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藤田雄宏が勧める、今オーダーすべき職人 03:PERTICONE
May 2023
Seiichi Yoshimoto / 吉本 晴一1978年生まれ。大学卒業後、八木通商を経て2005年に渡伊。ローマのサルヴァトーレ・ポリターノ氏に師事したのち、深谷秀隆氏からの誘いでフィレンツェへ。そこで多くの靴職人から靴作りを学び、2007年から底付けのアウトワーカーとなる。2012年にローマに拠点を移し、2017年にペルティコーネを始動。
イタリアに渡ったのは2005年。ローマでサルヴァトーレ・ポリターノ氏に半年ほど師事してからフィレンツェに渡り、短い間だがイル ミーチョの深谷秀隆氏のもとで学んだ。その後は底付けのアウトワーカーとして腕を磨いた。フィレンツェのマンニーナ、ローマのペトロッキ、メルクーリオ、マリーニ、さらには英国のジョージ クレバリーまで、気がつけばさまざまなシューメーカーの底付けを請け負うようになっていた。その中で、吉本氏はとにかくスピードを磨いた。イタリアの職人仕事は単に美しいだけでは認められない。美しい仕事でかつ数をこなせてこそ、初めて評価されるからだ。最終的にはひとりで月に8〜10足をこなせるまでになった。
ローマで「ペルティコーネ」をスタートさせたのは2017年。独立して間もない頃、ローマの自宅兼工房に伺ったことがある。人気のアウトワーカーとして数をこなしてきただけに、素敵な家に住み、そこには憧れのローマ生活があった。顔も広く、ローマの名サルト、ガエターノ・アロイジオ氏も吉本氏の顧客である。ローマ料理をこよなく愛し、アッバッキオ、コーダ アッラ ヴァッチナーラ、パヤータ(子牛の小腸のソースのパスタ)が好物だ。行きつけの下町食堂「ダ ブカティーノ」のローマ料理も、アロマが素晴らしい「タッツァドーロ」や「サンテウスタキオ」のカッフェもすこぶる美味しかった。ローマから優しく包み込まれている、身長194cmのローマっ子なのである。ちなみにペルティコーネとはイタリア語で“大男”を意味し、per-ti-coneと区切れば“最大限にあなたのために”という別の意にもなる。
デザインに対しては積極的で、定番モデルも2年ごとに作り直している。底を絞りすぎず男らしさを残しているのは、親方譲りのローマのアイデンティティだ。ローマの定番デザインから想を得たモデルも用意するなど、しっかりロマニズモが宿っている。昨年はNYとパリでもトランクショーを開催した。人気はうなぎ上り。納期は今や2年である。
奥から、黒ヌバックのアリゲーターとカーフのコンビスリッポン。中央はローマの定番革であるラマ柄の型押しカーフを使用。手前のバタフライローファーのレースは切れ目を入れない1枚の革を織り畳んで作ったこだわりの仕様。
ローマンシューズの代表格である名店「ペトロッキ」の定番デザインをアレンジして、モダンに昇華したエプロンダービー。アッパーにグルリと一周、手縫いのステッチが入った人気モデルだ。
切り返しのデザインがさりげない個性を放つパンチドキャップトウ。お客様には今の美意識・仕事を見てもらいたいため、定番モデルは2年ごとにサンプルを作り直してアップデートしている。
1986年にフォルビチ ドーロ(金の鋏賞)を22歳で受賞したローマの偉大なるサルト、ガエターノ・アロイジオ氏もペルティコーネの顧客だ。ローマで吉本氏に会う日にちょうどアロイジオ氏の仮縫いがあったので、これに同行させてもらった。仮縫い用に作ったダミーシューズを履いてもらってフィティングを入念にチェックし、トウはカッターで切り開いてさらに細かく確認していた。ちなみにペルティコーネでは、1足目からスリッポンの注文を受けている。
日本でのトランクショーは年2回開催。シューツリー込み¥374,000~で、納期は約2年。奥様の吉本玲子さんはレディスシューズのOperetta(オペレッタ)を手がけており、同時期にオーダー会を開催している。
info@perticone-bespoke.com
本記事は2023年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION ISSUE 50