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藤田雄宏が勧める、今オーダーすべき職人 07:FUMIYA TSURUMAKI SUPERIOR HATMAKER
May 2023
Fumiya Tsurumaki / 弦巻 史也1986年生まれ。CA4LA(カシラ)のデザイナーとして活躍後に独立し、2015年に帽子ブランドのTHE H.W.DOG & CO.をスタート。2023年、ビスポークハット「フミヤ ツルマキ シュペリオール ハットメーカー」を本格始動。
探求心の塊のような弦巻史也氏が2015年にスタートさせたザ エイチ ダブリュードッグアンドコーは、機械での大量生産が始まる以前、まだ職人が手がけていた時代の品質の高さにこだわりつつ、1940年代以降のミリタリー製品の機能性を取り入れ、今の時代に合わせてデザインしている帽子ブランドだ。今日、国内70店舗、海外14カ国40店舗で展開される人気ブランドへと成長を遂げている。
弦巻氏自身、相当なヴィンテージ好きだ。“ドッグ”では、素材、副資材、デザインだけにとどまらず、特殊ミシンをはじめとする製造機械から什器まで、当時の世界観を再現することに徹底してこだわっている。他人が真似できない領域まで突き進んで、そこに唯一無二の、人々を魅了する世界を生み出したのだ。
例えば、次の写真の帽子はこんな感じだ。昔のフエルトハットは今とは異なる染料や薬品を使用しており、よりキメが細かく艶が出て、完成度の高いものが多いという。が、それを再現しようにも原材料が手に入らないから難しい。そこで弦巻氏は、1940〜60年代のステットソンやドブス、ボルサリーノなどの状態のよい帽子を集め、それらを原材料の状態に戻した。それに再度糊入れし、日本人の頭の形と今の時代に合った木型で1点もののハットを作ったのである。
ヴィンテージのハットを原材料に戻し、再度糊入れして日本人の頭に合うよう作り直した“再構築”コレクションのビーバーフエルトハット。既製品として展開しており、¥66,000。
弦巻氏はこれまでも「ドッグ」ネームでビスポークハットを手がけてきたが、このたび自身の名を冠した「フミヤ ツルマキ シュペリオール ハットメーカー」を始動させることとなった。工房は拡張移転の真っ最中だ。ビスポークのスーツやジャケットを愛する人たちにかぶってもらえるビーバーフエルトハットを作りたいと話す氏は、そこへ入っていきやすくするための解答をバッチリ用意している。ビーバーフエルトの仕上げ、クラウンの高さ、ブリムの角度や幅、多様な通好みのディテール、ここでは書ききれないが、1聞いたら10返して提案してくれる人なので、超初心者でも最高に楽しくオーダーできる。
ビスポークの採寸にはComformateur(コンフォマチュール)と呼ばれる測定器を使用する。1900年頃にフランスで作られた大変貴重なものだ。側面にあるスラットが頭にフィットし、それが出たり入ったりすることで、対応するピンを押し上げる。そのピンが上部に挟んだ紙に穴を開け、その穴が点つなぎとなって頭の正確な輪郭がわかるのだ。
上:米キングスレー社の箔押し機。すべてホンモノにこだわる。左下:昔の仕様でオススメなのが、天井に貼られた透明なビニール「ポマードガード」だ。整髪料での汚れを防いでくれる。裏地ごと交換可。右下:ハットリボンの結び目についたゴムのボタンは、ヴィンテージのハットに見られる「ウィンドキャッチャー」。風で飛ばされないよう、ジャケットのフラワーホールなどと結ぶ。
THE H.W.DOG&CO.東京都渋谷区神宮前3-28-10
TEL.03-6427-9011(オーダーは要予約)
営業時間:11:00〜20:00 無休
thehwdogandco.com
ビスポークは¥110,000〜で、初回は頭の形に合わせたベンの木型を作るのに+¥33,000。納期は約3カ月〜。
本記事は2023年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION ISSUE 50