From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

新保哲也さん

Wednesday, February 10th, 2016

新保哲也さん

 

株式会社 新保哲也アトリエ 代表取締役社長、一級建築士

interview kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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  私がピッティに行って、いつも残念に思うのは、日本人は色の使い方が下手だということです(私も含めて)。サイズ感やディテールへのこだわりは世界一なのに、色が地味なので、ちっとも目立たないのです。しかし世の中に、必ず例外はあるもの。今回ご登場頂いた新保哲也さんは、ご覧のように、日本人離れした色彩感覚の持ち主です。

 

「今日は抑えめにしました」という言葉が、どうしても信じられないのは、私だけではないでしょう。色と柄の洪水のような着こなしは、まるで“歩くアート”です。

 

実は新保さんは、ワッフル・ケーキの店 R.L(エール・エル)のオーナーなのです。1991年、武庫之荘に第一号店をオープンして以来、順調に売上げを伸ばし、今では全国に74店舗を展開する一大チェーンとなりました。ワッフルという食材に特化しつつ、その中で、たくさんのバリエーションを楽しめるところが、人気の秘密です。

しかし、その開業の動機は、一般のケーキ店オーナーとは、大分違っていました。

 

「もともと建築家でしたから、美術品や骨董など、美しいものが好きでした。ある日、大好きだったルネ・ラリックの花瓶を、無理をして手に入れました。そして、この花瓶に似合う店を作ろう、と思い立ったのです。最初はガラス繫がりで、照明器具店をやろうと思いましたが、どうも儲かりそうもない。次にバーをやろうかと思いましたが、私はタバコが嫌いだった(笑)。悩んだ末に、留学先のヨーロッパでよく食べていた、ワッフルの店を思いついたのです」

 

というわけで、一本の花瓶のためだけに、ワッフル店を始められたそうなのです。R.Lとは、ルネ・ラリックのことなのですね。それにしても、こんな不思議な理由で事業をスタートさせ、それが大成功してしまったのですから、神様に愛されている人って、本当にいるのですね。

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スーツはスコットランドのタータンメーカー、ロキャロン社のシャギーチェック地を使い、大阪のテーラー、ラクア&シーにて仕立てたもの。

「スーツ類は、すべて自分で選んだ生地で仕立てています。このようなヴィンテージ生地を使ったものが多いですね」

 

シャツもラクア&シー。ネクタイはロンドンのドゥシャンプ。

 

フエルト帽はボルサリーノのウサギ製。眼鏡はアメリカのタート。ストールはイタリア、フィレンツェのカンティーニ。各アイテムが、いちいち「濃い」ですね。

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 時計は、パテック フィリップのRef.2526、通称トロピカルと言われているモデルです。時計道楽の終着点のひとつで、私も喉から手が出るほど欲しい時計。これを入手するためだったら、5年は寿命が縮んでもいいと思っているほどです(あ、その時点で、即死かもですね)。

特にこのWG製は30個しか製作されず、現存するものは10本くらいで、さらにミント・コンディションとなると、その希少性は計り知れないとのことでした。

 

シューズはベルルッティ。アンディ・ウォーホルのために作られた、有名な“アンディ”です。

「靴は、ベルルッティしか履きません」

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そしてバックに写っている愛車は、シトロエンDS。ギャビン・ライアルの傑作ミステリー、『深夜プラス1』にも出てくる、世紀の名車です。これまたミント・コンディション。その後部座席に座らせて頂きましたが、まるで風船の上に乗っているような、なんとも言えない心地よさでした。

 

一見破天荒に見えるコーディネイトですが、実は考え抜かれたものなのです。

「前の晩に次の日のコーディネイトを考えるのですが、どうしてもうまくキマらず、仕方がないので、タイとチーフを何本かカバンに入れておき、途中で替えることもあります。1年を通じて、ほぼ毎日違うスーツを着ていますが、『うまくいかなかったから』という理由で、同じモノを2日続けて着ることもあります。リベンジですね(笑)」

 

「社員全員で、毎年ファッション・コンテストをしています。大賞に選ばれると、豪華な賞品がもらえるんですよ」

こんな会社、アパレルでも聞いたことがありません。

 

「夢は世界一お洒落になること」と衒いなく言い放つ新保さんは、すべてに対して度を超えたこだわりをお持ちです。ファッションも、ビジネスも、建築も、クルマも、すべては新保哲也というアートの一環なのです。