AFTERHOURSよりTHREE AND MOREをご紹介します
Saturday, October 5th, 2019
THE RAKE JAPANの藤田雄宏です。いつもTHE RAKE をご愛読いただいている皆様、本当にありがとうございます。
実はTHE RAKE JAPANとは別に個人の趣味でAFTERHOURS(https://ahours.jp)というウェブサイトを令和初日に始めました。
AFTERHOURSはジャズのライブ後のミュージシャンたちの自由セッションとか営業時間外という意味なんですが、同サイト内ではラグジュアリーは気にせず、自分の気になっている人、モノ、コトをのんびりと紹介しています。
お洒落な星付きレストランも好きだけど、町中華も大好き、みたいな欲張りな人間なんでしょうね。
なんせパニコのスーツを着て週3日は町の中華屋でビールと餃子とレバニラ炒めとチャーハンをかましてますからね(ちなみにグルメサイトのヒトサラでは、不定期ですが町中華連載もやっていて、こちらは2018年のヒトサラマガジン内で年間人気第7位に輝いた僕の記事です)。
で、AFTERHOURS内の記事からピックアップしたり、THE RAKE的視点とはちょっと異なる記事なんかも、ここでいろいろご紹介させていただければと思っております。
というわけで、一発目はSARTORIA CICCIOの上木規至さん。
正確には、上木さんがチッチオとは別に始めた新プロジェクト「THREE AND MORE」を、AFTERHOURSの記事からご紹介です。
--------------------------------------
それにしても軽すぎる。軽すぎて着るのに気負いなんてまるで必要としない。極端な話、Tシャツの上から羽織るだけで品よく見えて、個性的に仕上がる。感覚的には昔のペンドルトンのテーラードジャケットを着ているようなラクチンさだが、こっちのほうがより現代的で、より軽やかで、着ていることをより忘れてしまう。軽やかでしなやかな素材の肌触りも優しげで、非常に中毒性がある。
THREE AND MORE(スリーアンドモア)は2019年にデビューしたばかりのブランドで、Sartoria Ccicio(サルトリア チッチオ)の上木規至氏がデザインとオリジナルのパターンを起こしている。
なんと今秋冬はアフターアワーズのエクスクルーシブにて、どこよりも早く同ブランドのジャケットを展開することとなった。ブランドをスタートさせたきっかけからジャケットのこだわりの中身までを、上木氏に伺った。
--------------------------------------
取材・文 早島芳恵 撮影 藤田雄宏
スリーアンドモアは、上木氏のサルトリアの顧客である医師の、自分が着たい白衣がないという悩みから、サルトリア チッチオのビスポークの素晴らしさを白衣で表現きでないかというアイデアから始まった。
メンバーは、上木氏と、医師、生産管理担当の3名。医師が最初のアイデアを出し、上木氏がデザインとオリジナルのベースパターンを引き、パタンナーとしても活躍する生産管理担当が工場生産用にパターンを起こし直す、そんな役割分担だ。
今回アフターアワーズで展開するジャケットの名は、ケーシー(CASEY)。
耳慣れない言葉だが、白衣の一種でスタンドカラーとなっていて、アメリカのTVドラマ『ベン・ケーシー』で、脳外科医のベン・ケーシーがこの形の白衣を着ていたことからその名がついた。
スリーアンドアモアのケーシージャケットはスタンドカラーにして着られるところは踏襲しつつ、肩に切り替えを入れたりと、上木氏のオリジナルのデザイン要素がところどころにちりばめられている。春にスタートした際は白の綿ポリ素材で医療用として展開していたが、今秋冬打ち出したのは、バランサーキュラーという特殊なニットジャージ-素材で仕立てた休日用の服だ。
「お客様からのオーダーでビスポークのジャージー素材ジャケットを仕立てたことがあるのですが、その仕上がりがとてもよくお客様からも大変好評だったため、また作ってみたいと思っていました。そこで今回、さらなる可能性を探るべく、ジャージー素材を採用してみたんです。世界に2台しかない編み機を改良して丸編みとトリコット編みを融合させ、和歌山の老舗、丸和ニットで編み上げられたものです。布帛のようなタッチとニットの動きやすさを備えた、非常にハイクオリティな素材になります」
見た感じが布帛のような雰囲気を備えているのは、経糸を入れて編み上げられているから。全体にバランスよく伸びるので、生地への負担が少なく型崩れしにくい。ジャージーにありがちな肘の部分が伸びてしまう、といった事象が起こりにくいという。また、品質の良さに加え、イタリアの生地のようにニュアンスのある美しい色合いが揃っているのも、これを選んだ大きな理由だそう。
ユニークな視点としては革の包みボタンの位置に注目したい。通常の既製服のジャケットのボタンは等間隔で配されている場合がほとんどだが、上木氏が考えるドレープの美しさが表現されるようやや低めに設定された第2ボタンを中心とし、第1ボタンと第3ボタンとの間隔を変えている。第1ボタンと第2ボタンの間隔を大きめにとったことで、大人っぽく洗練された印象に仕上がっている。首元のボタンと第1ボタンの間隔も長めにとっており、首元のボタンを留めずに衿を開いて着用しても、あるいは襟を立てて着ても、きれいに収まる。
芯地など内容物を一切使用していない仕立ては、ライトウェイトで柔らかなジャージー素材と相まって非常に軽やかな着用感で、ドレスシャツとの相性もいいけれど、Tシャツとの相性もいいしで、まったくインナーを選ばない。下はデニムジーンズでもいいし、チノーズでもいいし、ウールトラウザーズでもいい。何も考えずにサラッとカーディガン感覚で羽織れて、リストランテでの食事もOKといった具合に程よくきちんと見えるところがポイント高い。
上木氏のビスポークスーツを仕立てている顧客は、いろいろ作ってきた結果、チッチオに行き着いたという人がほとんどで、顧客は皆本当にエレガントだ。上木氏はその顧客の皆さんが休日にサラリと羽織って出かけられる服をイメージして作っているので、いろいろな要素が非常に高い次元でクリアされている。
着心地は超絶軽やかゆえ、ジャケットを着るのに最近では抵抗を感じるようになってしまった人でも取り入れやすいはずだし、上木マジックなのか、それでいて上品なのがいい。
きっと、カジュアルが新鮮に、楽しくなるはずだ。
そんな一着を秋冬のワードローブに加えてみてはいかがでしょう?
AFTERHOURS https://ahours.jp