HOLY SMOKES: HOW TO LIGHT YOUR CIGAR

シガーに火をつける、正しい作法

March 2024

THE RAKEのシガー・エキスパート、マイク・チョイが、どうやってシガーに火をつけたらいいか、その正しい方法を伝授する。

 

 

text mike choi

 

 

 

 

 シガーに火をつけることは、一見簡単そうにも思えるが、しかしそこには、守らなければならないルールがある。デリケートで、贅沢で、強く、素晴らしい香りを得るためには、辛抱強く、ルールを守ることが絶対に必要なのだ。正しく丁寧に扱えば、シガーは尊敬に値するものとなる。

 

 ハンドロールの高級品は、シリンダーの形をしたアートであり、火をつけると言葉では表せない喜びをもたらしてくれる。買った人を決して失望させないよう、作り手は努力しているのだ。業界でも最も信頼される男の一人であるマイク・チョイが、シガーにどうやって火をつけるかを解説する。

 

 

 

<マッチ>

 スワン・ヴェスタスの安全マッチを使うことは、おすすめできない。シガー用にデザインされた、長めのものを使うべきだ。杉の木で出来ていて、頭薬の部分は硫黄分が少ないものがいい。硫黄の臭いで、シガーを台無しにしてしまわないために。マッチに火をつけたら、それをしばらくシガーから離しておくこと。火をつけた瞬間は硫黄分が燃えるので、その臭いをシガーにつけないためだ。これは数秒の間でいい。

 

 マッチはシガーに火をつける方法として古典的なものだが、誰でも手軽にでき、ラッパーを焦がすのも簡単だ。シガー・ソムリエがゲストのためにシガーに火をつけるときは、左手でシガーのバンドを持ち、右手に火のついたマッチを持つ。

 

 シガーに火をつける簡単な方法は、カットしたシガーを口にくわえ、火のついたマッチをシガーの先に近づけて、シガーを回しながら息を吸うのだ。炎がシガーの切り口のなかに吸い込まれていくのが見えるだろう。シガーを回しながら、数回ほど吸い込めば十分だろう。

 

 それからシガーを口から離して、反対側を覗いてみる。均等に赤くなっていればOKだ。もしどこかに大きな暗い場所があったなら、それはもう一本マッチをすって同じことをする必要があるということだ。小さな暗い点であれば、もう少し、素早くふかせば大丈夫だ。もう一度シガーを口にくわえて、吸ってみよう。

 

 

 

<シダー片>

 杉の木はシガーのベストフレンドだ。杉はシガーを入れる箱や仕切り、シガーを入れるチューブやヒュミドールを作るのに用いられる。湿度を保つ効果があるのだ。シガーに杉木の香を吸わせ、香りをよくする効果もある。

 

 多くの場合、シガーの箱を開けたら、杉でできたカバーシートとシガーを二段に分けるための間仕切り板を目にするだろう。これらの杉板は、手でカットして“シダー片”を作ることができる。箱入りのシガーを買えば、タダで手に入る。

 

 もっとマニアックなことを追求している人もいる。私のアメリカ人の友人、トーマス・パーソン氏は、カスタムメイドのシガー片を作っている。数年前、氏にロンドンで会ったとき、彼がいかにシガーに適した杉の木の質を追求しているかに驚かされた。そして彼はレーザーを使って、シガー片に好きなロゴや名前を刻印することも行なっていた。

 

 

 

<ソフトフレーム・ライター>

 マッチの替わりとしていいものがある。ソフトフレーム・ライターだ。炎を安定して持続させることができ、マッチのように“このままだと自分の指が焦げてしまう”と心配しなくていい。ソフトで黄色い炎を持つライターは、シガーに火をつけるのに時間がかかるが、炎の温度が低く、ジェットフレーム・ライターのようにシガーの断面を必要以上に焦がすことなく、吸い始めの苦みを抑えることができる。

 

 マッチ、シダー片、ソフトフレーム・ライターは、シガーに着火するのに、理想的な3つだ。ライターには無臭のブタンガスが使われている。最大の問題は、これら3つはアウトドアで使うのが難しいということだ。風に弱いのである。

 

 

 

 

<“ザ・シガー・トラベラー”ライター>

 これは一種のハイブリッド・ライターである。私の友人でもあるジャスティン・セルディスが開発したもので、新しい技術といえる。“ザ・シガー・トラベラー”は、ジェットフレーム・ライターの機能を持つにも関わらず、飛行機に乗る際に、手荷物として持ち込めるように設計されている。

 

 インサート部分はビックライターのような形をしているが、フリントホイールがついておらず、それ単体では着火することができない。ザ・シガー・トラベラーの優れている点は、ジェット部分と燃料の入ったインサート部分を別々に持ち運べることで、単体としてはライターとはいえず、機内持ち込みが可能なのだ(編集部注:未確認)。

 

 

 

<ジェットフレーム・ライター>

 高圧ブタンガスを使ったライターは、概してジェットライターと呼ばれる(またはウィンドプルーフとも)。これはシガー用として、とても一般的なものだ。手軽で、アウトドアにも適している。

 

 私のお気に入りは、エステーデュポンのデフィエクストリームというモデルだ。私はこれを最低5年以上は使っているが、依然として強い火力を維持している。タフなシェイプを持つシングルフレーム・ライターで、十分な大きさのブタンガス・タンクを持っている。そのデザインは、私にランボルギーニを思い起こさせる。私が日常使うアクセサリーのなかで、もっとも高価なものでもある。

 

 マルチフレーム・ライターというものもあり、中には5つもフレームを持つものまである。太いゲージのシガーを吸う時に便利だが、細めのものだと焦がしすぎてしまう怖れもある。フレームの数が多いので、ブタンガスの消費も早い。

 

 

 

<使ってはいけないもの>

・ロウソク———ロウソクのアロマを吸い込んではいけない。

・オイルライター———オイルの臭いがシガーに移ってしまう。

・安全マッチ———短すぎるし、頭の部分の硫黄分が多すぎる。

・50ポンド札———お金は大切に!