SHISHI-IWA HOUSE designed by Shigeru Ban

圧倒的な建築美が宿る
坂 茂デザインの隠れ家リゾート

Tuesday, July 9th, 2019

text chihrau honjo

 

 

 ニューヨーク・タイムズで建築分野のノーベル賞と称されたプリツカー賞を受賞している国際的な建築家、坂茂(ばんしげる)氏が設計した、全10室からなるブティック・リゾート「SHISHI-IWA HOUSE(ししいわハウス)」が、美しい自然を堪能できる軽井沢の別荘地に誕生した。

 

 都心から、わずか1時間というアクセスの良さを誇る軽井沢駅からほど近い、中軽井沢の北エリアに位置する同リゾートは、所謂よくあるホテルとは一線を画した構造になっている。たとえるなら、ホテルというよりは高級コンドミニアムのような、友人の別荘を訪れたような感覚になる、全く新しいコンセプトのリゾートだ。

 

 開発者のひとりであり、シンガポールに本社を構えるHDH キャピタル・マネージメント最高経営責任者でもあるフェイ・ホアン氏に、コンセプトを伺いながらその全貌を案内していただいた。

 

 

「私が坂氏に依頼したのは“軽井沢の自然を身近に感じられること”と、“ゲスト同士の距離感が近く、交流しやすい”というふたつのコンセプトです。坂氏とは、敷地の選定をするところからプロジェクトがスタートしました。利便性の高いエリアにありながら、訪れるたびに季節を楽しめる場所を探し歩き、やっと理想的な土地に巡り会いました。坂氏は、この建物を2年近くかけてデザインし、パリと日本を行き来する合間を縫って現地に足を運んでは修正を繰り返すことで、理想を具現化した“自然と馴染む建物”を完成させたのです。

 

 ししいわハウスは、ここで出会ったゲストが同じ時間を共有し、思い出をシェアできるように、エントランスにあるライブラリーからグランドルーム、各リビングルーム、客室まで50メートルくらいある建物が1本の線でつながる設計になっています。木造2階建てのこの建物が、森の木々に沿うように曲線を描いているのは、従来この土地にあった木を生かした造りになっているからです」

 

 

「まず、エントランスで目にするのは、日本の建築物では最大級となる木枠のガラス戸です。自然光がたっぷり入るライブラリーになっており、到着したゲストが、別荘へ来たように寛げるスペースです。家具や照明、クッションに至るまで、すべて坂氏が選りすぐり、室内と室外が調和するように、色、デザインに至るまですべて緻密に計算されています。ライブラリーからは、桜、紅葉などが織りなす、四季折々の美しい景観を堪能できるでしょう」

 

 

「ライブラリーから続く中庭に面したグランドルームは、ゲスト同士が交流できるスペースです。まるで自宅にいるかのように、ゆったりと寛げる開放的な空間で、夏はオープンエアにして鳥の声を聴きながら朝食をとったり、冬は暖炉を眺めながらグラスを傾けたりなど、ゲスト同士が思い思いに過ごせる、居心地のよい場所を目指しました。現在、約8割はシンガポールや香港、オーストラリアやスイスなど海外からのお客様ですので、国際交流の場にもなっています。

 

 グランドルームからは3つの扉があり、各棟のリビングルームへと繋がっています。リビングルームは、それぞれの客室の共有スペースになっており、ミニキッチンと調理器具を備えているので、採れたての野菜やフルーツを買ってくるのも良いでしょう」

 

 

「ししいわハウスにレストランはありません。ゲストのライフスタイルに合わせてフレキシブルなスタイルにしたかったからです。軽井沢には素晴らしいレストランがたくさんあるので食べに行くのもお勧めですし、シェフを呼んでプライベートディナーを楽しむアレンジもお手伝いします。アルコールは、ご自身で取り寄せた好みのワインを堪能するのもよいですし、ホテルにあるウイスキーコレクションの中から味わうこともできます。ここでは、すべてゲストの思いのままに過ごすことができるのです」

 

  

 

「客室は、全室異なるタイプの設計になっています。ほとんどの客室にプライベートテラスがついており、絵画の額縁のような窓から、それぞれ趣の違う眺望が楽しめます。また、坂氏を象徴する紙管を使ったベッドサイドのライト、オリジナルのナイトランプやメモホルダー、アメニティを収納するカートなど、室内をいかに美しくシンプルに見せるかというアイディアが随所に光っています。

 

 もちろん、寝具とアメニティにもこだわりました。寝心地の良さを追求したマットレスを選び、寝具やタオル、バスローブは、私が世界で一番ハイクオリティだと感じているシンガポールのブランド「Ploh(プロ―)」を本国から取り寄せています。特にタオルはオリジナルの特注品です。また、バスアメニティーには、100%天然由来で生分解性のあるドイツのブランド「Stop The Water While Using Me!(ストップ・ザ・ウォーター・ホワイル・ユージング・ミー!)」を採用することで環境にも配慮しました。

 

 また、当ホテルの部屋には、テレビも電話もありません。喧騒から離れた自然の中で、ゆったりと寛ぎながら、人間が本来もつエネルギーを取り戻してほしいからです。近隣には、セゾン美術館があるので本格的な美術鑑賞ができますし、千ヶ滝までウォ―キングをして朝の清々しい空気とともにマイナスイオンを浴びるのも、とてもお勧めです」

 

 

 フェイ氏の話を聞いているうちに、ここがホテルだということを忘れてしまいそうなほどリラックスしていることに気がついた。視界の先には常に、ギュンター・フェルクの絵画や杉本博司の写真など、美術館に所蔵されているクラスの作品が館内のいたるところにさりげなく飾られている。

 

 自然とアート、建築が見事なまでに調和し、そこにいるだけでクリエイティブな発想を掻き立てられる隠れ家リゾートは、五感を研ぎ澄ましながらマインドを癒す、何度も訪れたくなる居心地の良い場所だった。

 

 

Huy Hoang(フェイ・ホアン)

HDH キャピタル・マネージメント最高経営責任者。ニューヨーク州コロンビア・ビジネス・スクールでMBA、ノースウェスタン大学で化学工学の理学士号を取得。ニューヨークと香港で、リーマン・ブラザーズのシニア・インベストメント・バンカーとしてキャリアを積む。様々な賞を受賞している世界中のホテルに滞在することで、芸術や建築、質の高いサービスに真の価値を見出すようになり、日本に隠れ家的リゾートを開業。

 

 

SHISHI-IWA HOUSE

所在地:長野県北佐久郡軽井沢町長倉2147-646

TEL:080-7691-6020

HP:www.shishiiwahouse.jp/