ART MEETS ARTISAN

アートと職人技の出会う場所

November 2020

オーデマ ピゲが協賛する世界有数のアートの祭典、アート・バーゼル2016を訪れた。英国の有名フォトグラファーが語る、オーデマ ピゲとアート、そしてジュウ渓谷の繋がりとは。

 

 

text kentaro matsuo

 

 

 

Dan Holdsworth/ダン・ホールズワース

1974年生まれ、イギリス出身。風景をデジタル処理した独自の作風を持つ。その作品は、テート・ブリテン、ポンピドゥ・センター、ゲーツコレクション、ヴィクトリア&アルバート博物館など、世界でも有数の美術館で展示されてきた。2013年よりオーデマ ピゲの広告ビジュアルを担当している。

 

 

 

 スイス屈指の時計ブランド、オーデマピゲは、アートに対する積極的なサポートでも知られている。2016年6月に行われた世界有数のアートの祭典、アート・バーゼル2016においても、重要スポンサーとしてブースを構え、多くのアーティストを協賛していた。

 

 なかでも注目は、オーデマ ピゲの広告ビジュアルを担当した英国のフォトグラファー、ダン・ホールズワース氏である。デジタルを駆使した作品は、テート・ブリテン、ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム、ポンピドゥ・センターなどの有名美術館に、多数所蔵されている。

 

「風景写真を撮り続けるのは、私が英国人だからでしょう。英国にはウィリアム・ターナーに代表される、風景画の長い歴史がある。私も、その伝統を受け継いでいるのかもしれません」

 

 

アート・バーゼルの注目作のひとつ。ベルリンを拠点に活動を続ける女性アーティスト、アリシア・クワデの作品。ミラーと石を組み合わせ、不思議な視覚効果を演出している。十字状に組み合わされた作品の周りを回ると、実物と鏡に映されたものの見分けがつかなくなる。

 

 

 氏は、オーデマ ピゲのビジュアル撮影のために、真冬のジュウ渓谷に3週間も滞在したという。

 

「ジュウ渓谷は、スイスでも最も自然が厳しいところです。冬には、気温がマイナス25度にもなるのです。しかし地質学的に大変興味深い場所でもある。私は、岩山が連なる風景を見て、『これを月明かりで撮ったら凄いぞ』と思いました」

 

 オーデマ ピゲの懐に入り、一緒に仕事をする中で、ブランドと土地との断ち難い絆が見えてきた。

 

「オーデマ ピゲとジュウ渓谷の繫がりは、とても強いと思います。素晴らしい時計のアイデアは、厳しい自然の中から生み出されてきたのです。働いている人々が自然の美を理解しています」

 

 そこには、自然とテクノロジー、そしてアートの出会いがあるという。

 

 

マッピングという最新テクノロジーを使って描かれたジュウ渓谷の風景。不思議な静謐さを湛えている。何百枚もの画像を合成して一枚の作品に仕上げられている。

 

 

「テクノロジーとアートの融合、ということにとても興味があります。今挑戦しているのは“マッピング”といわれる新しいデジタル技術です。何百枚も撮影したデータから、3Dのモデルを作って、作品を仕上げていくのです。今回のアート・バーゼルで発表した、オーデマ ピゲとの最新シリーズには、このテクニックが使われています」

 

 そうやって撮影されたジュウ渓谷の岩山たちは、不思議な質感を持ち、静謐な美しさに溢れている。

 

「オーデマ ピゲのファンならば、いつかジュウ渓谷を訪れるべきだと思います。ブランドの真髄が理解できるでしょう」

 

 ホールズワース氏は、再び山中へ出かけるそうだ。愛用のカメラと、ロイヤルオークを携えて。

 

 

アート・バーゼルに設えられたオーデマ ピゲのブース。デザインしたのは、チリ出身のアーティスト、セバスチャン・エラズリス。テーマとなったのは「水と氷」で、オーデマ ピゲの故郷、ジュウ渓谷とル・ブラッシュへのオマージュともなっている。

 

 

THE RAKE JAPAN EDITION issue12