられるところにまできたんだ」
彼は自身の“旅”を美しい言葉で語るが、くぐり抜けてきたカオスを美化することは決してしない。武勇伝にしようとする人間がわんさかいる中で、これは珍しいことだ。
ここで述べておくが、ブローリンについて理解するには文学という手がかりが欠かせない。彼にとって読書はとても重要で、物語や言葉から深く満ち足りた人生のインスピレーションを得るからだ。本記事の写真で見ることができる彼のヘアスタイル、髭、タトゥーの所以も文学にある。ダニエル・クラウスの同名小説の映画化作品『Whalefall』(2026年全米公開予定)の役づくりの一環なのだ。
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“男らしさ”を更新する もちろんブローリンは読書ばかりしているわけではない。彼は疑いようもなく仕事熱心で、忙しい人間だ。しかも、ドゥニ・ヴィルヌーヴやリドリー・スコットといった巨匠たちからよく口説かれる。彼は作品を自ら見極め、個人的に興味を引かれる仕事だけ引き受けるという。そこには誰の目にも明らかなひとつの筋が通っている。父性、そして男性のポジティブな影響力というテーマだ。
ブローリンはハリウッドが描くのも追求するのも恐れている領域に、自身の居場所を刻みつけようとしている。それは昔気質の「アルファ男性」だ。ハンフリー・ボガートやジョン・ヒューストン、チャールズ・ブロンソン、三船敏郎といった系譜に連なる男性と考えていい。ブローリンが、マーロン・ブランドやリチャード・バートンの物真似が上手いのも、決して偶然ではないだろう。「アルファ男性」という言葉が*マノスフィアで新たな価値を帯びつつある時代に、ブローリンが備える重みと威厳は今こそ必要とされている。
ただしブローリンが自身を「アルファ」と語ることは決してない。だからこそ、ブローリンは「シラフでアナーキーなプリンス」なのだ。カオスを楽しむが、そのやり方はあくまでよく考えられ、落ち着いている。そうした姿勢は、レバーキングやアンドリュー・テイトといった男らしさを売りにするインフルエンサーとは対照的だ。彼らは注目を集めるためにワイルドさや反体制的な姿勢を誇示する。一方、ブローリンはバイクにまたがり、葉巻を燻らせ、イギリス人がよく言う「manly shit(いかにも男っぽいこと)」をやる姿もあれば、幼い娘たちに爪のマニキュアを塗ってもらって彼女たちと空想の大冒険に出かける、そんな姿も同じくらいよく見かけるのだ。
「男がこうあるべきだというマニュアルはもう要らないんじゃないか? 俺にはタフなところも、繊細なところもある。だから4歳の娘とも付き合える。娘は昨日キャンプに行ったんだけど、初めは『嫌!私、行かない!』って頑固だった。そこで俺は何も言わずただ手を差し伸べた。そうしたら彼女は手を握ってくれた。それでふたりで集合場所まで歩いていったんだ。その間、ずっと考えていた。『本能的にこのキャンプが自分に向いていないと感じているのか。いや、反抗だ。怖いから行きたくないんだ』。俺がやるべきことは、揺るがない存在としてそばにいて、大丈夫って伝える。彼女が判断できるように手助けをすることだ」
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何ともブローリンらしいアプローチだ。直感で動き、相手に全霊を傾け、どこまでも優しい。しかも、そうした態度を決して見せびらかさない。今の時代、目指す方向を誤ったり、目的を見失ったりする男性は、俳優の世界でも見られる。「バズらなければ」という強迫観念が、演技に対する地道な努力の重要性を薄れさせる。ブローリンによると、こう言って近づいてくる人間がいるという。
「『俳優になりたいんだけどどうすればいい?』ってね。俺はこう答えるよ。『戯曲を読むべき。人を集めて毎週末、戯曲の読み合わせをする。あと演劇学校へ行くこと。脚本を書いてみて、自分で演じてみるといい』。すると奴らは『いやいやそうじゃなくて』って言う。ただ有名になりたいだけなんだ。昔はマーク・ラファロやベネチオ・デル・トロなんかと学校へ行って、同じ読み合わせの会に参加できるよう競い合ったものだよ。そうやって人間の芯や人格が作られた。奴らにはそういうものが決定的に欠けてる」
スティーヴン・キング×エドガー・ライト─映画界が最も期待するデスゲーム。
1987年の映画『バトルランナー』で知られるスティーヴン・キングの伝説的小説を、エドガー・ライト監督がスタイリッシュな映像とブラックユーモアを持って再び映画化。原題と同名の『ランニング・マン』として現代へ蘇らせた話題作の舞台は、暴力がエンターテインメント化された近未来。グレン・パウエル演じるベン・リチャーズは、国家に操られる殺人ゲームの“走者”として命を懸ける。ジョシュ・ブローリンが演じるのは、番組プロデューサー、ダン・キリアン。群衆の熱狂を糧に、人間の尊厳をも商業化する冷徹な男だ。
ランニング・マン監督:エドガー・ライト 原作:スティーヴン・キング
出演:グレン・パウエル、ジョシュ・ブローリン、コールマン・ドミンゴほか
配給:東和ピクチャーズ 1月30日(金)より全国公開
©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
GROOMING: BARBARA GUILLAUME
本記事は2026年1月26日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 68







