April 2015

インドのマハラジャ ーその知られざるライフスタイルー
in the land of KINGS

MAHARAJA OF JODHPUR
ヴィンテージカーに魅せられて

建物の多くが青く塗られているため、別名ブルーシティと呼ばれるジョードプル。
この美しい街の宮殿ホテルに、タイムスリップしたかのような光景が広がっていた。
photography takashi kobayashi
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ヴィンテージカーに乗ることができるホテル1927年に建てられた宮殿は、今もマハラジャ兄弟の家族が暮らしているが、その一部が「ジ・アジット・バワン」というリゾートホテルになっている。さらに宿泊者にはヴィンテージカーに乗れるサービスも。ドライバーが同行し、魅惑的なジョドプールの街の爽快なドライブを楽しむことができる。

ヴィンテージを愛するマハラジャ ジョードプルスタイルと呼ばれる、乗馬のために生まれたパンツスタイルで現れたサルヤヴェール・シング・ラートール氏。ガレージに並べられたヴィンテージカーについて早速たずねてみた。

「アメリカのヴィンテージカーを中心に25台ほど所有しています。その他、ランドクルーザー、メルセデス・ベンツなどのモダンカー、それからアメリカ軍のジープを含め、全部で50台近くでしょうか」

 父親が宮殿をホテルとして経営し始めたことから、高校卒業後はマネジメントを学んだラートール氏。ヴィンテージカーは、そのころから集め始めたものだ。

「子供のころ、家族とドライブした思い出が忘れられないんです。その後、政府にすべて奪われてしまった。当時は200台以上あったのですが」

 6歳くらいのことだが、家が所有していたクルマを鮮明に覚えていて、取り戻したいという強い気持ちがあるという。

「今はキャデラックを探しています。でも手に入れるのは難しい。集めたコレクションで、ミュージアムをつくりたいんです。他の宮殿にスペースがあるので、あと1年以内には実現できそうです」

 それほどのモチベーションは、いったいどこからくるのだろうか。

「これから生まれてくる子供たちの世代に、ヴィンテージの良さを伝えていきたいのです。もっとも、うちの息子はモダンカーが大好きなのですが(笑)」

What’s a Maharaja? マハラジャとは

 19世紀末、イギリス統治時代のインドには560あまりの藩王国が存在していた。イギリスはこの植民地を管理するにあたり、「マハラジャ」にそれぞれの国を治めさせた。「マハ」=偉大な、「ラジャ」=王、という意味が示す通り、彼らは広大な領土と圧倒的な権力、莫大な資産を所有し栄華を極めた。そして誰もが憧れるような、絵に描いたような生活を送っていたのだ。

 その後インドは、1947年にイギリスから独立。さらに71年の憲法改正により称号が廃止となったため、事実上、マハラジャはインドに一人もいないことになった。マハラジャたちの所有する領土や宮殿、所有物のほとんどは、中央政府に奪われた。そのため、中には没落していった王族もいるという。

 しかし今もマハラジャとその子孫たちは確かにインドに存在する。王侯の地位がなくなってもなお、その力は絶大だ。彼らの多くは、政治に携わったり、メンテナンスの目的を兼ねて、古くなった宮殿をホテルや博物館としてオープンするなどしている。彼らのライフスタイルとはいったいどんなものだろうか。6人のマハラジャのライフスタイルを探りに、インドへ向かった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 02

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