Michael Hill Interview
マイケル・ヒル・インタビュー

シルクの匂いを嗅ぐと
父親を思い出す

June 2018

text kentaro matsuo

 

Michael Hill / マイケル・ヒル  

1977年生まれ。ドレイクスの初代ネクタイデザイナー、チャールズ・ヒルを父に持つ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションで学び、卒業後サヴィル・ロウのリチャード・ジェームスへ。2004年からドレイクスに加わり、マイケル・ドレイク氏の元で研鑽。2010年ドレイク氏引退に伴い、共同オーナー兼クリエイティブ・ディレクターに就任

 

 

 

 かつてはネクタイとマフラー専業だと思われていたドレイクスだが、今では全身のアイテムが揃うトータルなブランドへと成長を遂げた。そればかりか、英国における、新しい時代のクラシック・ファッションをリードする、台風の目となっている。その立役者が今回ご登場頂いたマイケル・ヒル氏である。

 

 マイケル・ヒル氏の父上は、ブランドの初代ネクタイデザイナー、チャールズ・ヒル氏である。彼は親友マイケル・ドレイク氏とともに、1986年、“ヒル&ドレイク”を立ち上げた。90年代になってチャールズ氏はブランドから離れ、ネクタイのネームも“ドレイクス”となった。さらにその後、今度はチャールズ氏の息子が、ブランドへ入社した。2010年にマイケル・ドレイク氏が引退すると、マイケル・ヒル氏がその意を継いだというわけだ。

 

 

 

「私は布切れに囲まれて育ってきました。私の父、チャールズ・ヒルは、私たち家族を、よくファクトリーへ連れて行ってくれました。父が運転するボルボのワゴンには、シルク地が満載されていて、クルマの中にシルクの匂いがたちこめていました。シルクってどんな匂いがするか、ですって? う〜ん、他には例えようのない、何ともいえない匂いです。しかしその匂いを嗅ぐと、私は幼かった頃のことを思い出すのです」

 

 マイケル氏の場合、失われたときを思い起こさせるのは、紅茶とマドレーヌではなく、シルク地だったのだ。

 

「幼い頃は、毎朝父が洋服を身につけるのを見るのが好きでした。コレにはコレ、アレにはアレと選ぶのを、ずっと飽きずに見つめていました。父からは、ファッションだけでなく、哲学的にも大きな影響を受けました」

 

 

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