November 2022

LIFE WITH MARS

ジャンルを飛び越す才能
俳優:ジェームズ・マースデン

人気スーパーヒーローシリーズから、評論家に大好評の風刺モノ、ディズニーミュージカル、アクションアドベンチャー、ディストピアSF、ラブコメディに至るまで、ジェームズ・マースデンは多彩な役柄でスクリーンを席巻し続けている。
text tom chamberlin
photography kurt iswarienko
stylist ilaria urbinati

James Marsden / ジェームズ・マースデン1973年アメリカ・オクラホマ州生まれ。俳優になるためオクラホマ州立大学を中退しLAに移住。テレビを中心に活動をスタート。ドラマ『アリーmy Love』の若手弁護士役や、2000年の映画『X-メン』でのサイクロップス役で注目される。高い歌唱力を生かし、2007年に映画『ヘアスプレー』、『魔法にかけられて』に出演。二枚目でありながらコメディ、スリラー、アクションなど、幅広い役柄をこなす才能を持つ。

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 私はジェームズ・マースデンに対して、個人的に強い好感を抱いていた。あるハリウッドの大物記者はこう語っている。「文字通り、ショウビズ界一のナイスガイだよ。純粋に取材相手として、彼のいいエネルギーに触れていたいと思うね」。こんな最高の評判を聞くだけで、誰もが彼のことを素敵な人だと思うに違いない。

 私のマースデンに対する個人的な感情は、多くの親たちが抱く悩みに由来する。小さな子を持つ親は、子どもの注意を10分以上引きつけておくことに苦労している。本当に大変なのだ。映画1本観せる間、子どもをじっと座らせておこうなどという目論見は絶対に成功しない。少なくとも、ロックダウンの初期まではそう思っていた。そんな矢先、うちは家族で『ソニック・ザ・ムービー』(2020年)を観ることにした。すると息子たちは1時間半以上も夢中で釘づけになっていた。妻も私も信じられない思いで顔を見合わせた。

 ベン・シュワルツがソニックの声を演じ、ジェームズ・マースデンが主役を張ったこの映画を、うちの家族はその後100回は観た。でも何度繰り返し観ても嫌にならなかった。実にしっかりした構成の楽しいファミリームービーで、音楽も素晴らしく、何よりジム・キャリーが口ひげの悪役を演じているのだから、好きにならないわけがない。まさかこんなに楽しめる映画だったとは。マースデンもそう思ったらしい。

「まったく同感だよ。もちろん面白くて素敵な映画になるとは思っていたけど、やっぱり驚いた。プレミア上映で僕の左隣にティカ(・サンプター。マースデンの妻のマディー役)、右隣にベン、真後ろにジムが座っていたんだけど、上映が終わると4人が一斉に顔を見合わせて『めちゃいいね』って言ったんだ。単に“売るために作った”映画は大嫌い。僕らは老若男女すべての人に刺さる映画にしたいと思っていた。でもこの映画は生身の人間のアクションとCGアニメが組み合わさっていて、しかも主役が宇宙から来た青いハリネズミとやりとりする話。そりゃあ当然、誰もが子ども向け作品だと思うよね」

 ソニック映画の大ファンである一家の一員としてマースデンと話したいところだが、インタビューの目的はそんなことではない。その続編、『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』が間もなく公開されるのだ。前作のキャストは続投し、さらにナックルズ役(声)にイドリス・エルバを起用している。

「1作目が大当たりすると、その次は自由に作れるようになる、そういうものだよ(笑)。制約がなくなって、1本目でやりたかったこと、予算がなくてできなかったことが全部できるようになるんだ」

 マースデンの最新作についてだけ語ることは、続編を先に観てしまうようなものだ。彼がこれまでさまざまなジャンルに取り組み、そのちょっと昔の二枚目風のルックスと多彩な才能で多くの人を虜にしてきた経歴を見逃すわけにはいかない。

本記事は2022年7月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 47

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