悪役の天才：俳優クリストフ・ヴァルツ

『007 スペクター』（2015年）。

「私はソーシャルメディアには参加しません。近年、その破壊力は顕著になっています。参加者を楽しませ、善意のネットワークを構築して人々を結びつけるソーシャルメディアが無害であると思っているのは、鈍感な人だけです。今までにない破壊的パワーを有する手段のひとつが、ソーシャルメディアなのです」

　私たちはまだ真の恐ろしさに気づいていないということだろうか？

「その通り。でも既に手遅れです。腹を空かせた獰猛な獣は、もう放たれてしまった。もはや、どんなものや人でも阻止することはできないのです」

　彼が好むカール・グスタフ・ユングの仮説では、ビーチにある1000個の小石を拾ってきて計算すれば、1個あたりの平均的な重さを知ることができるが、その重さとまったく同じ重さの石を見つけることは不可能であると説いている。つまりそれは、批評家の反応、興行成績、個人的意見、BAFTA（英国映画テレビ芸術アカデミー）などのアカデミー、『イングロリアス・バスターズ』に授与されたゴールデングローブ賞といったものの大部分が、俳優クリストフ・ヴァルツを唯一無二の存在として評価するものであるということだろうか？