THE MODERN VOICE OF CLASSIC ELEGANCE : FERRARI ROMA

古都に映える、
最もエレガントなフェラーリ

February 2021

THE RAKEのスローガンをそのままカタチにしたような1台、それがフェラーリ ローマである。

古都の名を冠するクルマに、同じくミレニアムの時を有する京都にて試乗した。

 

 

 

Ferrari Roma/フェラーリ ローマ

クラシックなプロポーションとモダンなディテール、そしてアップデートされたハイテクを融合したフェラーリの最新クーペ。異次元のスピードのみならず、そのエレガントな世界観が最大の魅力である。

エンジン:3,855cc V8ツインターボ、最高出力:620ps@5,750-7,500rpm、最大トルク:760Nm@3,000-5,750rpm、全長×全幅×全高:4,656×1,974×1,301mm、乾燥重量:1,472kg、ギアボックス:8速F1デュアルクラッチ、0-100km/h加速:3.4秒、最高速度:320km/h、¥26,760,000〜 Ferrari

 

 

 

 かつてフランソワーズ・サガンは「ウイスキー、ギャンブル、フェラーリは家事よりよい」と口にした。処女作『悲しみよこんにちは』が世界的べストセラーになり、若くして時代の寵児となった彼女は、平凡を嫌い、美しくエレガントなものを愛した。そんなサガンが存命していれば、絶対に欲したであろうクルマが、このフェラーリローマだ。

 

 コンセプトは“La Nuova Dolce Vita(新しい甘い生活)。1960年の名匠フェリーニの映画、および放埒に生きたローマの上流階級をイメージとしているという。スピード至上主義とは一線を画した、新しい時代のフェラーリに、紅葉盛りの京都にて試乗する機会を得た。

 

 まず目を奪われるのは、美しいエクステリアだ。最近のフェラーリは直線的でエッジィなラインが多かったが、ローマのシルエットは、クラシカルで艶めかしい。250GTルッソなど1950〜60年代の名車たちにインスパイアされている。しかしディテールに目を移すと、新しい試みも散見される。フロントグリルはボディに直接パンチングしたような構造で、フロントライトはLEDを使った未来的なもの、リアランプは細長いジェム(宝石)のようなデザインとなっている。それら新旧の要素が、1台のクルマの中に見事に融合されている。

 

 デザイン・ディレクター、フラビオ・マンツォーニ氏の力量を感じる。氏は言う。

 

「フェラーリはたとえバッジがついていなくても、ひと目でフェラーリだとわからなければなりません。フェンダーラインには流れるような加速感があり、ボディでは光と影をうまく交差させることが必要です。アイコンであるスマイリング・グリルや丸いリアランプなどは、いつでも使えるボキャブラリーのようなものですが、同じことを繰り返そうとは思いません」

 

 インテリアも未来を先取りするものだ。メーター類はすべてデジタル化され、ほとんどの操作系がタッチパネルとなったのだ。各機能の切り替えは、ステアリングのタッチパッドをスワイプして行う。

 

「“目は道路に、手はステアリングホイールに”というモットーを掲げました。ハンドルの中央から最も頻繁に使用するコントロールを配置し、何度もテストを繰り返し、ベストなポジションを探りました」

 

 

 

コクーン・コンセプトと名づけられたコクピットを囲むようなインテリアが特徴。助手席にも専用のディスプレイが配され、同乗者も運転の楽しみを共有できる。

 

 

 

 上質のレザーが奢られたシートはラグジュアリーそのもので、乗り込むとまるで一流ブランドのジャケットを着込んだ気分になる。このシートもタッチパネルを介してサポート類を細かく調節できる。

 

 エンジンのスタート&ストップもタッチ式である。指を合わせると轟音とともに3.9ℓのV8が目覚める。見た目は華麗だが、エンジンの咆哮は猛獣そのものだ。シートは薄くスマートで、それなりに硬いが、コンフォート・モードで走り出してみると、乗り心地がいいことに驚かされる。エブリデイ・フェラーリを自認するクルマなので、基本的には誰でも簡単に運転できる。

 

 しかし、比叡山のワインディングでは、このクルマの底知れない性能を垣間見る。飛ばしているつもりはないのに、あっという間に先行車に追いついてしまうのだ。一般車に比べ、コーナースピードが圧倒的に速い。ハンドリングはクイックで、細かいライン修正も思いのまま。これはやはり超一流のスポーツカーなのだと再認識する。

 

 直線でアクセルを全開にすると、心臓が止まりそうになるような加速が味わえる。620hpを絞り出すエンジンは、8速デュアルクラッチと組み合わせられ、アンダー1.5tという軽い車体を弾丸のように押し出す。高回転を保ちながら走ると、有り余るパワーをダイレクトに感じられ、退屈な高速道路が興奮のステージへと変わる。これを通勤車として使ったら、毎日がエキサイティングになること請け合いだ。

 

 だが、このクルマに最も魅力を感じるのは、やはり外から眺めたときだろう。夕刻下車して、ふと振り返ったとき、ローマの美しさに息を呑んだ。その姿は夕日の中に佇む貴婦人のようであった。THE RAKEのスローガンである“THE MODERN VOICE OF CLASSIC ELEGANCE”をそのまま形にしたような一台、それがローマである。

 

 

伝統の丸ランプは廃され、ジェム(宝石)のような細長い形状のリアランプが採用された。コーダトロンカを再解釈した、流れるようなヒップラインと完全にマッチしている。

 

THE RAKE JAPAN EDITION issue38

本記事は2021年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。