COTTON DANDY

コットンダンディ

April 2020

優れたコットンのジャケットが、すべてのメンズウェアのなかで、最も投資に値するものである理由とは何か。

 

by CHRISTIAN BARKER

 

 

 

 

 昔から、“ワードローブの中で最も高価な服は、決して着ることない服だ”といわれる。なぜなら、バーゲンで手に入れたにもかかわらず、ほとんど袖を通していない服よりも、高いお金を費やしても、それを常に身に着けている服のほうが、実際には、はるかに優れた投資だからだ。

 

 私にとって前者の代表的な例は、何年も前に激安で購入したラルフ ローレン パープル レーベルのディナージャケットだ。

 

 色はライムグリーン、シャンタンシルク製、ショールカラー、ダブルブレステッド……(そう、このように幅広い魅力を備えたものは、バーゲンのときについつい買ってしまいがちだ)。

 

 今までに着用したのは1回だけ。つまりその1回の外出で、実質的に400ドルの費用がかかったことになる。しかし、私はそれを買ったことを微塵も後悔していない。いつの日か、私は“クラブ・トロピカーナ・フォーマル・パーティ”か、“セント・パトリック・デー・ブラックタイ”の招待状を、受け取るに違いないから……

 

 その価値観の反対側には、才能豊かなローレン氏から入手したもうひとつのアイテムがあり、グリーンシルクのジャケットとほぼ同じ金額で、定価にて購入した。違いは、私が何年にもわたってそれを頻繁に着用しているということだ。

 

 ネイビーブルーのコットン、裏地なし、ソフト・コンストラクション、パッチポケット、2つボタンのジャケットだ。私の意見では、すべての人にとって必要なワードローブである。

 

  なぜか? 簡単に言えば、メタルボタンが付いたネイビーブレザーの従兄弟(いとこ)のように、一年中非常に役立つアイテムだからだ。この種のジャケットは、真冬の室内用カーディガンやセーターの代わりとして使うことができる。

 

 

 

 

 春には、チノパンツ、デザートブーツ、ローファー、オックスフォード製のボタンダウン・シャツのすべてと合うし、またシルクニットタイ、チェックのコットンネクタイでもいける。

 

 夏になると、スニーカー、ジーンズ、Tシャツ、ポロシャツ、キャンプカラー・シャツなどと合わせられ、ショートパンツやビーチサンダルで仕上げると、簡単にバカンスな雰囲気が作れる。

 

 秋になったら、コーデュロイのトラウザーズ、チェックのシャツ、ウールタイ、チャッカブーツやハイキングブーツとコーディネイトしたい。

 

 ランチ、ディナー、映画館、劇場、オフィス、飛行機、森の中の散歩、ビーチでのビール、ドライブ、デート、カントリークラブやナイトクラブなど、すべてにおいて最適だ(そして、着終わったら、丸めて枕として使うこともできる)。

 

 この種のジャケットは、あまりにも使い勝手が良いので、すぐに擦り切れてしまうかもしれないが、手頃な価格のおかげで、十分にリーズナブルだといえる。

 

 

 

 

 比較的高価ではないコットンクロスで作られ、縫製もそれほど複雑ではないため、ウールのジャケットよりはるかに安い金額で手に入れることができる。モノによっては手洗いできるため、ドライクリーニング代も節約できる。しかも洗えば洗うほど、味が出てくるのだ。

 

 コットンのジャケットはエイジングが可能なところが、その大きな魅力なのだ。英国のブランド、ドレイクスのマイケル・ヒルはブロガーのデレク・ガイに、コットン・ジャケットのネガと考えられるものを愛しているといった。

 

「コットン・ジャケットは硬くて、しわが寄っており、色が薄くなります……。しかし、それは素晴らしいことです! カジュアルで、あなたと一緒に年をとっていくのです。まるでいいジーンズのようです」

 

 ファッション・サイト“パーマネント・スタイル”のサイモン・クロンプトンも同意している。「コットンはストレッチ性がないにもかかわらず、夏のジャケットとしては、効果的で現代的なオプションになり得ます」と。

 

「コットンは古くなり、エッジやその他の摩耗箇所で色が失われ、すぐに使い古されたように見えるため、それが“モダン”なオプションになる可能性があります。暗い色は明るい色よりも早くこの効果を発揮します。また、ガーメント・ダイされたジャケットは、多くの場合、初日から効果を持つように、特別に作られています」

 

 さて、今までのすべて読んで、あなたはあなたの人生に、コットン・ジャケットが必要であると、確信していないだろうか? それはマストアイテムなのだ! 一方、ライムグリーンのシルク製ディナージャケットは……、個人の裁量の問題である。

 

本国版(英語)の記事はこちらより