RENEWED THE WESTIN MIYAKO KYOTO

大規模リニューアルがついに完了!
「ウェスティン都ホテル京都」

July 2021

 創業130周年を誇る「ウェスティン都ホテル京都」が、ついに今年4月に全館リニューアルを終えた。2室あった客室を1室に改装したり、京都の街を高台から望める屋上庭園や天然温泉を引いた温浴施設を新設したり、ドミニク・ブシェ氏監修のフレンチレストランや鉄板焼きレストランが誕生したりと、ラグジュアリー層向けに大きく進化を遂げた。

 

 

ゲストを迎えるエントランスは、天井高約8メートルの吹き抜けでとても開放的な空間に。二層吹き抜けの天井からは花吹雪が舞い散るようにアートピースが飾られており、空間の広さをより引き立てている。

 

 

 国内外にその名を轟かせたいとの思いが込められたリニューアルのテーマは「The Queen of Elegance(気品ある女王)」。日生劇場や迎賓館本館(旧赤坂離宮)などを手がけた昭和を代表する建築家、村野藤吾氏による曲線美を生かしつつ、ホワイトやグリーンが基調となった客室には、鴨川の川床をイメージしたカーペットや梅の花を模したスツールなど、京都・東山の自然をイメージしたインテリアを採用。最上ランクの客室「ラグジュアリースイート」には、ゆったりとしたリビングスペースとベッドスペースが確保されている。

 

 

 

客室はやわらかな曲線美を取り入れた優美な空間。

 

過去に数々の著名人も訪れたウェスティン都ホテル京都。館内にはアーカイブ写真を飾った「都ギャラリー」も。長い歴史の中で大切に保存されてきた調度品にまつわる話など、さまざまなストーリーを聞ける館内ツアー(無料)に参加するのもおすすめだ。

 

 

 

 多彩なダイニングの中でも注目は、ドミニク・ブシェ氏監修としては初となる鉄板焼きレストランDominique Bouchet Kyoto「Le Teppanyaki」だろう。フランス料理を作るイメージで作られる鉄板焼きは、諸兄の想像を凌ぐに違いない。

 

 

 

「Le Teppanyaki」のシグニチャーディッシュのひとつ「オマールブルーの殻ごとロティ アニス風味のビスクソース」。赤ワインソースとバルサミコ酢のソースが、オマール海老と絶妙にマッチ。器は清水焼。

 

本館3階のダイニング「ドミニク・ブシェ・キョート」にある「ウォークインワインセラー」では、食前・食後のドリンクもここで楽しめる。(要相談)

 

 

 

 大規模なリニューアルを遂げたクラブラウンジ「Westin Club」やフィットネススタジオだけでなく、新たに誕生した天然温泉SPA「華頂」は必見。南禅寺の名所、水路閣をイメージしたデザインをあしらった半露天風呂や、サウナ(男性用にはドライサウナ、女性用にはスチームサウナ)、ジャグジー、ジムまで揃う、敷地面積約2,100㎡の京都最大級のスパがホテル内に誕生したのだ。引かれている源泉は『京都けあげ温泉』。関節リウマチや五十肩、冷え性や胃腸機能の低下、自律神経不安定症など、さまざまな症状に効能があるという。

 

 

 

ホテルの中とは思えないほど、広々とした空間。利用できるのは宿泊者と会員のみ。施設は男性と女性で分かれており、いずれも水着の着用は不要。

 

 

 

 また、併設するエステティックサロン「Le Jardin Sothys(ル・ジャルディン・ソティス)」では、自然との融合をコンセプトに、植物に秘められたエネルギーを身体に取り込むことで、大地の恵みを生かしたスパリチュアルを体験できる。フランスに本社を持つSothys社が所有する庭園(フランス語でJardin)にインスピレーションを得た空間で、現代の“湯治”ともいうべき、美と健康の養生、そして心の回復を目的とした施術を受けてみてはいかがだろう。

 

 

国内5店舗目となるソティスの直営サロン。同社は1946年にフランスで誕生。世界130カ国以上のスキンケアサロン&スパを通じて“美”を発信し続けている。

 

 

 

 桜の季節には、ホテルのすぐ外では見事な桜並木が広がるという。今年は叶わなかったが、来年の春こそ、ここの桜たちを愛でに京都を訪れたいものである。そんな日が確実に近づいているのだと思うと、なんだか心が躍ってしまうのは私だけではないだろう。

 

 

 ここからはTHE RAKEの読者に一番おすすめしたい、同ホテルの別館「佳水園(かすいえん)」について紹介していく。1960年に開業したこの別館の設計を手掛けたのは、本館と同じく村野藤吾氏。今回のリニューアルでは、中村拓志氏が監修を担当した。

 

 

「佳水園」のエントランス。

 

村野氏による「白砂の中庭」。醍醐寺三宝院の庭を模してデザインされたもの。緑でひょうたんと杯を表現し、佳水園庭園の岩盤から流れる滝の水をお酒に見立てている。

 

 

 

 2室を1室にする、耐震強度を高めるといった大規模な改修が行われたが、リニューアル後も村野氏の美学は手すりや階段、廊下やロビーなどの細部に感じられる。特に「外観に影響する部分は変えない」といった厳しい制約のなかで、薄い銅板を張り替えることで改修された屋根や庇には、村野氏ならではの手法を色濃く見て取れるに違いない。

 

 

客室「月7」の寝室。

 

 

 アップデートされた客室はというと、20部屋あった客室を12部屋にすることで、一番広い部屋は100㎡以上という広さを確保。各部屋に設らえられた意匠の異なるお風呂には、贅沢にも天然温泉が引かれた。大きなウォークインクローゼットやベッド、さらには文豪になった気分になれるような窓辺の書斎も配され、使い勝手も追求されている。

 

 

 

 

 華頂山の傾斜に位置することを利用して部屋の配置が考えられているため、各部屋が重なりすぎることなく、いずれの客室からも絵画を切り取ったような風景を望める。部屋の中で過ごしていても、水の音、風の音、そして京の景色を思う存分満喫できるのだ。

 

 

 

部屋で夕食・朝食を堪能できる1日1組限定の「佳水園プラン」も登場。夕食では、一人ひとりに好みを聞いた上で特別メニューを用意してくれるという。

 

宿泊者専用の「ライブラリー」。

 

 

 コーヒーや紅茶などと一緒に村野氏や京都の文化に関連する書籍を楽しめる宿泊者専用の「ライブラリー」も誕生。館内にいるだけでも有意義な時間を過ごせるだろう。ロビーで焚かれている「松栄堂」監修の佳水園オリジナルのお香と木々の優しい香りが相まって、心もほっと休まるに違いない。