MERCEDES-BENZ New S-Class

ラグジュアリー・カーの頂点に立つ存在

June 2021

“Sクラス”は、メルセデス・ベンツのなかでも特別な存在だ。

そのフルモデルチェンジは、実にユーザーフレンドリーなものであった。

 

 

Mercedes-Benz S-Class S 400 d 4MATIC

言わずと知れたメルセデスのフラッグシップ。長い伝統と試行錯誤の末に辿り着いた、至高のセダンである。

全長×全幅×全高:5,180×1,920×1,505mm 車両重量:2,090kg/エンジン:DOHC直列6気筒ディーゼルターボ/最高出力:330ps@3,600-4,200rpm/最大トルク:700N・m@1,200-3,200rpm 最高速度:250km/h/駆動方式:4WD トランスミッション:電子制御9速A/T ¥12,930,000〜 Mercedes-Benz(メルセデス・コール Tel.0120-190-610)

 

 

 

 メルセデス・ベンツSクラスは、ラグジュアリー・カーの頂点に立つ存在である。歴代のシリーズ愛用者には、クラーク・ゲーブル、エルビス・プレスリー、サッカーの神ペレ、マイケル・ジャクソンなど、錚々たる顔ぶれが並ぶ。そんなSクラスが8年ぶりにフルモデルチェンジされ、幸運にも試乗する機会を得た。

 

 全長5.2mの堂々たる体躯を持つ。フロントグリルもさらに大きくなった。だが実物では、押し出しの強さよりも、流麗なプロポーションに目がひきつけられる。まるでクーペのようだ。インテリアはラグジュアリーかつモダン。大型スクリーンは、シームレスにコンソールへと繋がっている。シートを調節するスイッチまでタッチ式となった。これが実に使いやすく、人間工学を追求した結果であることがわかる。

 

 

刷新されたインテリア。スイッチ類は必要最小限、その代わりに流麗なダッシュボードが与えられた。

 

 

 

 走り出すと、まず、その取り回しのよさに驚く。スタート地点は都内某高級ホテルの地下駐車場だったのだが、クネクネとした車路でハンドルを切るたびに、巨大なボディがスパスパと曲がっていく。これは四輪操舵システムを搭載しているからだ。超低速域における効果は絶大で、リバースに入れて、スクリーンのガイドラインを見ると、ありえない角度で曲がっている。

 

 高速道路に入ると、文字通り“極楽”といえる乗り心地が待っていた。首都高の造りの悪さは有名だが、道路の継ぎ目を、タタンッと何事もなかったかのように乗り越えていく。静粛性も群を抜いている。車内にいる限り、3ℓのディーゼル機関が目の前で回っているとは誰も思わないだろう。

 

 

格納式のドアノブ。キーを持って近づくと、ノブがせり出してくるという仕かけ。これはCd値の低減にも役立っている。

 

 

 

 エアコンの温度設定をいきなり低くしてみた。普通のクルマなら、ブオーという音とともに冷風が吹きつけるところだが、Sクラスではそうはならない。吹き出し口からは、ジェントルな“そよ風”が吹いてくるのみである。それでいて、室温がみるみる下がる。こういうところがメルセデスの凄いところだ。例えば、左右独立エアコンで運転席側の温度を19.5度に設定したら、それはメルセデス的には“運転者の頭から爪先まで、すべて19.5度でなければならない”ということなのだ。

 

 高速道路を下りて、郊外の住宅地に入った。碁盤の目のように細い道路が交差している。ここで出色の出来のナビが実力を発揮する。スクリーンに前方カメラで撮影される実風景が映し出され、そこに右左折を示す矢印が重ねて表示される。10mごとに交差点があるようなところでも、正確にガイドしてくれる。

 

 新しいメルセデス・ベンツSクラスでは、僥倖はむしろオールド・ファンにこそ訪れる。“そろそろデカいクルマが億劫になってきた。しかし、ひとクラス下のクルマに乗るのは嫌だなぁ……”という方には、ニューSクラスは、これ一点買いで決まり、である。

 

 

 

タッチ式となった12.8インチ大型OLEDスクリーン。素晴らしい出来のナビをはじめ、クルマのすべてはここからコントロールできる。

 

 

 

本記事は2021年5月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue40