俳優：ジョン・ハム
遅咲きが貫く信条

スーツ New & Lingwood
シャツ Emma Willis at The Rake
タイ Budd Shirtmakers

　当時のハムは先行きが見えない状況にあった。まず、通っていた学校が演技だけでなくスポーツの面でも彼の才能を支援したこと。実際、彼は一時メジャーリーガーの道を志していた。また、10歳のときに母親ががんで亡くなったことも大きい。幼少期に感じた安らぎは、現実的で、非常に西洋的で、とりわけ堅物な、80年代初期のミズーリ州の考えに取って代わられた。母を亡くしたばかりの幼い少年に対するメンタルケアは、現代からすると衝撃的なほど冷淡だった。

「『親が亡くなったときにすべきこと』という1冊の本を与えられたんだ。10歳で母を亡くした経験に対処するために僕が受けたセラピーは、それで終わり。あの頃はそういうものだった。こんなことは何の役にも立たないと思った記憶がある。メンタルケアがまったく足りなかった」

　母を亡くした後の数年間で、ハムは戯曲を読むのが好きになった。

「戯曲の様式が大好きでね。ひとりで声に出してセリフを読んだり、“これをしたい、こうすれば面白い”と考えたりしながら役になりきって演じたものだよ」