HOTELS DELUXE Vol.03

ホテル連載 第3回:ホテルの名物料理

April 2020

歴史あるホテルには、長きにわたって受け継がれてきた名物料理がある。それらが誕生した背景には、一体どんなストーリーがあるのだろう。物語を知り、そして味わうことで、ホテルで過ごす時間をより豊かなものにしたい。

 

 

<ザ・キャピトルホテル 東急>

透き通るスープは鳥と豚のガラを約4時間煮込んだものがベース。トッピングは、白ネギ・万能ネギ・ラー油・七味唐辛子の全4種。「排骨拉麺(パーコーメン)」¥2,600(税サ別)

 

 永田町のザ・キャピトルホテル 東急「ORIGAMI」の「パーコーメン」は、政財界にファンが多い。その場所柄もあり、歴代の総理大臣たちに愛されてきた“出世麵”として有名なのだ。今やホテルの名を聞くだけで多くの人々が連想するこの名物は、前身の東京ヒルトンホテル時代に「日本で人気のあるメニューをゲストに提供したい」という総支配人の思いから誕生した。

 

 こだわりは数多くあり、例えばパーコーは、国産豚ロースを秘伝のタレに2時間半漬け込み、その後異なる温度で2回揚げることで外はカリカリ、中はジューシーに。また麵には、箸が苦手な海外のゲストでも楽しめるように、伸びにくい工夫がされている。味わうほどに、細部に宿る深いこだわりを感じられるだろう。

 

 

オールデイダイニング「ORIGAMI」

営業時間:6:30~24:00(L.O.23:30)提供時間:11:00~24:00

TEL. 03-3503-0872

www.tokyuhotels.co.jp/capitol-h/restaurant/origami/index.html

 

 

<帝国ホテル>

この名がつけられたのは、1936年にシャリアピンが再度来日したとき。ソース代わりの玉ネギのソテーが、柔らかいお肉の味わい深さを増している。「シャリアピンステーキ」¥5,300(税込サ別)

 

 

 1890年に“日本の迎賓館”として誕生した帝国ホテル。開業時の発起人のひとりである渋沢栄一氏はこんな言葉を残している。「ホテルは一国の経済にも関係する重要な事柄。外来の御客を接伴して満足を与ふるやうにしなければならぬ」。これを体現するような名物料理が帝国ホテルには多数存在する。

 

 そのひとつであるこの「シャリアピンステーキ」は、1934年に来日したオペラ歌手フョードル・イワノビッチ・シャリアピンのために生み出された料理。歯の痛みに悩まされていた彼の「ステーキが食べたい」というリクエストを受け、当時の料理長が考案したもの。玉ネギに漬け込んで柔らかく仕上げたランプ肉と、その上の玉ネギのソテーが滋味深い1皿だ。

 

フランス料理 「ラ ブラスリー」

営業時間:ランチ11:30~14:30(L.O.) ディナー17:30~21:30(L.O.)

TEL. 03-3539-8073 ※ランチは要予約

www.imperialhotel.co.jp/j/tokyo/restaurant/la_brasserie/

 

 

 

<ホテルニューグランド>

ニンニクと玉ネギを飴色になるまで炒め、トマトの粗切りやトマトペースト、ローリエなどを加えて完成。誰もがほっとする優しい味わいだ。「スパゲッティ ナポリタン」¥1,800(税サ別)

 

 

 1927年に開業した横浜のホテルニューグランドは、現代の日本人にとって馴染み深いメニューの発祥地である。なかでも代表的なのが「スパゲッティ ナポリタン」だ。

 

 誕生のきっかけは終戦当時、GHQ将校の宿舎として接収された同ホテルに滞在していた米兵の食事。彼らは自ら持ち込んだ軍用保存食で作った“スパゲッティに塩、胡椒、トマトケチャップを和えたもの”をよく食べていたという。

 

 その様子を見た2代目料理長の入江茂忠氏は「この質素なスパゲッティに代わる、ホテルで提供するにふさわしいものができないか」と試行錯誤。苦心して改良を重ねた結果、愛すべき名物ナポリタンが誕生した。代々受け継がれてきた今も変わらぬ味を、歴史ある空間で愉しみたい。

 

 

コーヒーハウス「ザ・カフェ」

営業時間:10:00~21:30(L.O.) TEL. 045-681-1841

www.hotel-newgrand.co.jp/the-cafe/

 

 

<パレスホテル東京>

上:「地鶏チキンカレー/和牛ビーフカレーセット」(それぞれ約2名分)¥4,500 下:和牛ビーフカレーのイメージ。3種類セットや単品、自由な組み合わせでの購入も可能。

 

「パレスホテル東京」の前身である「パレスホテル」の地下に、1977年から2009年までカレー専門店としてランチタイムのみ営業していた「IVY House」を覚えているだろうか。周辺のビジネスマンやホテルゲストを中心に多くの人々に愛され、惜しまれつつ閉店を迎えたこのカレーハウスの味を継承したカレーが、今、自宅で楽しめるのだ。

 

 ラインナップは、地鶏チキンカレー、和牛ビーフカレー、黒豚ポークカレーの3種類。いずれも大きいお肉がごろっと入っており、ボリュームたっぷり。

 

 チキンカレーとビーフカレーは、じっくり炒められた玉ネギの甘みと8種類のスパイスがベースに、ポークカレーはトマトをたっぷりと使い、甘みと酸味がある濃厚な味わいに仕上げられている。その本格的な味わいは、“レトルトカレー”の常識を覆してくれるだろう。

 

 いずれも、パレスホテル東京地下1階のペストリーショップ「スイーツ&デリ」で購入可能。オンラインでも販売されている。自宅用にも、大切な人への土産としてもおすすめだ。

 

「スイーツ&デリ」

営業時間:10:00~20:00 TEL. 03-3211-5315

www.palacehoteltokyo.com

本記事は2019年9月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

 

 

 

<本連載の記事は以下より>

Vol.01 ホテルでクルマを愉しむ

Vol.02 高層階のプールを安息地にする

Vol.03 ホテルの名物料理

Vol.04 素敵なテラスのある客室

Vol.05 最新ルーフトップバー

Vol.06 ルームサービス限定の一皿 其ノ一

Vol.07 ルームサービス限定の一皿 其ノ二

Vol.08 バーバーで男を磨く

Vol.09 名物手土産 -定番編-

Vol.10 名物手土産 -缶クッキー編-

Vol.11 名物手土産 -アロマ編-

Vol.12 ドライサウナがあるホテルのスパ

Vol.13 夏限定の麺料理