April 2018

Gottcha

最後のドン、ジョン・ゴッティ

大衆のヒーロー、そして極悪非道なマフィア。ジョン・ゴッティにはさまざまな顔があった。
とびきりの洒落者としても知られ、仕立てのいいスーツに、手描きのフローラル・シルクタイを合わせていた。
しかし、暴力的で、傲岸不遜なアウトローは、最終的にはマフィアそのものをつぶしてしまったのだ。
text james medd

グレイフランネルのダブルスーツで決めた完璧な装いで、恐喝罪の裁判に臨む“ダッパー・ドン”ことジョン・ゴッティ(1986年)

 アメリカで近々封切られる話題作に、ジョン・トラボルタ主演の映画『Gotti』がある。この作品の主人公は“ラスト・ドン”と呼ばれたジョン・ゴッティである。彼は1986年から92年までガンビーノ一家のボスとして、アメリカ最強のマフィア組織を牛耳っていた。ヤミ金、賭博、恐喝、強奪などの稼業から、年間数億ドルもの利益を得ていた。

 アメリカンドリームのダークサイドにいながら、ゴッティは国民的な人気を誇るアウトローでもあった。ニューヨークが犯罪のメッカだった頃、ジュリアーニ市長がマフィアの掃討作戦を行う前までは、ゴッティは大衆のヒーローだった。

 彼の生き様は、以前からさまざまな作品で描かれてきた。『ゴッドファーザーPART III』(1990年)に出てくるジョーイ・ザザは彼がモデルといわれている。ヒップホップ・スターは彼に憧れ、今号のP38に登場するノトーリアス・B.I.G.やドクター・ドレー、ジェイ・Z、50セントがゴッティの名を引き合いに出していた。

 彼は5年にわたってニューヨークに君臨したが、マフィアのボスという存在を過去の遺物にしたのも、また彼だった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 19
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