From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

フランス総領事のおしゃれ術
シャルランリ・ブロソーさん

Sunday, April 10th, 2016

シャルランリ・ブロソーさん

在京都フランス総領事館 総領事、関西日仏学館 館長

text kentaro matsuo photography isao hishinuma

_MG_1274

フランス総領事と聞くと、なんだかとっても偉い人のような気がしますよね。その通り。今回ご登場頂いたシャルランリ・ブロソーさんは、とても偉い人です。どのくらい偉いかと言うと、大相撲の千秋楽、優勝力士にフランス大統領杯を渡すのが、東日本ではフランス大使、そして西日本ではブロソーさんの仕事なのです(すみません、よくわかりませんか?)

そのスタイルにも、ハイソサエティな香りが漂っています。

 

「父と母はともにファッションの仕事をしていました。小さい頃、デッサンをする父の手から、新しいデザインが次々と生み出されるのを、驚きを持って見つめていました。父はサヴィルロウで服を誂えるのが好きで、私もよくロンドンへ連れて行かれて、ハロッズやセルフリッジスなどで、洋服を買ってもらっていました。パリでは、オールド・イングランドが多かった」

実は彼の父上は、ジャン・シャルル・ブロソーといい、高名なファッション・デザイナーなのです。もともと帽子のデザイナーでしたが、80年代に発売した香水が大ヒットとなり、今でも日本を含む、世界中で人気を博していますから、ご存知の方も多いと思います。

 

「日本に興味を持ったきっかけですか? 私が4、5歳の頃、パリのヴィクトワール広場に父がブティックをオープンしました。するとほぼ同時に、隣に日本人がショップを開いたのです。店の名前は、ジャングルジャップといいました。そうそれは、高田賢三さんがパリに開いた第一号店だったのです。当時はパリに住んでいる日本人はまだ少なくて、ケンゾーさん、そしてアシスタントのイリエさん(入江末男さんのことですね)は、まるで宇宙人のように見えました」

 

その後、フランスでの兵役と大学院卒業後、日本の立教大学への留学を経て、フランス外務省の外交官となり、日本、ニューヨーク、マレーシアなどを歴任します。在京都総領事となったのは、2013年からです。

_MG_1283

 スーツは、ペコラ銀座。H.レッサー&サンズのヴィンテージ生地を使ったもの。実はこの撮影も、ペコラ銀座の店内でしています。

「佐藤さんとは、もう20年以上の付き合いです。私の妻は日本人なのですが、当時パリにいた佐藤さんと友人だったのです」

 

ペコラでの初めてのオーダーは、モーニングコート、その次はタキシードでした。

「仕事柄、モーニングとか、タキシードを着る機会が多いのです。モーニングは、フランスにいる時以上に着ますね。例えば、春日大社や上賀茂神社の大祭、皇居での園遊会など。タキシードは総領事館でのガラディナーや、日仏商工会議所の集まりなどで。モーニングは年に4、5回。タキシードは年10回以上は着る機会があると思います」

 

スーツ・スタイルへのこだわりも、相当なものです。

「まずスーツは、ほとんどダブルしか着ません。よく体にフィットしたものが好みです。そしてサイドポケットは、必ずチェンジポケット付きのスラント(斜め)で、パンツはベルトレスのサイドアジャスター仕様です。ジャケット裏に小さなチケットポケットをつけるのもお決まりですね。その中には、チケットではなく、祇園の八坂神社のお守りを入れています(笑)」

 

といいつつ、写真のスーツは、スラントポケットではありませんが、これはペコラ佐藤の勘違いミスなのです。やれやれ。

しかし、私は以前、ダブルでオーダーしたジャケットが、シングルで上がって来たことがあるので、ポケットが斜めかどうかなど、ここではたいしたことではないのかもしれません。ま、イタリアだからね。

 

シャツは、以前赴任していたクアラルンプールのオーダーシャツ屋“WARDROBE”というシャツ店でオーダーしたもの。

「生地は素晴らしいのに、値段は信じられないほど安い」とか。私も今度行ってみよう。

 

タイはエルメス。さすがフランス総領事。

「このタイは、4色の色を組み合わせて出来ているのです。旅行するときなど、毎日違う色で遊べていいのです」

_MG_1293

時計は、リップ。パリのオペラ座近くのアンティーク店で買いました。同じ店で3つほど購っており、アンティーク時計は大好きだそうです。カフスも昔パリで買ったもの。

_MG_1313

 

シューズは、パリのビスポーク・シューメーカー、ドネガン。

「パリの外務省から、一番近い靴屋がドネガンなんです」と。

 

「私の場合、父の影響で、小さい頃からファッションに囲まれて育ってきました。そこで学んだことは、トレンドより、クオリティや伝統のほうが大切だということです」

 

フランスの生粋のディプロマットの着こなし、流石です。