GUNTÛ : A FLOATING RYOKAN

調和を感じ、五感をうるおす
せとうちに浮かぶ宿「ガンツウ」

December 2020

木材の温もりと香り、多島美が織りなす景色、穏やかな波の音――

そのすべてが一体となった豊かな空間が、瀬戸内を航行するこの船にはある。

 

 

船内で唯一、進行方向を一望できる「ザ ガンツウスイート」。露天風呂とデイベッド付きテラスも完備。2泊3日2 名1 室利用¥900,000(1名分)〜。他の客室タイプは2泊3日2名1室利用¥400,000(1名分)〜。一隻貸切も可能(料金は要問い合わせ)。

 

 

 

 瀬戸内海を約10ノットという速度でゆっくり進む「guntû(ガンツウ)」は、いわゆる豪華客船とは大きく異なる。設計を手がけたのは、日本を代表する建築家、堀部安嗣氏。「瀬戸内海で最も目立たない、景色を邪魔しない船にしたいと思っていました。そしてゲストが自分の五感が研ぎ澄まされていくのを感じ、素の自分に戻れるような空間にしたかった」と氏が語るように、ガンツウは身も心も安らぐような“和”を感じる客船である。

 

 外観は、落ち着いたシルバートーン。瀬戸内の集落によく見られる切妻屋根のデザインが取り入れられ、曇り空の下でも夕焼けでも、瀬戸内の景色に溶け込む。船内は、ヒノキやサワラなど11種類もの木材や漆喰などの自然素材が多用され、肩の力が抜けるような温もり溢れる空間が広がる。天井、壁、そして床にまで木材が用いられた全19の客室は、素足で過ごしたくなるほど居心地が良く、木と潮が香るデッキやテラスでは思わず深呼吸をしたくなるだろう。

 

 

船首のデッキに隣接する「カフェ&バー」では、カクテルや瀬戸内名産のお菓子、果物などを常時好きなだけ楽しめる。季節の果物を使ったカクテルもぜひ味わいたい。

 

 

 船首に隣接するカフェ&バーでは、外が明るい時間には前方から横へと移りゆく多島美を独り占めでき、静謐に包まれる夜には頭上の照明がまるで星明かりのようにキラキラと光る幻想的な空間となる。靴を脱いで上がるラウンジには柔らかい絨毯が敷き詰められ、窓に設えられた障子をすべて閉めるとモダンな日本家屋を思わせる空間に、開けると移りゆく島々、そして個性的な橋の姿がパノラミックに広がる。

 

 堀部氏の計算し尽くされたこだわりは、他の場所にも見て取れる。例えば縁側では、腰かけたときの目線に合わせて、庇と手すりが額縁のごとく景色を切り取るように設けられているため、延々と続く島並みを眺めているだけでも、その美しさに心が満たされる。何もしないことこそ贅沢と感じられるような、豊かな時間がガンツウには流れている。また船内にドレスコードはなく(とはいえ夕食時のショートパンツやサンダルなどは控えたい)、客室に用意されている浴衣と雪駄で過ごせるため、旅館のように寛ぐことができるのだ。

 

 

「ラウンジ」では、奈良の和菓子店「樫かしや舎」の喜多誠一郎氏が監修した和菓子を職人が目の前で作ってくれる。音響マニア垂涎のスピーカーシステムが用意されているパブリックエリアでもある。

 

 

オーダーメイドの献立

 

好みの食材を好みの調理方法で。

 

 

 旅の醍醐味のひとつである食についても、ガンツウはひと味違う。お酒を含むドリンクまでもがオールインクルーシブなのだ。船のコンセプトに「好きなものを、好きなだけ」とあるように、和洋問わず食べたい料理をなんでもオーダーできる。野菜、魚介、肉に至るまで瀬戸内ならではの旬の食材が豊富に用意されており、特にディナーでは四季を五感で感じられるような調理をしてくれる。料理長との会話を楽しみながら、調理方法を含めメニューをカスタマイズしてくれるため、極端にいえば全種類をひと切れずつ、なんていうオーダーも可能だ。

 

 

上:東京の名店「重よし」の佐藤憲三氏が和食を監修。素材を最大限に生かす調理を得意とし、炭焼きもそのひとつ/左下:瀬戸内が育む多彩な白身魚を中心にさまざまなネタを堪能できる/右下:蟹の旨味が濃厚な「ガンツウ・カレー」。

 

 

 

 極めつけは、人気鮨店「淡路島 亙」の坂本亙生氏が監修する6席だけの鮨カウンターだろう。多彩な白身魚はすべて異なる形で饗され、今まで出合えなかった奥深い味わいに気づかせてくれる。

 

 これほど船内が充実していると外に出ることさえ忘れてしまいそうだが、ガンツウは瀬戸内の島々をめぐる船外アクティビティも充実している。航海中に着岸することがないため、錨泊する船からテンダーボートで陸へとアクセスする。行き先は選ぶ航路によってさまざまだが、厳島神社や直瀬戸内が育む美食を堪能し尽くす島、鞆の浦など、瀬戸内の名所ばかりだ。新しい航路も今年はスタートし、文化や食、アートなど、あらゆる側面から瀬戸内の魅力に触れられる。

 

 俗世界とは少し距離を置ける海上の宿「ガンツウ」で、美酒美食を堪能し、移りゆく景色に思いを馳せ、身と心の安らぎを感じる。人々が求める贅沢が行き着く場所は、すべてここにあるのだろう。

 

 

ガンツウデスク

TEL. 0120-489-321

Email:info@guntu.jp

営業時間:10:00〜18:00(日・祝、年末年始除く)

https://guntu.jp