Tuesday, October 15th, 2019

クラシコ・アジアに注目せよ!
The New Breed CLASSICO ASIA vol.01

メンズのクラシッククロージングが巨大なエネルギーの渦を巻いて、アジア全体を席巻中だ。
情熱にあふれる各国の超富裕層たちが本格メンズストアをここ数年で次々とオープンさせ、
メンズクラシックは20代、30代の若き成功者たちの間で異様な盛り上がりを見せている。
クラシコ・イタリアから30年。今、世界のメンズクラシックの中心地は、アジアにある。
text&photography yuko fujita

CICCIO JAPAN 上木規至氏(左)
1978年、福井県生まれ。サルトを志し、2003 年にナポリに渡る。帰国後、自身のブランド、チッチオを始動。香港のアーモリーとソウルのヴィッラ デル コレアでトランクショーを開催しているほか、店に訪れる多くのアジア人顧客をもつ。

SEVEN FOLD 加賀健二氏(中央)
1964年、大阪府生まれ。2011年、イタリアでセブンフォールド社を設立。今年の6月、フィレンツェにタイ・ユア・タイ フローレンスをオープン。今回紹介しているほとんどの店でセブンフォールド社のネクタイが扱われており、アジアでの人気は絶大。

THE RAKE JAPAN 藤田雄宏(右)
1975年、東京生まれ。99年に初めてナポリのスーツをオーダーしてその魅力に魅せられ、THE RAKE の創刊1年目はナポリに駐在。さまざまなテイストが交じったアジアのスタイルに注目し、東京をベースにイタリアとアジア各国を回っている。

熱気に満ちたクラシコ・アジア

藤田 今回、アジアの店をまとめて回って思ったのは、アジアにおいてクラシックスタイルがグルグル渦を巻いて巨大なムーブメントになっているってことでした。本来なら小さなマーケットであるはずのビスポークが、アジアではすごい人気で、実際にヨーロッパや日本のテーラーはこれでもかってくらいにアジアの店を回っているし、かなりの数のオーダーを取っているようです。ちなみに加賀さんのネクタイが、取材したほとんどの店で扱われていて改めてびっくりしました。
加賀 ここ数年でアジアのクラシックマーケットは飛躍的に大きくなりましたよね。数年前までゼロに近いマーケットだったのが、マーク・チョーさんが香港にアーモリーをオープン(2010年)させてクラシックの魅力を消費者に伝えることに成功したことで、第2のアーモリーを目指そうと、アジアの各国で次々とメンズクロージングショップが誕生しました。特にここ3年でその動きは活発化して、セブンフォールドのネクタイに関しては、この1年で飛躍的に扱い店が増えました。
上木 自分もアジアのパワーとか勢いを感じはじめたのは、ここ3年くらいです。アーモリーやソウルのヴィッラ デル コレアにトランクショーに通っている中で、クラシックにすごく興味を持っている若い人たちがここ3年で急激に増えたなっていうのをヒシヒシと感じます。
藤田 上木さんのお店に海外から直接オーダーしに訪れるアジアのお客さんも増えているんですか?
上木 すごく増えています。お客さんの約半分は海外の方で、そのうち8割くらいがアジアからのお客様です。仮縫いのためだけにわざわざ東京に来て、1泊2日で次の日には北京にお帰りになられるお客様もいらっしゃるくらいです。
藤田 その中で、日本と比べて何か違う点はあるのでしょうか?
上木 お客様の層は若いですよね。うちにいらしていただける日本人のお客様は40代から50代の方が多いんですけど、アジアのお客様はほとんどが20代から30代の若い人たちです。今の日本のお客様が20代、30代の頃に持っていたエネルギーをアジアの人たちは持っていて、自分をよく見せるためにお金を使うのを惜しまないですよね。アーモリーでオーダーしているお客様の中には毎回違う高級時計をされている方も少なくなく、若い富裕層の方たちのエネルギーというか勢いみたいなものを感じます。
加賀 アジアでは20代前半から30代前半の人たちがクラシックに対してすごく情熱的ですよね。確かにそこは日本と大きく違うところです。それともうひとつ、香港のエグゼクティブの方はビジネスで使えるイギリスのベーシックな生地を好む一方で、上海や北京の方はまた違ったものを好み、地域によって個性があります。ある意味それこそがアジアのクラシックの多様性であって、そこが今のクラシックシーンを面白くしているのだと思います。

テーラーはアジアを見ている

藤田 注目している店はありますか?
加賀 昨年末に北京にオープンしたサルトリアル ベイジンのふたりキエランさんとロックさんは、今までにないタイプで、僕個人は好きですね。すごく華があります。彼らはニューヨークやパリに行ってもそのまま勝負できるのではないでしょうか? 一方、ブリオ ベイジンのジョージ・ワンさんはクラシックの王道を突き詰めていて、同じ北京でもスタイルがまったく異なるのも面白いところです。テーラーでは香港のW.W.チャンが素晴らしいです。パトリック・チューさんはムードのあるすごくいい服を仕立てるし、好感度も高くて本当に素敵な方です。
藤田 もうひとつ面白いのは、どの店も本当の富裕層が情熱最優先で始めているので、売るための服を扱わないんですよね。自分たちが着たい服、見せたい世界観をカッコよく表現できる服を扱っている。他がやっていようが、やっていまいが、ウチはウチというスタンスなんですよね。
加賀 ブライスランズみたいな店が出てきたのも注目に値します。原宿に続いて香港にもお店をオープンしましたが、クラシックとヴィンテージをミックスした彼ら独特のスタイルが大金融都市の香港でも受け入れられたら、アジアのクラシックマーケットが大きく変わっていくかもし
れません。
上木 自分はブリオ ベイジンとサルトリアル ベイジンがどんな店なのか気になっています。どちらの人もアジアのシーンの中で、すごく個性のある方たちですし。
加賀 アタイアハウスもサロンっぽくて面白いです。買える人が買ってくれればいいみたいな雰囲気があって、何か突き抜けている感があるんです。
上木 アタイアハウスは最上階にすごく立派なバーが併設されていて、香港の富裕層の突き抜けたパワーを感じました。
藤田 実際、ヨーロッパから見てもアジアのマーケットは無視できなくなっています。
加賀 圧倒的にアジアですよね。テーラーに限っては、明らかに一番重要なマーケットになっています。海外のテーラーたちはニューヨークのことはもうそんなに考えていなくて、圧倒的にアジアを見ています。これから日本人がアジアで作ることも増えるのではないでしょうか。
藤田 アンダーソン&シェパードとかは日本では作れないですから、アタイアハウスに行って作る人も出てくるでしょうね。
加賀 現状では、日本を除けば一番大きなマーケットは香港ですけど、中国がすごく力をつけてきている。将来的にはメインチャイナが香港を抜く可能性だって大いにあります。
藤田 今までは有名サルトリアを招聘していただけだった店も、シーズン単位で力をつけてきて、各々が自分の店のスタイルを打ち出し始めています。スーツのスタイルもそうだし、スタイリングもそうで、シンガポールのコロニークロージングはクラシックにストリートをミックスしていたりする。そういうのってすごく面白いですよね。
加賀 シンガポールからもいろいろ出てきていますし、最近はモード一辺倒だったバンコクにも、クラシックのムーブメントが起き始めています。
上木 アジアのエネルギーの恩恵に甘えて注文を取っていたら、アジアの職人が出てきたときに、いつか追い抜かれてしまうと思うんです。より気を引き締めていきたいと思います。

本記事は2017年11月24日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 19