From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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平塚雄三さん

平塚雄三さん

 弁護士

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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 さまざまなご職業の方が登場するのが、このブログの特徴でもありますが、今回は弁護士先生です。都内の法律事務所に所属なさっている、平塚雄三さんです。

弁護士というと、一般の方はあまり馴染みがなく、ちょっとカタそうで、近寄り難いイメージですよね?

「裁判長、異議あり!」みたいな。

しかし今回、平塚さんにお会いして、その印象が大分変わりました。

 

「古着が好きで、よく高円寺あたりをうろついています。もともと阿佐ヶ谷の出身で、大学が高田馬場でしたので、中央線沿線が落ち着くのです」

ウチのフジタに、似ていますね。

 

「予備自衛官として登録をしています。普段は弁護士をしていますが、危急の際には、戦場で戦います。格闘訓練や、実弾を使った射撃訓練も受けていますよ」

えええ、マジですか?

 

「趣味はトライアスロンです。10年前から始めて、一昨年からは、ホノルルで行われる大きな大会にも出場しています。バイク40km、スイム1.5km、ラン10kmと、なかなかタフですね」

すごい。私なら、途中で死んでいます・・

 

まぁ、ぱっと見、ここまでお洒落な弁護士先生がいるとは驚きでした。それには理由があって、実は平塚さんのファッションの師匠は、メンズ・ファッション界の大ボス、赤峰幸生さんなのです。知り合ってから、もう10年以上経つそうです。

 

「赤峰先生には、お洒落は“基本のき”が大切で、そこをしっかり学ぶことが肝要なのだ、と教わりました。それと男は外見だけ繕ってもだめで、中身が伴わないとダメだとも諭されました」

はい、私も同じことを言われています・・

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 スーツは、アカミネ ロイヤルラインで仕立てたもの。テーマは“裁判で勝てるスーツ”です。

「モヘヤ製で、折り目正しく見えるところがいいですね。『これなら、どこへ出ても恥ずかしくない』と言われて作ったものです。もう10年も着込んでいますが、ようやく体に馴染んできたように思えます」

やはり弁護士先生は、きちんとした格好をなさっていますね。

 

「クールビズの影響でしょうか、裁判所でも、カジュアルな格好の方を見受けることがあります。ジャケットにノータイ・・中にはスニーカーの方もいます。しかし、私は法廷では必ずスーツを着ます。職業としての歴史や、顧客からお預かりしている事件の重みに相応しくない格好はできないのです」

 

シャツも、アカミネ ロイヤルラインのもの。

「先達から教わった所作として、私は打ち合わせの際には、白いシャツしか着ません。これは真っさらな気持ちで、お客様の話を聞くという姿勢を表しているのです。われわれが扱っているのは、国内の身近な案件が多い。例えば、離婚や兄弟間の確執、お金の貸し借りのトラブルなどです。いわば人間社会の裏側を見る仕事なわけで、相手の方の本当の気持ちを聞き出すということが、とても大切なのです」

 

タイは、やはり赤峰さんから薦められたリベラーノ。

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 時計は父親から譲り受けた、グランドセイコー。レザー・ストラップは、友人が作ったものに交換してあります。

シューズはアレン・エドモンズのコードバン製。

 

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愛用の万年筆は、モンブラン。かつて日立造船の社長をなさっていたおじいさまの形見で“A LIFE DEVOTING TO SHIP BUILDING”(造船に捧げた生涯)とのメッセージが刻まれています。こういうものは、お金では買えませんね。

 

実は、平塚さんのひいおじいさまは、元・東京都知事、東龍太郎氏です。

「ダンディな人でした。いつも自宅の池の前で、シガーを燻らしていたのを覚えています。その匂いを嗅いだのが、大人の世界の入り口だったような気がします」

いまではシガーは、趣味のひとつだとか。

「私のスタイルの原点は、曽祖父にありますね」

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 なぜ、弁護士になったのですか? との問いには、

「弁護士が主人公のドラマを見て、かっこいいなぁと思ったのがきっかけです(笑)。私も正義の味方になりたい、と。しかし実際に弁護士になってわかったのは、弁護士は正義の味方ではなく“われわれを信頼してくれる人の味方”でなければならない、ということです。法廷では、何よりも勝たなければならない。日々是戦いです」

 

なるほど、この先生なら、何かあったとき、とても頼りになりそうです。できれば、顧客ではなく、友人としてお付き合いさせて頂きたいですが・・

 

牧野孝一郎さん

牧野孝一郎さん

シャロン チーフ

text kentaro matsuo  photography susumu tsunoda

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最近、私やらフジタやらが入り浸っている南青山のセレクトショップ、シャロンの牧野孝一郎さんです。シャロンはサルトリア ソリートやシャマットなど超高級ブランドを扱っており、その独自の品揃えが高い人気を博しています。

1992年生まれ、弱冠25歳の牧野さんですが、紳士服業界におけるキャリアは7年に及びます。ここシャロンでも、チーフとしてフロアを任されているのです。

「私は大阪出身なのですが、シャロンのホームページを見て、そのラインナップに魅せられて、どうしてもここへ入りたいと思いました。そこで、面接を兼ねて上京したのです。実際にお店を訪ねたのは、この時が初めてでした」

ホームページだけで入社を決めてしまうところが、いかにも今の若者って感じです。

 

「弊社に置いてあるのは、皆何十万円もするような品ばかり。最初は怖くて商品に触ることすらできませんでした。初めてシャロンで売られている商品を自分で買って、袖を通した時には、あまりの着心地のよさ、そして肌触りのよさにびっくりしました。あの時の感動は忘れられません」

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ジャケットは、イタリア、プーリアのシャマット。一見クラシックなのに、よく見ると、ものすごく凝ったデザインやディテールを持っていて、お洒落上級者の間で話題のブランドです。

「盛り上がった肩山、丸い独特のポケット、深く切り込まれたベントなど、面白いディテールがいっぱいです。それでいて、着心地はとてもいいのです」

 

タイはナポリのE.G.カペッリ。

「ナポリのショップへ行った時に買いました。9cm幅の太めのツイルで、ヴィンテージの生地を使ったものです」

 

シャツはナポリのモンテサーロのス・ミズーラ。

パンツもナポリのレ・スパーデ。

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時計とチーフはしません。

「本当は自分の生まれ年である、92年のヴィンテージ時計が欲しいのですが・・」

シューズは、日本人靴職人、久内淳史氏が仕立てたイル・クアドリフォーリオ。

「私は扁平足で、甲が薄いのですが、そんな自分の足でも、うまく立体感を持った美しい靴を作ってくれました。味のある革がいいでしょう?」

使われている素材は、ホーウィン社のホースフロント。

 

もちろんすべて、シャロンにて扱っているアイテムです。

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コーディネイトで気をつけている点は、服の本来持っている力を引き出すこと。

「私は背が低く、肩幅が狭いので、それをカバーしてくれる洋服を選びます。背が低い人はコンパクトな服を着ると、ますます小さく見えてしまうので、ある程度肩幅があるものを選んだほうがいいのです」

背が低い人へのファッション・アドバイスには自信があるそうですから、お悩みの方は彼に相談するといいと思います。

 

「手縫いの文化を後世に伝えていきたいと思っています。どんどん職人さんがいなくなってしまっているのです。今のセレクトショップを担っているのは、4〜50歳代の人が多いですよね。20年後には、私もトップといわれるような人になっていたいです」

 

彼のような若者が、日本の、そして世界のファッションを背負っていくのだなぁと思いました。

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Sharon シャロン

東京都港区南青山6丁目6−21 グロービル青山1F 〜4F
Tel. 03-6418-5131
営業時間:12:00am〜20:00pm(不定休)
URL: http://sharon-shop.jp/

 

 

 

林博文さん

林博文さん

某英国ラグジュアリーブランド 銀座本店ジェネラルマネージャー

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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銀座界隈のブランド好きの間では、知らぬ者はいないといわれる有名ショップマネージャー、林博文さんのご登場です。業界では、販売の天才と言われており、若い頃から彼が店長になると、あっという間に売上げが伸びることで知られていました。ご出身は、大分県佐伯市というところ。

 

「もともとは九州の地元企業で働いていました。コンビナートを擁する大会社で、作業着にヘルメットを被っていたこともありました(笑)。でも、どうしてもファッションでメシを食うという夢を捨てられなくて・・。上京してファッションの学校へ通い始めたのです。そんな時、中野の丸井で販売補助のバイトをしました。そうしたら、なぜかメチャクチャ売れてしまって・・・販売って、面白いなぁと思いました」

 

DC全盛の時代、入社したブランドでは、すぐに売上げ上位となり、3年目にして店長に抜擢されました。そうしたら、その店が売上げ全国1位となりました。その後に携わったブランドでも、成績はずっと右肩上がり。

 

「どうしたら、そんなに売れるのですか? コツは何ですか?」との質問には、腕を組んでしばらく考えた後、

「単品を押し付けるということはしません。必ずトータルなスタイルをご提案します」

「ニーズと提案は違います。例えばあるアイテムを買いに来た人に、まったく別の、意外性のある商品をおすすめしたりします」

「お客様がまわりから、どう評価されるかということを考えています。その人が自分でも気付いていない自分を、見せてあげたいと思うのです」

 などなど。

 林さんと私のご縁は古く、もう知り合ってから、15年以上になります。基本的にはラグジュアリーブランドのプレタポルテをご担当なさっていますが、林さんの得意技は、それぞれの顧客に合わせた、きめ細やかなお直し&オーダーメイドで、私も昔はずいぶんと林さんに洋服を作ってもらったものです。そしてそのうちの何着かは、今でも毎週のように愛用しています。

作ってもらった当時は、「ちょっと細すぎるのではないかな」と思ったりもしましたが、時が経つにつれそれが、「ちょっと太すぎるのではないかな」に変わり、いままた「ちょうどいい」と思えています。そのへんが林マジックで、多くの顧客を虜にするワザなのかもしれません。

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スリーピースは、ドーメルのトニックで仕立てたもの。一見するとブリティッシュ・スタイルですが、林流の遊び心が随所に散りばめられています。

 

「ターンナップ・カフで、シングルのピークトラペルですが、ウエストコートはダブル。パンツのポケットは、珍しいクロスポケットとしました。パンツの股上を深く、ウエストコートを短くして、脚が長く見えるよう工夫してあります。センターベントで後裾にゆとりを持たせ、後ろ姿がエレガントになるよう仕立てました」

なるほど、なかなかここまでこだわりを持てる人はいません。

 

自分で結んだボウタイと、ラウンドカラーでやはりターンアップ・カフのシャツもポイントです。

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時計は、ジャガー・ルクルトのレベルソ・デュオ。

リングはアンティークに自らのイニシャル“H”を彫っています。

 

シューズは英国製のサイドゴア・ブーツ。流麗なラインがキレイです。

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「販売の極意とは何ですか?」との問いには、これまたしばらく考えた後、

 

「例えば、もし超有名ブランドのデザイナー本人が店に立っていたとして、彼が『君にはこれが似合う』と言ったら、お客様は100%買いますよね。私もそんな存在になりたいのです。『お前がすすめるなら、買うよ』と言われるような、存在になることが極意でしょうか?」

 

なるほど、これは深く、また難しい道でありますね。

「販売一筋で30年間やってきて思うのは、販売には正解がない、ということです。それぞれの販売員がそれぞれのやり方を持っており、どれが正しいということはありません。しかし、ひとつ言えることは・・販売とナンパは違うということです(笑)。よく口が立つから、オンナを引っ掛けるのもウマいでしょうと言われるのですが、お客様に声をかけることは出来ても、女性に声をかけることなんて、とても出来ません(笑)」

 

林さんは根っから、ファッションというものが大好きな人です。そこには、「売りつけてやろう」という邪念がありません。そういった真摯な心が、買う人の心に響くのではと思いました。

 

 

田野浩志さん

田野浩志さん

guji代表取締役

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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 2006年に京都にてオープンした第1号店を皮切りに、現在では全国に9店を構えるguji/ring(グジ/リング)の代表、田野浩志さんのご登場です。いま急成長しているショップの社長ということで、もっとギラギラした感じの方を想像していましたが、昨年初めてお会いして、そのイメージは180度変わりました。とても温和でユーモア溢れるキャラクターなのです。

 

「関西の出身なので、どこか“三方よし”(近江商人の心得を説いたもの)を目指しているのかもしれません。つまり“売り手よし、買い手よし、世間よし”、すべてが丸く収まるような商売です。以前は『成功していい生活をしたい』とか『ライバルを蹴落としてやろう』と思っていた時期もありましたが、今ではメンズ・ファッション業界全体を盛り上げていきたいと思っています」

 

田野さんはもともと、シップスのご出身です。大学生時代より京都のシップスにてバイトを始め、20代にして店長にまで登りつめました。私が「相当なやり手だったのですね」と聞くと、

 

「セールスについて言えば、そこそこは売る方でしたが、決して売り上げが突出してよかったわけではありません。ただ、少しだけ世渡り上手だったのかもしれません。当時のファッション業界にはコワイ先輩たちがたくさんいて、若い連中は皆ビビっていましたが、そういう人たちと付き合うのは得意でした」

なるほど、人付き合いって、仕事がデキることと同じくらい大切ですよね。 そんな“好感度”を大切にする姿勢は、着るものにも表れています。

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オリジナルのシルク混スーツ¥120,000、ジレ¥35,000 、タイ¥24,000 all by guji

スーツは、gujiのオリジナルで、リングヂャケットにて作ったもの。

「リングヂャケットの大定番である184というモデルを、guji風に、ちょっとシャープにしたものです。素材はカルロ・バルベラのシルク混で、ほんのりとした光沢があります。世間では、英国調の渋い服がトレンドですが、お客さんからは、『もう少し、艶っぽいものが着たい』という声もよく頂くのです。そこでこのスーツを作りました」

 

シャツは、ルイジ ボレッリ。

「このところ、ピンホール・カラーやタブ・カラーを着ることがままあります」

 

タイは、アット ヴァンヌッチ。フィレンツェ発のネクタイ・ブランドです。

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 ブレスレットはエルメス。

「その昔、シップスの社員旅行でハワイへ行った時に買いました」

社員旅行でハワイとは、羨ましい限りです。

 

指輪はカルティエの3連とgujiオリジナルのカレッジリング。

時計はロレックス。

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シューズはオールデン。

「オールデンは大好きで、シップス時代には随分と集めたものです。一時、12〜3足は持っていました。しかし、起業するときにお金がなくて、全部ヤフオクで売ってしまいました(笑)」

ちらりと見えるソックスはパンスレラ。なんとラメ入りです。

 

「ウチの店のテーマは、イタリアらしい色気と艶を大切にすることです。ですから、こういった一見コンサバな装いでも、シルク入りのスーツやサテンのタイ、コードバンの靴などで、ちょっとした華やかさを演出します」

 

インタビュー中もひっきりなしにお客さんが出入りしており、その度に田野さんは席を立って、丁寧に挨拶をされていました。それぞれの人の名前と近況を覚えておられ、関西弁でのジョークも交えつつ、話が弾みます。田野さんと話しているときのお客様は、笑顔が絶えませんでした。

 

gujiの躍進の秘密は、この方の傑出した“人当たりのよさ”にあるのだと思いました。

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guji TOKYO
〒106-0032
東京都港区六本木7-5-6 KCテラス1F
Tel:03-6721-0027
https://www.guji.jp/

渡部勝さん

渡部勝さん

パレスホテル東京 総支配人

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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総客室数290、全室45平米以上という偉容を誇る、パレスホテル東京の総支配人、渡部勝さんのご登場です。豊かな緑を持つ皇居外苑と東京駅を結ぶ線の真ん中に位置し、その住所は「丸の内1-1-1」、まさに東京を、そして日本を代表するホテルです。

「大卒で入社して以来30年間、パレスホテル一筋の“パレスマン”です。最初はベルボーイからのスタートでした。そういう下積みをすることによって、ホテルというものがわかるようになるのです」

なるほど、私も編集者としての下積みの多さでは人後に落ちませんが、問題は下積みのまま終わりそうなところです・・

 

「入社当時のパレスホテルは、それは華やかでしたね。当時より、丸の内には外資系の会社がたくさんあって、お客様の6割は外国の方でした。皆ビシッとトラっドなスーツを着ていらして、とにかく格好よかった。ハウスキーピング(室内清掃)を担当していた時期もあったので、お客様の靴をお預かりして、自ら磨いたこともありましたが、そのブランドは英国のチャーチだったりして、『本場のジェントルマンは、こういうものを履くのだな』と感心しました」

そういった経験から導き出されたのが、渡部さんのスタイルです。ホテルマンのドレスコードは、ことのほか厳しいと聞きますが、やはりさまざまな制約があるようです。

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スーツはビームスのブリッラ ペル イル グストのもの。もう10年以上通っているそうです。

「私は仕事柄、一年のうち360日はスーツを着ます。そして、そのほとんどがネイビーかチャコールグレイのダークスーツです。ワンシーズンに1〜2着の割合いで、新しいスーツを買います。ブリッラのものは私の体型に合うので、パンツの裾丈以外、お直しをしなくてもいいところが気に入っています」

 

シャツはパレスホテル東京のアーケード内にショップを構えるシャツ専門店、タケナカシャツにてオーダーしたもの。

「パレスマンのシャツは、白以外はNGです。われわれは裏方ですので、お客様より目立ってはいけないのです」

 

ネイビーのソリッドタイは、ドレイクス。他にはブリューワーもよく締めるとか。

 

メガネはフォーナインズ。

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時計はIWCの名作、ポルトギーゼ。

「ストラップがネイビーなところが、さり気なくていいですね」

 

カフリンクスは、出張先のロサンゼルスのニーマンマーカスで買ったもの。

「基本的には、アクセサリーは着けません。しかしカフリンクスは好きで、いろいろと持っています。シャツも必ずダブルカフスにしています」

 

シューズはジェイエム ウエストン。

「足が細いので、ウィズはCかD。日本だと、ぴったりと合うサイズを探すのが難しいのです」

甲高幅広の私からすると、羨ましいお悩みをお持ちです。

 

「いまでは私が総支配人となりましたので、パレスホテル東京のドレスコードは私自身が決められるのですが、昔ながらのしきたりを守っています」と。

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渡部さんの装いを見ていると、本当にメンズ・ファッションというものは、「決められたルールのなかで、いかに細部を追求するか」にかかっているのだなぁ、と思います。ダークスーツ、白シャツ、紺タイ、黒靴だけで、十分にカッコいいスタイルが可能なのです。

 

「ファッションも、ホテルも、ディテールが大切だと思っています。細かい部分にこだわりを持っているつもりですし、お客様にそういったところに気付いて頂けると、とても嬉しいですね」

 

まさにホテルマンの鑑のような存在。パレスホテル東京が持つ、独特の“凛”とした雰囲気は、この方が醸し出しているのだと思いました。

1F ロビー

パレスホテル東京

ロビーより、皇居外苑を望む。

所在地は、丸の内1-1-1。地下1階は、地下鉄大手町駅に直結。
東京駅からは徒歩8分。

2駅12路線が利用可能

http://www.palacehoteltokyo.com/

 

 

洞内浩さん

洞内浩さん

 新宿高島屋 シニアマネジャー兼ストアバイヤー

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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 新宿高島屋の洞内浩さんのご登場です。高島屋というと、トレード・マークであるバラの包装紙をはじめ、上品で大人しいイメージがありますが、洞内さんは、その笑顔もスタイルも、実にパワフルです。

「コーディネイトのポイントは“色”です。ヴィヴィッドな色を身につけていると、そこから会話が始まって、お客様も私も、自然と笑顔になれる」

 

SNSなどで彼の毎日のコーディネイトを拝見すると、赤、黄、緑など、カラフルな色のオンパレードです。またストライプやチェックなど、柄物同士の組み合わせも多用されています。しかし、色と柄を組み合わせるのは、素人には難しいのでは? と問うと、

「まずキーカラーを決めて、他のアイテムでその色を拾うこと。あとは『似合っているんだ!』と自分に言い聞かせて、自信を持って笑顔で着こなすことですね。そうすれば大丈夫です!」と。

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 ジャケットは、ティト アレグレット。ルビナッチ出身で、イザイアやアットリーニのVMDなどを務めたナポリの大物が、自らの名を冠したブランドです。昨年夏には、ピッティに初出品したばかりのコレクションによるトランクショーを世界に先駆けて新宿高島屋にて行い、大盛況を収めました。

「ナポリらしい色っぽさがありますね。ステッチやバルカポケットなどのディテールにもこだわっている。着て楽しく、カッコよく、『お洒落ですね』とホメられる服です」

オーダーのラインでも、ジャケットで109,000円~、スーツで143,000円~というリーズナブルな価格も魅力です。

チーフはミラノのフィオリオ。

タイはナポリのフランチェスコ マリーノ、同じモノを色違いで2本ご購入。シャツはプーリアのアンジェロ イングレーゼ。こちらも色違いで3枚ご購入。お洒落な人って、こういう買い方をしますよね。すべて新宿高島屋で扱いがあるそうです。

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 時計はロレックスのエクスプローラーⅡ。

シルバーのチェーン・ブレスレットやリングはエルメス。

「私の名前は浩(HIROSHI)というのですが、エルメスにはイニシャルのHを象ったものが多く、まるで私のために作られているようだから(笑)」

 手首につけたアクセサリーは、シンパシーオブソウル、トロールビーズ、フィリップ オーディベール、など。

  パンツはナポリの新進ブランド、マコ。プリーツ入りのサイドアジャスター仕様で、二本の持ち出しがつく、クラシカルで変わったタイプです。こちらも色違いで2本買われました。

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 シューズはクロケット&ジョーンズ。

「靴は100足くらい持っています。そのうち約80足がドレスシューズで、20足がクロケット&ジョーンズです。これはサイドエラスティックですが、クロケットとしては珍しいですよね。確かなブランドが作った、ちょっと変わった靴や服が好きなのです」

しかも、持っている靴のほとんどは茶やネイビー等の色物で、黒は冠婚葬祭用のストレートチップとタキシード用のオペラパンプスだけ。

「世の中、こんなにたくさんの色があるのだから、もっと色を楽しまなきゃもったいないと思うのです」

 

ブルー系でまとめた本日の装いは、洞内さんにしては、ずいぶんと抑え目なほうだとか。

「昔から、カラフルな格好が大好きでした。学生時代に初めて買ったシェットランド・セーターの色は真っ赤。コンバースのオールスターは、友人とオレンジとグリーンを一足ずつ買って、片方ずつ交換して履いていました。道行く人に、『あら、あなた靴を間違えているわよ』などと言われたものです(笑)」

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 今年、高島屋勤続30年を迎える洞内さんは、売り場やバイイングなどの現場が大好き。大好きな洋服に囲まれているのが、一番幸せだそうです。

「接客のコツですか? これも笑顔です。お客様には、あえて少し派手かな、と思える色柄をおすすめします。そして『お似合いですよ』と申し上げる。すると『ええ、本当?』と仰いつつも、皆、笑顔になる。新しい自分が見つかることは、誰しも嬉しいものですからね。笑顔で接すれば、笑顔に出会える。誠にお客様は“鏡”なのです」

楽しいお話を拝聴し、私もすっかり笑顔になってしまいました。

 

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Information

ティト アレグレットのス・ミズーラ スーツ&ジャケット トランクショーは、

2月23日(金)〜2月25日(日)高島屋 新宿店にて。詳しいお問い合わせ・ご予約は、

新宿高島屋Tel.03-5361-1111(代表)オム・メゾン8階ダブルスタンダードクロージングヒム

http://www.takashimaya.co.jp/

 

川口昭司さん

川口昭司さん

 マーキス ビスポーク・シューメーカー

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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ビスポーク・シューメーカーの川口昭司さんのご登場です。ウチのフジタが「ここぞ」という時に履いて来るのが、川口さんが作ったシューズです。フジタは人間としては、99%ダメなヤツですが、唯一1%、いいモノを見分ける目だけは天才で、その彼が「いま、一番いいかもしれない」というのがマーキスの靴です。

また私が昔から(もう20年も前から)洋服を作ってもらっている、佐藤英明さんのお気に入りでもあります。佐藤さんの店、ペコラ銀座には昔からマーキスのサンプルシューズが置いてあり、私も以前から「いい靴だなぁ」と思っていました。

 

つい先日、このブログにご登場頂いた福田洋平さんとは、英国での修業時代、“トレシャム”というノーザンプトンの同じ靴学校に通っていたそうです。福田さんの作る靴が、ひたすら「貴族的華麗さ」に溢れているのに対し、川口さんの靴は、また違ったよさがあるように思えます。それは、「美しい朴訥(ぼくとつ)さ」とでもいうのかな。高級ビスポーク・シューズであるにもかかわらず、誠実で、どこか親しみやすいのです。誤解を恐れずに言えば、前者がオスカー・ワイルドであるのに対し、後者は宮沢賢治のような。

 

今回初めて川口さんにお会いして、そのお人柄に接し、やはり作る人の個性は、その作品に出るなぁ、と改めて思いました。

「ぼくは昔から、とても不器用だったんです。幼い頃は、将来モノを作る仕事に就くなんて考えられなかった・・でも、靴作りに器用、不器用は関係ないとも思います。初めて作る1〜2足では差が出るかも知れないけれど、それからは・・」

では、靴作りにおいて、一番大切なことは何ですか? と聞いたら、

「それは情熱です!」ときっぱり。この瞬間に、私も彼の靴を一足オーダーすることに決めました。

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 ジャケットとベストはペコラ銀座。スリーピースとして誂えたもの。

「佐藤さんに初めてお会いしたときは、とても緊張しました。雑誌などでよく取り上げられていた、有名な人でしたから。でもお会いして『気さくな人だなぁ』と思って安心しました。それで靴のサンプルも、置いてもらえることになったんです」

 

タイはイギリスで買った、アンダーソン&シェパード。

「でも中古なんです」とポロリ。

 

シャツはアレッサンドラ・マンデッリ。これもペコラ銀座で扱っている、イタリアのシャツ職人です。

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 時計はロンジンで、お祖父さんからもらったものだそう。ベルトもオリジナルで、昔風にクロコダイルの背中部分が使われています。

「ベルトは何度も替えようと思ったのですが、このゴツゴツしたところが気に入ってしまって・・」

パンツはロンドンでテーラーをやっている友人、「仲良しの、ロバートさん」が作ったもの。

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シューズは、もちろんマーキス。ウィングチップなのにスリップオンという珍しいデザイン。

「太めのパンツに合うように、履き口を浅くしてみました。どうでしょうか?」

撮影時、靴がよく見えるよう、何度もパンツをつまんで長さを調節していたのが印象的でした。

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 フルビスポークのハンドソーン専門のため、どうがんばっても月産は7〜8足が限度だとか。しかしそんな川口さんには、大きな味方がいます。それは奥様の由利子さんです。

「実は彼女も、同じ靴職人なのです。英国トレシャム時代に知り合って、帰国後結婚、そして一緒にマーキスを立ち上げました。スタートした頃は、資金繰りが厳しくて、彼女が手伝ってくれなかったら、どうにもなりませんでしたね」

「二人でいるときも、ぼくは靴の話しかしません。でもそれを聞いて、理解してくれる人がそばにいるというのは、本当に有り難いことですね。本当は退屈だと思っているかもしれないけれど(笑)」

 

もうすぐ2歳になる息子さんにも恵まれて、公私ともに充実している川口さん。その充実ぶりは、確実にマーキスの靴に表れています。今から出来上がりが、楽しみだなぁ!(ちなみに私がオーダーしたのは、フルブローグのブラックのウィングチップ。こういったモデルを勧めるところにも、彼の人柄が表れていますね)

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ショップと工房は長らく江戸川橋にありましたが、この度、念願だった銀座に移転しました。

Marquess

東京都中央区銀座1丁目19-3 銀座ユリカビル8F
TEL/FAX 03-6912-2013(完全予約制)

https://marquess-bespoke.blogspot.jp/

林信朗さん

林信朗さん

 編集者、執筆家

text kentaro matsuo  photography shinsuke matsukawa

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ファッション編集の世界における大先輩、林信朗さんのご登場です。かつては婦人画報社にて、女性誌『mcシスター』、『25ans』、男性誌『メンズクラブ』、『Dorso』、『Gentry』など、多くの雑誌の編集長を歴任されました。その後は、フリーの編集者・執筆家として、さまざまな媒体で活躍されています。

林さんは生粋のサラブレッドでもあります。お父様は林邦雄さんという有名なファッション評論家で、メンズクラブや、かつて私が在籍した『男子専科』でも、長く連載をされていました。著作も多数あります。親子二代にわたって、ファッション評論の世界で活躍されているのですから、私のような“ぽっと出”とは、まさに月とスッポンといえます。

「幼い頃は、父親の書斎が遊び場だった。とにかく家中本だらけでね。毎号メンクラやダンセンが送られてきていたから、小学生の頃からメンズ・ファッション誌を読み漁っていたな。アイビーが大好きで、VANのノベルティのクシやソックスが手に入ると、嬉しくて抱えて寝ていたよ(笑)」

 

その後、大学時代にシアトルへ3年間留学され、本場のアメリカン・ファッションに出会います。

「初めてエディ・バウアーのショップへ行った時は、本当に感激した。アウトドアズ・マンのためのギアとウェアが数え切れないほどあってね。なんとカヌーまで売っていたんだ。1970年代の日本では、そんな店は考えられなかった」

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ジャケットはアンダーソン・リトルというかつてアメリカ東海岸にあったブランドのもの。購入されたのは、なんと40年前だそうです。

「これは学生時代にボストンへ行った時に買ったもの。確かボイルストン通りの店だったと思う。シアトルは西海岸だったから、アイビースタイルはぜんぜん見かけなくて、東側まで本物のアイビーを見に行ったんだ」

 

ボウタイは、シカゴの老舗デパート、マーシャルフィールドでご購入。これも30年前くらいのものだとか。

「昔のアメリカものは、本当に丈夫で長持ちする。今でも普通に使っているよ」

 

シャツはヤマナカシャツ。こちらは打って変わって、つい最近ネットでオーダーしたものだそう。

「インターネットでショッピングするのは大好きなんだ。原稿を書いているときはネットを見ることが多いけれど、ついつい余計なものを買ってしまう」

林さんがeコマース愛好者だとは、ちょっと意外です。

 

トレードマークのパイプは、アイルランドのピーターソン。林さんといえば、かつてパーティなどでは、流暢な英語を操りつつ、いつもパイプを燻らせていることで有名で、若い頃の私もその姿に憧れたものです。

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 ベルトはフェリージ。ジーンズは、なんと無印良品。

「無印、大好きだよ」とさらりと仰っていましたが、新旧取り混ぜたコーディネイトに脱帽です。

そして靴はクラークス。

 

「ファッションには、何か面白いことがないとね。定番を、定番通りの組み合わせで着るのは好きじゃない。例えば、今日はブレザーにジーンズ、そして黒いボウタイに茶のクラークス。男のファッションのセオリーからすると、ヘンなコーディネイトだけれども、あえてそうしている。ドレスダウンを楽しんでいるんだ」

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林さんと私には、大きな共通点があります。それはかつて二人とも西新橋で働いていたことがある、ということです。もう25年も前になりますが、私の在籍していた男子専科編集部から、林さんのいた婦人画報社は目と鼻の先で、同じ頃に、同じ店に通っていました。新橋は今でこそ“オヤジの原宿”になってしまいましたが、当時はファッション編集者や業界人が闊歩する、お洒落な街だったのです。

「ここも知っている! あそこも通っていた!」と大いに話が盛り上がりました。

 

「ランチが終わったら、必ず喫茶店に寄ってコーヒーを飲んだし、仕事が終わったら、毎晩のようにバーへ行った。そのまま会社に泊まってしまうことも、しょっちゅうだったな。今とは時代が違うね・・。昔の編集者は荒っぽくて、酔っぱらって飲み屋の客とよく喧嘩をしていたよ。僕はジェントルマンだったから、そんなことはしませんでしたけれど(笑)」

 

私にも一風変わった先輩がたくさんいて、いろいろな店に連れて行ってくれました。新橋界隈には、ウエスタンとか、トニーズバーとか、いくつか溜まり場があって、行くと必ず知り合いがいて、夜遅くまで語り合ったものです。四半世紀ほど前は、編集者というものは、まだまだ“酔狂”とか“無頼”という、今ではすっかり死語となってしまった言葉が似合う職業だったのです。

林さんからは、そういった往事の、自由闊達たるマスコミ業界のニオイがプンプンします。これからは“林先輩”と呼ばせて頂き、男のファッションの何たるかを学んでいきたいと思います。

 

水落卓宏さん

水落卓宏さん

 ディトーズ テイラー&カッター

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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南青山の隠れ家的テーラー、ディトーズのオーナー、水落卓宏さんのご登場です。壹番館洋服店、ブリオーニなど、一流処を渡り歩いて来たことで知られています。水落さんと私が初めて出会ったのは、彼が滝沢滋さんのサローネ・オンダータにいた頃でした。その後独立されて、自らのテーラーを開いたということは耳にしていたのですが、「そのうち行ってみたいな」と思っているうちに、はや8年が経ってしまいました。

 年を取るほどに、時の経つのは早くなります。学生時代は、1年が永遠にも感じられるほどの長さでしたが、30歳を超えるころから、だんだんと時が流れるのが早くなり、50歳を超えた今では、1年2年はあっという間に過ぎ去ってしまいます。お互いに「早いものですね・・」と感慨しきり。そんな会話から、今回の取材はスタートしました。

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ターンバック・カフのジャケットは、ディトーズで自ら仕立てたもの。生地はカシミア100%で、英国ジョンストンズに鉄砲で有名なジェームス・パーディが別注したものだそうです。

「素材の風合いを生かすために、極力芯地を抜いて、柔らかく仕上げてあります。もうフニャフニャです(笑)。私自身の着ているものは、実験的な要素が強いのです。新しい技術や材料はまず私自身の服で試します。いきなりお客様に使うのは、怖いですからね」

 

タッタ―ソールのウエストコートもディトーズ。

「これは“ポストボーイ”といわれるスタイルです。ウエストラインにシームがあって、通常のベストより長めの丈となっています。ボタンも5つ全部を留めます」

なるほど、一見普通ですが、よく見ると実に凝った仕立てとなっています。

 

シャツとタイもオリジナル。

「シャツはカチョッポリのオックスフォード製。タイは英国アダムレイの生地を使って、日本の職人に縫製してもらったものです。大剣幅は9.5cm、長さは140cmとしてあります。通常より短いと思われるかも知れませんが、背が高いわけでもなく、首が細い日本人にはこのくらいがちょうどよいのです」

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チーフは、エリッコ・フォルミコラ。千葉のアウトレットパークで買いました。

「意外ですか? 実は妻がアウトレット好きで、よく行っているのです。そんなときは軍モノや古着、アウトドア・クロージングなどを着ています。たぶん私だとはわからないでしょう(笑)。クライミングパンツなどはカットやパターンが面白くて、勉強になりますよ」

 

ゴールド製の懐中時計はアスプレイのアンティーク。

「かつて表参道にあったハナエモリ・ビルの地下に、アンティーク・ショップ街がありました。そのうちの一軒に飾られていて、10年間欲しいと思い続けた時計です。しかし、当時は修業時代でまったくお金がなかった。いざ買おうと思ったら、ビルは取り壊しになって、それぞれの店はバラバラに移転してしまっていた。そこで探しに探して銀座に移ったことを知り、ようやく手に入れた品なのです」

その一途さが素晴らしいですね。10年間他の人に売れなかったというのも、奇跡です。

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コーデュロイ・パンツはブリスベン・モスの生地を使ったオリジナル。

「英国でコットンといったらここで、例えばバブァーの襟地なども作っています」

 

靴はスマートなシルエットで知られるビスポーク・シューメーカー、ヨウヘイ・フクダ。ぽってりとした靴なので意外でしたが、

「技術を持っている人なので、言えば何でもできるんですよ。彼とはよくお客さんを紹介し合っています」と。

 

「今日のコーディネイトのテーマは、色づいて来た外苑のイチョウ並木」という通り、全身イエローベースで統一しているので、さまざまなパターンを組み合わせていても、統一感がありますね。

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「8年前、独立して自分のテーラーを開くと宣言した時は、周りの皆に反対されました。養わなければいけない家族がいたので、『一人もお客さんが来なかったらどうしよう』と、本当に怖かったですね。でも当時、メンズ・イーエックスの別冊“本格スーツ読本”で紹介されてからは来てくれる人が増えて、それ以来、ずっと順調にきています」

その本は、私が作った一冊でした。こういうことを言われると、編集者冥利に尽きますね。今度はあまり間を置かず、また近々にお会いしたいと思います。

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ヘラクレス・ノットを象ったオリジナルのタイスラーダー。シルバー製。3万円

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ディトーズ

東京都港区南青山4-14-2 グランポート南青山 2F

03-6438-9313

http://www.dittos.jp/

鈴木貴博さん

鈴木貴博さん

 ドーメル・ジャポン 営業本部長

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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 創業1842年、現存する最古の服地ミルマーチャント、ドーメルの日本支社にて、営業本部長を務める鈴木貴博さんのご登場です。就職されてからは、服地業界一筋で、カキウチ、エルメネジルド ゼニア、そしてドーメルとキャリアを積まれて来ました。ゼニア時代には、なんと私の家内も同じ会社で働いていました。

「社内の飲み会で、奥様とご一緒したこともありますよ」と仰っていましたが、いやはやご迷惑をおかけしていないといいのですが・・

そして、鈴木さんの奥様も私のことをご存知です。以前アンジュノワールというセレクトショップのPRをご担当なさっていた頃、何度かお会いしたことがあります。しかし鈴木さんの奥様だとは、まったく存じ上げませんでした。世間は狭い、そしてファッション業界はもっと狭いですねぇ。お互い気をつけましょう(笑)

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スリーピースのスーツはもちろんドーメルのオーダーメイド。ドーメルは服地を販売する他に、オリジナルも充実しています。この形は“パリ”というモデルで、ちょっとフレンチ風のディテールを持っています(フィッシュマウスラペルなど)。実は私も、パリのダブルスーツを愛用しています。

「生地は“スポーテックス・ヴィンテージ”です。スポーテックスは、ドーメルで一番有名な生地で、開発されたのは1922年。その名の通り、当時はハンティング、レーシング、そしてゴルフなどのスポーツを楽しむためのものでした。太い糸を使ってしっかりと織られています。同時のウエイトは700gもあったそうですよ。今では、さすがにそんなにヘビーなものはありませんが、いいところはそのまま。つまり耐久性に優れ、スーツのシェイプがキレイに出るのです。テーラー好みの生地と言えますね。わざわざ昔のものを探し求めるマニアの方もいるのです」

ドーメルのスポーテックス、そしてモヘア素材の“トニック”は、服道楽なら必ずその名を知っている名作生地です。

ネクタイもドーメル・オリジナル。15.7(フィフティーン ポイント セブン)というスーツ生地で作られています。

「15.7ミクロンの極細ウールで織られているので、この名前がついています。実はコレ、7フォールドなんですよ。しかもフランス製。先の方まで芯地が入っていたりと、同じ7つ折りでもイタリア製とはちょっと違うところが面白いでしょう?」

ドーメルは英国製の生地を扱いますが、実は本社はパリにあります。だから、ガチガチのブリティッシュじゃなくて、ちょっとフランス風の遊び心があるのですね。そこがこのブランドの最大の魅力だと思います。

 

ハンドメイドのシャツもドーメル。職人がナイフでひとつひとつ生地をカットして作っているそうです。

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 カフスはかつて奥様がPRをなさっていたアンジュノワールにて購入したもの。アンジュノワールは、日本を代表する写真家・田原桂一さんがディレクションをなさっていた骨董通りのセレクトショップです。独自の審美眼をお持ちだった田原さんですが、惜しくも本年6月帰らぬ人となりました。

 

時計は、なし。

「時間に縛られない男だから・・」とうそぶいておられましたが、実は現在いいものがないか物色中だそうです。時計ブランドの皆様、セールスのチャンスです(笑)

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シューズはクロケット&ジョーンズ。ロンドンにて購いました。年に何度もヨーロッパと日本を往復する鈴木さんは、真の国際派です。

 

「高校、そして大学は、アメリカで過ごしました。最初はユタ州。州都のソルトレイクシティからクルマで2〜30分走ったマレーという田舎町に住んでいました。とにかく何もないところで、日本のことなんて誰も知らない。『日本にはアイスクリームってあるの?』と聞かれた時は閉口しました(笑)。それからシアトルに移って、シアトル・ユニヴァーシティで国際経済を専攻しました。でもあまり勉強はしなかったな。テニス、ゴルフ、スノーボードなど、スポーツ三昧の日々でしたね」

な〜んて軽く仰っていましたが、シアトル大ってアメリカ人にとっても難関ですよ。鈴木さんの語学力は推して知るべしです。

 

「卒業後は台湾へ行って、今度は中国語の勉強をしました。『英語だけではダメだ。次は中国語だ』と思ったのです」

 

う〜ん、うらやましい。今の世の中、語学は非常に重要ですからねぇ。実は私もロンドンへ留学(遊学)していたことがありますが、渡英後数ヶ月で学校を辞め、日本人の女の子と同棲してしまい、毎晩クラブで夜遊びばかりしていました。もしタイムマシンがあるなら、あの頃の私を張り飛ばしてやりたいです。

鈴木さんと話していると「若い頃の努力が、後年実を結ぶ」という当たり前の事実を、痛感させられます。

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ドーメルのスーツ生地15.7で作った7フォールドタイ。¥28,080

ドーメル青山店

〒107-0062 東京都港区南青山1-1-1 新青山ビル1F
TEL 03-3470-0251

http://www.dormeuil.com/jp