July 2020
Exclusive Interview: CHRISTOPH WALTZ
LORD OF THE DANCE
悪役の天才:俳優クリストフ・ヴァルツ

『アリータ:バトル・エンジェル』(2019年)。
ソーシャルメディアをやらない理由 ヴァルツと話していて不思議に思ったことがある。かつての彼は、劇演出に手厳しく、愚行を容認することをひどく嫌っていた。だが現在の彼は、相手を和ませる愛想の良さに満ち溢れていて、とても謙虚である。インタビューの終わりには、彼の“洞察力”に対して感謝を述べた私たちに対し、彼は“洞察力”の代わりに“戯言の襲来”という言葉を使ったほどだ。彼は、前述の通り素晴らしい教育を受けているにもかかわらず、方法論について大言壮語を吐く俳優ではない。
「人は遅かれ早かれ、学校で習ったことから解放されるのです。私は40年以上もこの仕事をしています。もし私がいまだに当時習った知識にこだわり続けていたとしたら、それは深刻な問題です。ちなみに私の母方の祖父は心理学者、前妻は心理療法士でしたが、ふたりとも特定の派には属さず、フロイト派でも、ユング派でも、ライヒ派でも、アドラー派でもありませんでした。人は皆それぞれが起源であるべきです。何かを学び、知識を身につけ、理解し、キャリアをスタートさせ、ひとりひとりが独立した存在となるのです。おそらく心理学より、芸術においては特にそういえると思います」
彼がかつて、「演技とは、公とプライベートの差がなくなることです」と言っていたのを思い出し、それについて尋ねると、「私たちは公とプライベートの境界線が曖昧な時代に生きています」と返ってきた。それは、ソーシャルメディアのことを言っているのだろうか?
本記事は2020年5月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 34