CURRY & PAXTON:
THE CENTENARY COLLECTION

100年の歴史を持つ英国アイウエア
“カーリー&パクストン”

June 2020

1920年に設立されたカーリー&パクストンが“センテナリー・コレクション”をリリースした。魅惑的なプロモーション・ビデオも、ぜひご覧頂きたい。

 

by HUGO CURRAN

 

 

 

 

  1920年に設立された英国のアイウェア・ブランド、カーリー&パクストンがイノベーションとイマジネーションに溢れた歴史と、その100周年を記念して、“センテナリー・コレクション”を発表した。

 

 このコレクションには、マイケル・ケインが愛用し、一斉を風靡した“Yvan(イヴァン)”モデルをはじめとした、さまざまなスタイルのメガネとサングラスで構成されている。このコレクションは、ブランドのユニークな伝統を受け継いでいるが、同時にいくつかは、現代のジェントルマンに似合うようデザインされている。

 

 カーリー&パクストンは、もともとロンドンのグレート・ポートランド・ストリート195番地に拠点を置いていた。20世紀に入ると、アイウエア業界は特段の進化を遂げ、メガネは医療用道具から、エリートや富裕層に好まれるファッショナブルなアクセサリーとなった。

 

 

 

 

 第二次戦時中には軍需用品の工場としても指定された。当時、男たちが世界中のあらゆる場所で死闘を繰り広げている間、女性たちは敵を発見するために重要な役割を果たした。敵の自動車や航空機を見張っていたのだ。義勇軍の女性たちは、大地に身を潜め、革で縁取られた眼鏡をかけ、双眼鏡を覗いた。それはどちらもカーリー&パクストン製であることが多かった。

 

 戦後、国民衛生局はカーリー&パクストンと、アイウエア供給の契約を結んだ。一方で、フレンチ・リヴィエラのような場所で遊んでいた王族やハリウッド・セレブの間で人気となり、ブランドはさらに有名になっていった。

 

 1950年代半ばには、ファッショニスタの間で、最も人気があるブランドのひとつとなった。コート・ダジュールやポルト・フィーノでは、かのウィンザー公爵が、カーリー&パクストンのサングラスをかけて歩いている姿を、よく見かけたものだった。

 

 1960年代の映画は、エンターテインメント、ファッション、ロックンロールなど、社会と文化が劇的に変化した10年間を反映していた。この変化を象徴するのは、架空のキャラクターであるチャーリー・クローカーだ。映画『ミニミニ大作戦』(1969年)の生意気な、小柄なコックニーの悪党で、愛すべき英国の悪党たちを率いて、大胆な金塊強盗を企てた。演じたのはマイケル・ケインで、カーリー&パクストンのアイウエアをかけていた。これはブリテッシュ・スタイルの、ひとつのアイコンとなった。

 

 

 彼が公私ともに愛用したイヴァン・モデルは、フレームとテンプルに施された3つのピンワークによるトライアングルが目印だ。

 

 ケインは1965年には、すでにカーリー&パクストンを愛用しており、『国際諜報局』(1966年)、『パーマーの危機脱出』(1966年)、『10億ドルの頭脳』(1967年)などの映画で、カーリー&パクストンを身につけていたが、何より1960年代のブリティッシュ・スタイルを象徴しているのは『ミニミニ大作戦』であった。

 

 特にイタリア、トリノ空港でのシーンはスタイリッシュだった。ケインはガールフレンドのローナ(マーガレット・ブライ)を見送る。彼の目はライトブラウンのレンズのイヴァンで、部分的に隠されている。

 

 ケインが着ているのは、シングルブレステッド、3つボタン、ベージュのリネンのスーツで、高いノッチド・ラペル、深いダブル・ベンツを特徴とし、トラウザーズは、ややローライズなフラット・フロントである。左のラペルが少し上がっていることで、一部の人たちから否定的な意見が出ているが、それは的外れだ。

 

 1969年はよくも悪くも世界が変わる激動の年だった。マイケル・ケインは、彼のために特別に書かれたギャング・スターを演じていたのだ。スーツは、完璧ではなかったからこそクールだった。ベージュのスーツにブラウンのストライプが入った白いシャツがよく似合っていた。そしてべっ甲フレームのイヴァンのサングラス・・。非常にクールで独特のアイコニックな美学が形成されていた。

 

 今日、長い時を経て復活したイヴァンは、再び大人気となっている。これを受けて、カーリー&パクストンは、THE RAKEのウェブサイトで、20の新しいサングラスとメガネをリリースした。

 

 

 イヴァンによく似ているのは、コーヒーブラウンのナチュラル・アセテート製サングラス“Charlie(チャーリー)”だ。イヴァンと同様に、フレームは大胆な四角い形をしていて、キーホール・ブリッジを特徴とし、ダークブラウンのグラデーション・レンズが付属している。アセテート・フレームはすべて、イタリアの有名なサプライヤーであるマツケリー社から調達されたプレミアム素材を使用している。

 

 カーリー&パクストンには輝かしい歴史があるが、最新のコレクションでは、シャンパン色のアセテートにグレーのグラデーション・レンズを組み合わせた“Freddie(フレディ)”など、より現代的なスタイルも提案している。このシャンパン・カラーのアセテート・フレームは、エレガンスと気品を感じさせる。

 

 特筆すべきは、“Paul(ポール)”サングラスで、特大のDシェイプ・フレームを採用している。高級感のある濃いべっ甲色のアセテート製で、ダークブルーのグラデーション・レンズが特徴的なこのサングラスは、昔ながらのアイウエアのよさを体現している。

 

 カーリー&パクストンには20以上のスタイルを用意されている。何十年にもわたってブリティッシュ・スタイルを築いてきた名ブランドを、THE RAKEのウェブサイトで、ぜひ入手して頂きたい。

 

 

 

 カーリー&パクストンの世界観を、映画『泥棒成金』(1955年)のカーチェイスシーンを再現した、クールなビデオでご覧ください。