MEDITERRANEAN CASUAL GLAMOUR BY THE TALENTED MR. KRAFT

アレキサンダー・クラフトによる地中海のグラマラス・カジュアル

May 2021

アレキサンダー クラフト モンテ カルロは、エレガントなカジュアル・ウェアとウィメンズ・ラインを展開し、すべての人にサルトリアル革命をもたらすことを目指している。

アラン・ドロンが映画『太陽がいっぱい』(1960年)で使用した船に乗りながら、その素晴らしいコレクションを紹介する。

 

 

by nick scott

 

 

 

 

 体を締め付けるコルセットから大仰なスカート、14世紀のヴェネツィアで履かれていた2インチの高さのヒールを持つ“チョピン”まで、社会的地位の高い女性は、文明が発達していない時代には、“レディらしさ”を表現するため、さまざまな窮屈な服を着せられることが多かった。

 

 幸いなことに、現代の女性たちは、従順なだけではなく、主張のある女性らしさで自分を表現したいと考えている。

 

 そこで、アレキサンダー・クラフトは、夏のコレクションにウィメンズ・ウェアを追加することにした。これは、時代の流れに沿ったタイムリーなものだ。

 

 

 

 

 ちなみにこれらの写真は、1960年に公開されたピカレスク・ロマン『太陽がいっぱい』でアラン・ドロンが演じた人物が所有していた船の上で撮影されている(もともとはデンマーク国王が発注したものだ)。

 

 巨匠ルネ・クレマンによるフランスの犯罪サスペンス映画『太陽がいっぱい』は、パトリシア・ハイスミスの小説『The Talented Mr Ripley』を映画化したもので、ヨット遊びに興じる上流階級のスタイルが描かれている。

 

 男性が着るトラディショナルな服は、堂々としてシックな印象を与える。それは着る人が女性であっても同じだ。女性用テーラーリング・ハウス“ザ・デッキ”のデイジー・ナッチブルは、かつてTHE RAKEにこう語った。

 

「自分に合わせて仕立てられたスーツを着た途端、私は世界を支配できるような気がしました」

 

 

 

 

 

 スマート・カジュアルを演出するのに、ポロシャツほど適した服はない。JFK、ロバート・レッドフォード、ケイト・ミドルトン(キャサリン妃)、エマ・ワトソンなどの著名人が愛用していることからもわかるように、男女を問わず、どんなアンサンブルにもぴたりとハマる。

 

 ポロシャツの起源は、イギリスの支配階級がインドから持ち帰ったものだ。しかし、今日私たちが知っているポロシャツは、ポロ競技用の木槌ではなく、テニスラケットを持った男によって考案された。フランスで7度のグランドスラムを達成したテニス・チャンピオン、ルネ・ラコステである。彼は当時ネクタイまでしていたテニスウェアが、コート上での動きを妨げていると感じていたのだ。

 

 フレッド・ペリー、そしてラルフ・ローレンは、ワードローブとしてのポロの価値を高めていった。そして今日、ポロシャツはスマート・カジュアルの中心的アイテムとなっている。モンテカルロのプロムナードから、英国のパブに至るまで、どんなオケージョンにも似合う。

 

 ではクラフト氏は、この基本中の基本のアイテムを、どのようにデザインしたのか? 彼のコレクションには、ふたつのユニークな特徴がある。

 

 ひとつは、生産や流通のプロセスにおける余計な要素を排除することで、エレガントで時代を超越した服を、よりリーズナブルな価格で提供すること。もうひとつは、クラシックなワードローブの定番商品に、彼が長年培ってきたサルトリアのセンスを反映することである。クラフトは、私たちがよく知っている服から、最も優れた面や特徴を選び出して強化し、面倒なもの、厄介なもの、目的に適さないものを排除したり修正したりするのだ。

 

 アレキサンダー クラフト モンテカルロのロングスリーブ・ポロシャツは、ホワイト、ネイビー、ライトグレイの3色展開で、襟はドレスシャツのカッタウェイ・カラーのように微妙に丸みを帯びてカットされており、通常のポロシャツよりもかなり高い位置に配置されている。襟には取り外し可能なステーが付いており、ジャケットの下に着ても違和感のないデザインになっている。ひとつボタンのバレル・スポーツカフは、フォーマルなドレスシャツを彷彿とさせ、袖を優雅にまくり上げることができる。

 

 他にも、ボタンフライの生地を二重にしたり、左腰(ジャーミン・ストリートの職人がイニシャルを縫い付ける場所)にブランド名の刺繍を施したり、裾のガゼットにイタリアの国旗をあしらったりと、小粋なディテールが施されている。

 

 クラフトがもうひとつこだわったのは、ちょうどよいシルエットだった。そのカットはスリムでありながらタイトではなく、ロング丈でほどよくフィットしている。このポロシャツは、インド・マニプールの野原やロンドン・ウインブルドンの手入れの行き届いた芝生と同じように、都会のおしゃれなホットスポットにもよく似合う。

 

「スーツと合わせてセミフォーマルに。白のパンツとスポーツ・ジャケットと合わせて、パブでの一杯に最適なカジュアル・シックに。チノパンやジーンズ、ショートパンツと合わせて、カジュアルでありながら上品なスタイルにと、このポロシャツはどんな装いも即座にグレードアップしてくれます」とクラフトは語る。

 

 ネイビー、ホワイト、グレイの新しいカシミア・サマーセーターは、暖かな季節の早朝や夕方、ちょっと肌寒いときに重宝する一枚だ。イタリアの家族経営の工房で生産されているこのミディアムライト・ニットウエアは、手触りがよく、味わい深く、フィット感もちょうどいい。中程度の厚さの織りで、がっちりしすぎず、滑らかすぎず、ジャケットの下に着ても違和感のないシルエットになっている。

 

 白のコットンまたはネイビーのコットン・フリースに刺繍が施されたサルトリア・スウェットパンツは、アレキサンダー クラフト モンテ カルロに追加された驚くべきアイテムだ。なぜならクラフトは、スポーツウェアはスポーツをするときにのみ着用すべきだという信念を持っていたからだ。この一着は、コロナ禍のなかで、カスタマーとワードローブとの変化について、クラフトが考え直した結果、生まれたという。

 

 彼の結論は、スタイルに敏感な人たちは、快適で実用的な服を着たいと思う一方で、気品やエレガンスを犠牲にしないレジャーウェアを求めている、というものだった。イタリア製で、洗濯機で洗えるピュアなコットン・フリースを使用した刺繍入りのスウェットパンツは、彼の新しいスポーツウェアライン “カジュアル エレガンス “を象徴するアイテムだ。

 

 裾にゴムを使わず、ドロー・ストリングで留めるこのスウェットパンツは、従来のスウェットパンツのようなだらしなさを排し、ストレートでミディアム・スリムなカットになっている。ふたつの深いフロントポケットの片方には、アレキサンダー クラフト モンテ カルロのロゴが刺繍されている。

 

 このスウェットパンツと相性抜群なのは、アレキサンダー クラフト モンテ カルロの新作、イタリア製100%の超ソフトなコットン・フリースを使ったジャケットだ。ネイビーのコットン・フリースとエクリュのコットンを使用した、デコンストラクテッドされたテニス・ブレザーである。

 

 クラフトが手掛けるチョーク・ストライプのテーラード・スーツやツイード・ジャケットのような洗練されたデザインでありながら、その着心地はまるでスウェットのようだ。このジャケットは、フレッド・ペリーやゴットフリート・フォン・クラムなどが戦時中に着用していたテニスウェアからインスピレーションを得ている。完全なアンコン仕立てのこのジャケットは、裏地やその他の内部材がないにもかかわらず、洗練されたシルエットを実現するようにカットされている。胸ポケットにはロゴが入っており、本開きのボタンホールや、刺繍の色に合わせた襟下のフェルトなど、隅々のディテールに至るまで、こだわって作られている。

 

「クリーム色のトラウザーズにドレスシャツを合わせてスマートなリヴィエラ・スタイルを気取ったり、ジーンズやチノパン、スウェットパンツを合わせて、エレガントなカジュアル・スタイルも可能です」とクラフト氏は言う。

 

 アレキサンダー クラフト モンテ カルロに新たに加わったアイテムは、まさに“万能”といえる。夏に向けて、快適で、カジュアルで、クールなウェアを、性別を問わずに提供しているのだ。