Tradition and Modern Luxury Hotel in Kyoto – “suki1038”

京町家を改装した
極上ラグジュアリーリゾート

November 2019

 近年、ホテルが続々とオープンしている京都に、また新たに粋な宿泊施設が今年開業した。「suki1038」は、京都に残る古い町家を快適でラグジュアリーな空間に改修・改装した、新しいリゾート仕掛けの宿だ。

 

 京都といえば日本が誇る古都。歴史を感じられる街並みと四季折々楽しめる風情は、世界中の人々を魅了してやまない。市内にはもともと宿泊施設が数多くあるが、近年はラグジュアリーホテルが続々と参入し、競争が一層激化している。

 

 

 そんな中今年開業した「suki1038」は、今までにありそうで実はあまりなかった高級志向の滞在型ホテル。京都の街並みを美しく形作っている「町家」の外装の趣をそのままに、内部を快適にリノベーションした各部屋は非常に洗練されており、外資ホテルにも引けを取らない高級感を表現している。京都で町家を改装した宿泊施設自体は15年ほど前から現れはじめブームとなったが、純日本風を守るがためにやや快適さに欠ける点も見られた。しかし「suki1038」は、長期滞在でも快適に過ごすことができる造りと最新の設備が整えられ、よりモダンでラグジュアリーな設えを意識しているのが大きな特徴だ。

 

 

「suki1038御所東壱・御所東弐」のエントランス。外観は歴史ある京町家の趣を残している。

 

 

 手がけているのは、中古住宅の再生・販売業を行う株式会社八清。空き家ばかりだった京都の古い町家を中心に買い取り、年に数十件ほどリノベーションを手がけてきた同社が、高価格帯のホテル事業を新たに始動させたというわけだ。運営は、「suki1038」の開業に合わせて設立されたグループ会社SuiTTe(スイット)が行う。今回開業したのは、東山の伝統的建造物群保存地区に位置する一棟貸しの「suki1038高台寺」と、京都御所東に位置する2階建て町家の1階「suki1038御所東壱」、そしてその2階の「suki1038御所東弐」の合計3室。どちらの町家も明治や大正時代に建てられた歴史的な建造物で、それぞれが約100平米の広さを誇るスイートルーム仕様となっている。ベッドルーム、和室、テラス(庭)のほか、キッチンやドレスルーム、ランドリーを備えた長期滞在向きの設備も整えているが、特筆すべきは何と言っても、浴室を中心に据えた大胆でユニークな空間である。

 

 

「suki1038御所東壱」には、テラスに隣接するリビングダイニングルームに、大胆にも大きな浴槽が。テラスと浴槽を行き来しながら夜通し味わうドリンクは格別に違いない。

 

 

「suki1038高台寺」は、祇園エリアの東、“これぞ京都”と誰しも納得する風景が続く歴史的保存地区の石塀小路の奥にあり、周辺の観光にも絶好のロケーション。京都らしい街並みとマッチする2階建ての建造物は、伝統的建造物の指定を受けている。

 

2階建ての町家が一棟貸しとなる「suki1038高台寺」。玄関からは、2階へと上がる階段とその下にキッチン、クローゼット、そして奥には庭が見える。

 

1階奥の庭に隣接する形で、ソファの設置された外部デッキと、大きな浴室が配置されている。

 

2階の和室の窓側には付書院が備えられており、歴史的保存地区の街並みを眺めながら読書や仕事をするのもおすすめ。もちろんWi-Fiの環境も備わる。畳の上に寝転んで何もせず、ただただのんびり過ごす、というのも粋で贅沢。

 

 

「suki1038御所東壱」と「suki1038御所東弐」は、京都御所の東側、鴨川の西側にある。もともと公家や武家屋敷が存在した歴史的な場所だが、現在は人気のベーカリーをはじめ、お洒落なレストランやショップが点在するエリアでもある。

 

 2階建てのこの町家は、1階と2階のそれぞれがワンフロアスイートルームという扱い。1階の「御所東壱」は、リビングダイビングルームにプールのような大きな浴槽が設えられ、2階の「御所東弐」には、離れの和室とベッドルーム横に2層吹き抜けとなる浴室が配置されているのが大きな特徴だ。

 

 

「suki1038御所東壱」の玄関向かいの庭。部屋のどの位置からも外からの視線が入らないようプライバシーが守られた造りになっているが、こちらからは趣深い日本的風情が味わえるのが魅力だ。

 

「suki1038御所東壱」のテラス。こちらでは外の景色は楽しめないが、ラグジュアリーな設えにより贅沢な時間が流れる。夕食後にのんびりと翌日の予定を考えながら部屋飲み、というのもいい。

 

「suki1038御所東弐」のベッドルーム横の浴室は、2層吹き抜けとなる大きな空間となっている。非日常的な構造は、リノベーションならではかもしれない。1階の浴室からはテラスに出ることができる。

 

 

 各部屋には、宿泊客の好みに合わせてセレクトされたウェルカムドリンクとスイーツが用意されている。また、贅沢な時間を楽しめるよう備品にも世界中からこだわりの品がセレクトされている。

 

 和菓子は、京都の「聚洸」によるもの。コーヒーは京都でも知る人ぞ知る名店「IWASHI COFFEE」のもので、毎日直火式の焙煎機で焙煎されている。お茶は日本茶専門店「柳桜園茶舗」のほうじ茶のティーバックを用意。オリジナルの茶缶は持ち帰りが可能だ。オリジナル風呂敷に包まれているのは「八代目儀兵衛」の米。炊飯器が用意されているので朝食に朝粥を楽しむのもいい。

 

 アメニティにはパリ発の高級コスメブランド「ラ・ビオステティーク」を採用。ベッドマットレスには「Sealy」社に特注をかけた。雲のようなフェザーパッドを重ねることで、極上の柔らかい感触に包まれて深い睡眠を得ることができる。

 

「suki1038御所東弐」のキッチンとダイニング。冷蔵庫はもちろん、IHコンロ、オーブンレンジ、トースター、炊飯器、ケトル、調理器具・食器・カトラリーもひと通り揃う。

 

 

 食事の提供はないが、グルメの宝庫ともいえる京都市内の滞在であればむしろちょうど良いかもしれない。もしくは食材を調達して、キッチンを活用するのも楽しい。都会生活での喧騒から離れ、歴史を感じる外装と空気感で京都の歴史を感じつつ、そこに暮らすように快適に滞在できる——。まさに京都ならではの、新しい形の極上リゾートだ。

 

 

suki1038

所在地:

「suki1038高台寺」…京都市東山区下河原通高台寺門前下河原町463番地6

「suki1038御所東壱・御所東弐」…京都市上京区河原町通荒神口西入る荒神町110番地3

レセプション…京都府京都市下京区東洞院通六条下る橋詰町143-2

TEL:075-351-0071(株式会社SuiTTe)

 

事業主:株式会社八清

京都市下京区東洞院通高辻上る高橋町619番地

TEL:075-341-6321

 

HP:https://suki1038.jp/

 

 

Photography:Nacása& Partners Inc.