NOTE PERFECT

レストアと現代技術で
ビスポークされる芸術的な一台

June 2021

史上最高のスポーツカーを、さらによくすることができるだろうか?

シンガー・オブ・カリフォルニアはそれを可能にした。

 

 

text charlie thomas

 

 

 

Porsche 911 Reimagined by Singer

(ポルシェ911 リイマジンド by シンガー)

Spec:3.8リッター・フラット6 350bhp/カーボンファイバーボディ(ドアは除く)/5速ゲトラグG50ギアボックス/4Way電動ツーリングシート/エアコンディショニング US$550,000(クーペ参考価格・ベース車両や輸送費等を含まない)

 

 

 

 ポルシェ911 リイマジンド by シンガーの美しさを言葉で表現するのは難しい。これはクルマというよりひとつのアート作品だ。その特徴は、性的な妄想を抱かせるほど、セクシーな曲線である。

 

 このクルマを見て、まず最初に思ったのは、“先細りのニッケル製ドアハンドルや彫刻が施されたフューエルキャップなど、細部にまでこだわったデザインは、どうやって実現されたのだろうか?”ということだった。その答えは、時間と金、そして創業者ロブ・ディッキンソンの完璧さへのこだわりだ。

 

 そして次に頭に浮かんだのは、“なぜ自分も同じことを思いつかなかったのだろう?”だった。なぜなら、シンガーが行ったことは、人類史上最高のアイデアだからだ。それは、歴代のポルシェ911から最高のパーツを取り出し、それらをつなぎ合わせて究極のロードゴーイング・スポーツカーをつくるというものだ。

 

 

 

 

 964時代の911(最高のドライバーズ911)の骨組みを丸裸にし、1960年代の911(最高の外観)を模したカーボンファイバー製のボディパネルを取り付け、完全にレストアされたフラットシックス・ボクサーエンジンと、細心の新しい機械的パッケージが与えられている。ディッキンソンは次のように語っている。

 

「古い911を解体し、鑑定し、再設計し、強化し、カーボンファイバーでドレスアップする。ドライブトレインは、機械系、電気系ともに、最新の仕様に換装する。最先端のコンポーネントと最高のポルシェパーツが、入念に仕上げられたインテリアとともに組み込まれている」

 

 ウィリアムズF1とともに開発された高性能版に至っては500bhpを絞り出す。カーボンファイバーをふんだんに使い徹底的に軽量化された1000kgという車重を考えれば、まさにスーパーカーの領域だ。0-60mphのタイムは3秒を下回る。

 

 

 

 

 ラグジュアリーな商品の中には、本当に特別なものがある。100時間以上もの時間をかけ手作業で縫製されるオーダースーツや、何百もの微細な部品が調和して時を刻む、スイス製の高級時計などがそうだ。シンガーも、そんなプロダクトのひとつである。手縫いのキルトレザーを使用したエンジンベイから、モモ製“プロトタイプ”ステアリングのセンターキャップまで、すべては細心の注意を払って作られている。

 

「クルマにはどうでもいい部分なんてない。だからワークショップの壁に“すべてが重要だ”と書いてある。われわれは、エンジンのコンロッドの重さにも、シートの縫い目にも、同じように手間をかける数少ない会社だ」

 

 クライアントはそのために55万ドル以上を支払うという。もちろん、それだけの価値があると、皆が知っているからだ。長らく日本では入手困難だったが、今回正規ディーラーを得て、国内でも買えるようになった。クルマと美を愛する人々にとって、何よりの僥倖であろう。

 

 

使用されるのは最高級メーカーの部品のみだ。オーナーのリクエストによって違うが、一般的なポルシェ911 リイマジンドby シンガーには、ブレンボ製ブレーキ、ヘラ製キセノンヘッドライト、コスワースでチューニングされたエンジン、そしてメルセデス・ベンツやテスラのサプライヤーであるアリア社製のカーボンファイバーなどが使われている。

 

 

<日本における正規ディーラー>

永三MOTORS 

TEL.092-611-6869

www.eisanmotors.com/