AERO LEATHER: CRAFTING CLASSICS

エアロレザー:レザージャケットのクラシック

May 2020

スコットランドに拠点を置くエアロレザーは、何か新発明をしようとしているわけではない。

その代わりに、クラシックなスタイルを守り、比類なき耐久性と、ヴィンテージと同じような優美さを追求しているのだ。

 

by benedict browne 

 

 

 

 

 エアロレザーの共同創設者であるケン・カルダーに、なぜすべての人がレザージャケットを所有する必要があるのか​​と尋ねると、「これは時代を超越した、本当のクラシックだからだ」と即答した。

 

「レザージャケットはあらゆるタイプの天候に耐え、どんな時代のファッションと合わせても、カッコよくなるのだ」とも胸を張る。

 

 スコットランドのケイスネス出身のカルダーは、1975年に妻のリディアとともにエアロレザーを設立した。もともとはトレーディング・ビジネスを営んでおり、第二次大戦中のリアル・ミリタリー・ジャケットを扱っていた。しかし1983年に方針を変更し、さまざまな時代のアイコニックなレザージャケットの生産を開始。今では世界最高峰のレザーファクトリーのひとつとなった。

 

 

 

 カルダーのレザーへの愛情は、20代前半にロンドンにいたときに開花し、現在、ヴィンテージとなっているものを、ロンドンのサープラス・マーケットで売っていた。

 

「最初から、布よりも革を扱う方が、簡単だと思った」と彼はTHE RAKEに話した。

 

 1983年以来、エアロレザーは、時代を超えたスタイルの代名詞となってきた。20世紀における数々の名作のシルエットを再現し、ミリタリーウェアからバイカージャケットまで、この分野のリーダーとなっている。ハリウッドの大物たちに愛されるのも、頷けるというものだ。

 

 

 

 

 エアロレザーの特徴は、こだわりを貫くことだ。「1980年代初頭に、コノリー社の室内装飾用レザーを使うことから始めた」とカルダーは言う。

 

「彼らがロールス・ロイス、アストン マーティン、ベントレーにレザーを供給していたとき、メーカーからNGとされたレザーが、われわれのところに回ってきたのだと思う(笑)」

 

 しかし、エアロレザーは、コノリー以外にも手を広げた。

 

「1986年に、米国からホースハイド(馬革)」の輸入を開始した。非常に硬く、縫うのが難しいので、1960年代から人気がなくなり、当時われわれは、ホースハイドを使用している世界で唯一のレザージャケット・メーカーだった」

 

 今では時代がひと回りし、ホースハイドは、メーカーの間で最も人気のある素材となり、引っ張り凧となっている。皮革以外にも、カルダーは1968年以来、同じマンチェスターを拠点とするマーチャントと協業し、布帛のジャケット類もラインナップに加えている。

 

 エアロレザーのワークショップは、スコットランドのガラシールズにある。カルダーによれば、「私たちのスタッフは、1980年代にここで働き始めた、経験豊かな職人ばかりだ。ヘリオット・ワット・テキスタイル大学(1883年に設立された、英国における繊維関係の主要大学)の卒業生と、加えて新しく資格を与えられた職人たちだ」。

 

 職人のひとりは、会社の創設以来働き続け、およそ15,000のジャケットを製作してきたという。最初から最後まで、それぞれのジャケットは、手抜きなしで、すべてハンドメイドにて作られている。これは、最近ますます珍しくなっている、仕上がりへのこだわりだ。

 

「エアロレザーには、機械的な“生産ライン”というものがない」とカルダーは強調する。

 

 

 

 ジャケットのカッティングには、高いスキルと経験が必要だ。 ひとつのジャケットに最大4頭分の革が必要で、それぞれの革質が異なるため、厚さ、色、および特性に関して、同じようなものを見つけることが重要だ。

 

 重ね合わせたパターンを一緒にカットする方が簡単で、時間を節約できるが、エアロレザーはあえてそうすることを控えている。また、革の下側から厚さを削り、縫ったりボタン留めをしたりすることを簡単にするための“削ぐ”工程もしていない。すべてのパターンがカットされると、手動制御の工業用ミシンによって、ポリエステル混の丈夫な糸で縫製され、レザージャケットならではの耐久性を獲得する。

 

 一部のジャケットは、作るのにとても時間がかかる。特に、大量のスタッズ、ポケットなどのディテールを備えた“デイトナ・スタイル”は大変だ。

 

「デイトナは、1940年代と50年代のアメリカン・モーターサイクル・ジャケットの最高のデザインを融合したものだ」とカルダーは言う。

 

 デイトナは間違いなく、カウンター・カルチャーの感覚を反映したジャケットだ。クラシックなバイカーにとって、真のアウターウェア・アイコンである。

 

 

 

「過酷な扱いにも耐え、いい相棒となってくれるだろう。おそらく10年後には、少量のオイルが必要になるだろうが」とカルダーは言う。

 

 ジャケットは前述のホースハイド・レザーで作られており、非常に丈夫だ。フロント左側には、クラシックな小さなボタン留め式“Dポケット”があり、貴重品に簡単にアクセスできる。取り外し可能で、必要なときには締め上げられるストラップ・ベルト、そして左胸にはジッパー付きポケットがついている。ジッパーシステムは素晴らしく滑らかで、エアロレザーのジャケットは、首元に美しいロールを描く。

 

 2つ目の定番として挙げられるのは“ハッピーデイズ”ジャケットだ。これは、1974年から1984年の間に放送された、同名のアメリカンTVシリーズにちなんで名付けられた。シリーズの主役“フォンジー”は、A2フライトジャケットを着用し、ミリタリーアイテムを、ファッションに変えた。

 

 A2フライトジャケットは、1931年にA1の後継として米国陸軍航空隊によって導入され、1943年まで標準服だった。オリジナルと比較すると、ハッピーデイズにはフロント・パッチポケットがなく、代わりに滑らかなサイドポケットがあり、少し端正な雰囲気となっている。

 

 

 温かさを保つために袖口はニット製。ウエストバンドはホースハイド・レザーで作られ、バックパネルはひとつのピースで構成されている。肩のエポーレット、先の尖った襟、中央のジップが特徴で、生デニム・ジーンズとの相性は抜群だ。

 

 レザージャケットを着る秘訣はまったく簡単だ。複雑な計算は必要ない。シンプルに、着倒すたけだ。エアロレザーは、時間が経つにつれ、ますます愛着が湧く1着となるだろう。