HOW TO WEAR WHITE TROUSERS

白いトラウザーズをどう穿くか?

August 2020

白いトラウザーズは失敗する可能性も高いが、何をコーディネイトするかというガイドラインを守れば、この夏、最高にスポーティでお洒落な選択となり得る。

 

 

by hugo curran

 

 

1930年代のアメリカにて、俳優、ダンサー、そしてファッショニスタとして活躍したジョージ・ラフト。チェックのジャケットとコンビシューズを合わせ、白いトラウザーズを完璧に着こなしている。

 

 

 

 人類の歴史において、白は純粋さの象徴だった。古代エジプトとローマの巫女が着用し、ローマ教皇は1566年以来、白を着ている。イスラム教の巡礼者や日本の神道の神職も着用している。

 

 しかし、メンズウェアの分野では、白いトラウザーズについては少々勝手が違う。それらは快楽主義、誘惑、そしてロマンチシズムの象徴と受け取られてしまうのだ。

 

 ポップ・カルチャーのスタイリッシュなアイコンとプレイボーイをお手本にしてみよう。ミック・ジャガー、ギュンター・ザックス、デヴィッド・ヘミングス……。彼らは白いトラウザーズを、溌溂と身につけていた。ミコノス島の高級レストランではいつも、若い男も年老いた男も、スポーティな白いトラウザーズを穿いて元気いっぱいであった。

 

 白いトラウザーズのチョイスには何も問題がないが、悩みの種となるのは、何とコーディネイトするかだ。これは白いトラウザーズを身に着ける前に、慎重に検討する必要がある。

 

 アメリカの作家マーク・トウェインは、「評判を恐れることは(男が)自分勝手な空想にふけるのを妨ぐ効果がある」と指摘した。そう、いくつかのシンプルなガイドラインを守れば、白は難しくない。多くの愚かな男たちは、白いトラウザーズを何も考えずに着ているが、思慮深いあなたなら大丈夫だ。

 

 

海辺にて、白いトラウザーズとローファー姿でくつろぐ英国人俳優のデヴィッド・ニーヴン。

 

 

 

手本はプレイボーイたち

 正しいサイズを選ぶことは、とても重要だ。白のトラウザーズの場合はなおさらそうだ。 テーパード・シルエットはいいが、足首が極端に細くなっているようなデザインは避けるべきだ。スキニージーンズのように、それはトラウザーズの優雅さを台なしにしてしまう。ややフレアしたものは、似合う靴と合わせれば、有り得るかもしれない。

 

 アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドは、どこでも挑発的な雰囲気を醸し出していて、1960年代のフランスの象徴だった。彼らはしばしば白いトラウザーズを穿いていた。通常はフラットフロントのスタイルで、ウエストは標準的なラインより、少し上に位置していた。

 

 

左:メリカの女優、ラクエル・ウェルチとイタリアの俳優で映画監督のヴィットリオ・デ・シーカ。ナポリを舞台とした映画『The Biggest Bundle of Them All』(1968年)より/右:セーリングを楽しむアメリカの俳優、ゲイリー・クーパー。

 

 

 ミッテル・ヨーロッパの血が少し入っていたのかもしれないが、ドロンのように、ギュンター・ザックスも楽々と白いトラウザーズを着こなしていた。ふたりともよく、マルチストライプのコットンシャツをタックインして着用していた。 ザックスとブリジット・バルドーが、ラスベガスで飛行機から降りるところを撮影した有名な写真があるが、ネックレスが見えるように、少なくとも三つのボタンを外している。

 

 また、ザックスはよく、オープンネックのシルクシャツと、上質なテーラードのネイビーのシングルブレステッド・ジャケットを着用していた。それは白いトラウザーズにとって、理想的なコーディネイトだった。

 

 長い脚を強調するために、彼はイタリアン・テーラードの特徴を取り入れ、丈を短くカットしたジャケットを選んでいた。ガイオラのオーシャンブルーのコットン・ジャケットとドッピア アーのネイビーブルーのコットン×リネン・ジャケットは、そんなイタリアらしいアレンジが施されたジャケットだ。

 

 

フィッシング・ボートの上でくつろぐ俳優、ポール・ニューマン1960年代)。

 

 

 

リヴィエラで最も有名な亡命者

 白いトラウザーズは、リヴィエラ・スタイルのマストアイテムだ。パステルカラーのポロシャツ、花柄やストライプのシャツ、ボーダーストライプのトップス、アンコン仕立てのジャケットなどと組み合わせれば、さまざまな暖かい気候に合わせて、簡単にシックなコーディネイトをつくることができる。

 

 ボリュームのある白のパンツは避けたほうがよいとされているが、例外がある。リヴィエラで最も有名な亡命者であったウィンザー公爵である。彼ほど白のトラウザーズをうまく着こなしていた人はいなかった。

 

 王室ではデヴィッドと呼ばれていた彼は、ハイウエストでワイドレッグ、ダブルプリーツの折り返し付きトラウザーズを、白を基調としたさまざまな色合いで穿いていた。

 

 彼の着こなしの美学は、“スプレッツァトゥーラ”にあったため、明るく、微妙な色彩のポロシャツを、無造作に白いトラウザーズに合わせていた。彼はしばしばポロシャツの下にアスコットを巻いていたが、これによりトラウザーズとポロシャツがケンカすることを、知的かつスタイリッシュに回避していた。

 

 

プルオーバー式のシャツと白いトラウザーズを合わせた俳優、ダンサーのジーン・ケリー。

 

 

 正しい靴を選ぶことも、白いトラウザーズをうまく着こなすために重要だ。白のトラウザーズは、光沢のある靴とはあまり合わない。白いトラウザーズのラインは目立つので、チャッカブーツなど、がっしりとした革靴は避けたほうがよい。ウエスタン・スタイルのキューバン・ヒールのブーツを履けば、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画『欲望』(1967年)のデヴィッド・ヘミングスのような、ロックンロール感溢れるスタイルに変身できる。

 

 プレーンなベルジャン・ローファーもいいが、ギンガムチェック・シャツにタッセルローファーといった、典型的なスタイルはできれば避けたい。ホワイト・オン・ホワイトは、いくつかの例ではクールだが、靴は必ず清潔でなければならない。

 

 よりカジュアルなチョイスとしては、モカシン、ボートシューズ、ドライビングシューズ、スニーカー、エスパドリーユ、スリップオン・ローファーあたりが似合うだろう。かつてミック・ジャガーが履いていた、白いボウリング・シューズとのコーディネイトも、いい組み合わせだった。

 

 この夏、白のトラウザーズを穿くことは、最高にスタイリッシュであることは間違いない。リスクを冒す価値は十分ある。ジャガーやザックスのように(ルールの範囲内で)遊び心を持つことを恐れないで欲しい。

 

 

 Tシャツと白いトラウザーズ姿で佇む俳優、ケーリー・グラント。