From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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西口修平さん

西口修平さん

 BEAMS F ディレクター

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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ビームスFのディレクター、西口修平さんのご登場です。バイイング、商品構成、そしてオリジナルの企画と、Fのすべてを司っているのが西口さんです。

原宿のビームス Fといえば、栗野宏文さんや中村達也さんなど、今や大御所となった面々が、かつて店長を務めていた名店です。オープンしたのは1978年、今年で開店40周年を迎えました。

 

かく言う私もFには学生時代から通っており、特別な思い入れがあります。昔は、本格的なクラシックが揃っている店って、あまりなかったのです。恐る恐る洋服を見ていたら、栗野さんに話しかけられたときは緊張したなぁ・・

 

今でも何か“困ったこと”があると、駆け込むのは決まってここです。

自分の結婚式のときには、Fのディレクターズ・スーツを着ましたし、先日もバリ島での友人の挙式のために、頭からつま先まで一式揃えました。昔から通っている店って、何か安心するのですよ。

 

「50〜60代の、昔からのファンの方々も来店されます。その中で、若い人も取り込んで行かなければなりません。そのサジ加減が難しい」

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リネンのスーツは、デ・ペトリロ。

シャンブレーのシャツは自社のオーダー品。

ネクタイは、ヴィンテージのラルフ・ローレン。

「ヴィンテージが好きで、裏原や高円寺の古着屋にもよく足を運びます」

 

チーフは、ミラノのエラル55にて。

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時計はやはりヴィンテージのグリュエン。1940年代のものです。

 

バングルは、ナバホ族が作ったものと、サハラのトゥアレグ族が拵えたもの。

「トゥアレグ族は、決して金色のアクセサリーを作らないのです。しかしゴールドのトゥアレグ・ジュエリーを作りたくて、金メッキを施してみました」

発売前の新製品を試すのも、ディレクターの仕事です。

 

指輪は昔のカレッジ・リングとヴィクトリアン・リング。

メガネはヴィンテージのアメリカン・オプティカル。

 

シューズは、デッドストックだった英国のグレンソン。

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「私のスタイルは、ブリティッシュ・アメリカンといったもの。ラルフ・ローレンやブルックス・ブラザーズなどのアメリカ東海岸のスタイルが基本です。それに英国やイタリアなどの要素をいかにミックスして行くかがテーマです」

 

西口さんは、インスタグラムの達人でもあります。2018年7月現在、7.6万人のフォロワーがいて、これはビームススタッフのなかで一番の数字だそう。フォロワーを増やすコツは何ですか? と聞くと、

「見る人が何に興味を持っているかを考えて、フィードを乱さないことでしょうか?」と。

確かに彼の投稿する写真は、自らの着こなしのみで、統一感があります。アイデアに富んだコーディネイトの数々は、見ていて実に参考になる。私もインスタをやっていますが、フィード乱れまくりですからねぇ・・

 

「フォロワーの半数以上が外国人です。韓国、アメリカ、イタリア、台湾などなど。よく海外でも声をかけられますね。先日ミラノのブライアン&バリー(トレンドセッターの巨大セレクトショップ)でも、スタッフに『シューヘイ! お前をフォローしているぞ!』と言われました(笑)」

 

さて西口さんには、もうひとつ達人の肩書きがあります。それは意外なことに、“虫取り”です。

「小さい頃から、生き物が大好きでした。カブトムシやクワガタはもちろん、魚やカエル、ヘビなども大丈夫です。今でも8歳になる娘を連れて、よく虫取りに出かけます。代々木公園あたりにも、カブトムシは絶対にいますよ。まずは甘い匂いのする木を探すのです。そして捕まえるときは、絶対に引っ張ってはいけません。カブトのツメ先は鍵型になっているので、腕がもげてしまう。そっと掌の上に乗るのを待つのです・・」

虫の話になると、止まらなくなります。

 

「トノサマバッタをよく見たことがありますか? そのカラーリングは本当にカッコいい。グリーンとブラウンのグラデーションで、膝下だけがレッド。これは人間のファッションにも取り入れられます・・」

本当ですか?

 

「自然の配色がいいということです。今日の私のコーディネイトも、茶色と緑でしょう。自然の色を着ると、自然に見えるものです」

なるほど、そう言われると、その通りのような気がします。

 

「虫取りには、ボルサリーノを被って出かけることもあります」

 

どのような場所でもお洒落を欠かさないというスタンスが、世界中のフォロワーの心を掴むのでしょう。

今度虫取りに連れて行って下さいね!

 

https://www.beams.co.jp/beamsf/

高橋幸宏さん

高橋幸宏さん 

ミュージシャン、デザイナー

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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ミュージシャン&デザイナーの高橋幸宏さんのご登場です。

幸宏さんといえば、かつて“サディスティック・ミカ・バンド”や“イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)”で一世を風靡し、その後もソロ活動のかたわら、鈴木慶一さんとのバンド“ザ・ビートニクス”や、原田知世さん等との”pupa”、最近では小山田圭吾さんやTOWA TEIさん等との”METAFIVE”での活動をはじめ、数々のミュージシャンのプロデュース、ファッション・ショウの音楽、映画のサウンド・トラックを手がけられるなど、常に日本の音楽シーンをリードされてきた第一人者です。

 

かく言う私も中学生の頃、YMOに夢中になり、幸宏さんがデザインされた通称”人民服”と呼ばれていたジャケットを真似て、人民服と丸いサングラスを買って、プチYMOを気取っていたものです。当時は今のようにネットやらインスタやらがなかったので、雑誌やレコジャケに掲載される幸宏さんの格好を見ては、一生懸命にマネをしていました。

 

幸宏さんは、ファッショニスタとしても超一流で、ご自身のブランド“バズ・ブラザーズ”、”ブリックス”、“ブリックス・モノ”、“YUKIHIRO TAKAHASHI COLLECTION”などのデザイナーを歴任なさっています。当時の私は、渋谷パルコ内にあったブリックスの店に恐る恐る近づいては、店員さんに声をかけられ、慌てて逃げ去るということを繰り返していました。

 

音楽においては、11歳からドラムを叩き始め、学生時代からスタジオ・ミュージシャンとして活躍し、19歳で武道館のステージに立ったという早熟の天才ですが、ファッションの方も、昔からスゴかったようです。

 

「僕は5人兄弟の末っ子なのですが、兄の影響で、中学生くらいからファッションに興味を持ち始めました。最初はアメリカン・トラッドでしたね。テイジン・メンズショップやVANが全盛の頃です。兄の世代は、皆それらのショップの紙袋に、アイロンを当てて持ち歩いていましたね(笑)」

 

19歳で武蔵野美術大学へ入ると、今度はお姉様(=伊藤美恵さん。ファッション業界では知らない人はいない、元祖アタッシェ・ド・プレス)から誘われ、バズ・ブラザーズのデザインを手がけられました。

「その頃には、ヨーロッパ志向になっていました。サンローランやセルッティ、レノマなどなど。20歳くらいから、姉とパリやミラノのコレクションにも通うようになりました。アルファ・キュービックの柴田(良三)さんや、タケ先生、加藤和彦さんなど、周りに面白い人がいっぱいいて、ずいぶんと影響されました」

私にとっては、キラ星の如き人たちばかりです。

 

「21〜22歳の頃には、トノバン(加藤和彦さんの愛称)としょっちゅうロンドンへ行っていました。“第一期、ロンドンが面白かった時代”です。グラムロックが流行っていて、ロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーやアンディ・マッケイがカッコよかった。ブティックでは、ヴィヴィアン・ウエストウッドの“レット・イット・ロック”や”グラニー”、マノロ・ブラニクの“ザパタ”など面白いお店がたくさんあった時代です」

ファッションへの情熱には、さらに拍車がかかります。

 

「ある日、ブリティッシュ・ヴォーグを見ていたら、イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュとマノロ・ブラニクのコラボ・シューズが掲載されていました。白いギャバジン製のプレーントゥ。その靴がどうしても欲しくて、トノバンとロンドンからパリへ、なんと日帰りで買いに行きました。いろいろな人から『いったい何のために?』と聞かれたのですが、僕の中では、『サンローランの靴を履いて、ドラムを叩いているのは、世界で僕しかいない』という自負があったのです。当時ドラマーといえば、長髪にタンクトップで、大汗かいているような奴ばっかりでしたから(笑)」

 

私が、幸宏さんって汗かかないイメージですよね。いつもクールにドラムを叩いて・・というと、

「いや実は、こっそり汗かいています(笑)」と。

 加藤和彦さんは本当にお洒落でしたね、との投げかけには、

「彼は世界のミュージシャンの中で、数少ないお洒落な人のうちの一人でした。実はミュージシャンって、あまりお洒落な人がいないのですよ(笑)」

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 シャツ、パンツ、シューズはすべてプラダ。

「プラダは昔から好きですね。これらはすべて今季ものです。基本的には、シンプルなスタイルが好きですね。今でも洋服はよく買うのですが、いつも同じようなモノばかり。よく人から『それ、前から持っていたヤツだよね?』と言われます(笑)。パンツなども何本も持っているのですが、コレクションごとに微妙にシルエットが違う」

 

自らもデザイナーだけあって、細部へのこだわりはハンパじゃありません。

「シャツの襟はぐるりと回して付けるので、下手なところだと、第1ボタンと第2ボタンの間が、妙に浮いてしまうものがある。それではダメなのです。一流ブランドのものは、すっきりと収まっています」

 

ハットはボルサリーノ。クラシックなブランドもお召しになるのですね、と感心すると、

「クラシックなアイテムもミックスします。やはり値段が相応にするものは、違いますね。いいモノはいい。実は(デザイナーの山本)耀司さんが被っている帽子もボルサリーノの特注だそうですよ」

 

 サングラスはオリバーピープルズ。製造を手がけるオプテック・ジャパンからは、YUKIHIRO TAKAHASHI EYEWEARもリリースされています。

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 時計はロレックスのデイトナ。

「趣味の釣りに行く時にもフツーに使っていたら、ベゼルの文字が擦れてなくなってしまいました。近々修理に出さないと・・」

 

他に好きなブランドは? との質問には、

「トム・ブラウンはよく着ています。定番ばかりですけれど。先日トム本人に会った時には、偶然にもトム自身とまったく同じコーディネイトをしていました(笑)。まあ、彼自身はいつも同じ格好をしてますからね。それから最近のグッチはいいですね。デザイナーが変わってから、本当によくなった」

 

soe(ソーイ)はどうですか? と続けると(ソーイのデザイナー、伊藤壮一郎さんは、前出、伊藤美恵さんの実子。つまり幸宏さんの甥っ子。つくづくファッション一家です)

「もちろん展示会に行って、ちょこちょこ買ったりしていますよ。あの子は、いちばん僕に似ているのです。ヒネくれていて、神経質で、病気に対してナーバスで・・しかもダマされやすい(笑)」

その口調は愛情に溢れていました。

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 幸宏さんは、今年はソロ・デビュー40周年を迎えられました。御年66歳とは、とても思えません。それどころか、ますます精力的に活動をなさっています。

鈴木慶一さんとのユニット、ザ・ビートニクス名義にて、ニューアルバム『EXITENTIALIST A XIE XIE』を出されたばかり。夏にかけてライブ活動も行われますが、すでにチケットは売り切れ続出です。

ソロ活動としては・・

 

「秋にかけて、ソロ・デビュー・アルバムである『Saravah!』のスペシャル・ヴァージョン盤を出す予定です。再現ライブもやります。なんと40年前のマルチトラック・テープが残っていたのです。でも、ずっと当時の自分のヴォーカルには不満がありました。なにせバックコーラスで、山下達郎さんや吉田美奈子さん等が参加しているアルバムですから(笑)。そこで、今の自分の声で、ヴォーカルを録音しなおしたのです」

 

これは楽しみですね。私のような古くからのファンには、たまらない一枚となるでしょう。幸宏さんの声質は独特の透明感があって、聞いていて実に気持ちがいい。

 

「当時はコンピューターを使う以前の録音なのですべてが生音。教授(坂本龍一さん)のアレンジもスゴイ。多くのミュージシャン仲間に参加してもらいましたが、当時の音を聞いていると、皆んなまだ若かったのにウマいなぁ、と思います」

 

それにしても、幸宏さんの話を聞いていると、日本の音楽界やファッション界で、もはやレジェンドとされている方々のお名前がポンポン出て来て、「この方は、本当にスゴイ存在なのだなぁ」との感慨を新たにします。音楽とファッションの両方を、ここまで極めている方は他にいないでしょう。

 

幸宏さんへの思い入れを綴るとキリがなさそうなので、このへんで駄文を終えることと致します。幸宏さん、お忙しい中お時間を取って頂き、本当にありがとうございました!

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  • オフィシャル・ブログ

http://www.room66plus.com/

  • LIVE情報

【フジオロックフェスティバル 2018】

2018年8月2日

http://fujio-botsu10nen.jp/fujiorock

【SUMMER SONIC 2018】

2018年8月18日

http://www.summersonic.com/2018

【THE BEATNIKS Billboard LIVE公演】

2018年8月14日(東京)、8月23日(大阪)

http://billboard-live.com

  • 新譜

『EXITENTIALIST A XIE XIE』

(ザ・ビートニクス / エキジテンシャリスト・ア・シェーシェー)好評発売中!

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赤石貢一郎さん

赤石貢一郎さん

 グレーディーS.R.L社長

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グレーディーS.R.Lの社長、赤石貢一郎さんのご登場です。同社は、ナポリのサルト「ルカ・グラッシア」やタイの「スパッカ・ネアポリス」、ニットの「フランカ ペルージャ」、レザーの「リフージョ」、カプリシャツの「マッシモ・ダウグスト」、そしてバッグの「アカーテ」など、8つのブランドをイタリアから輸入・企画している新進のアパレル・インポーターです。これらのブランドは最近、有名セレクトショップなどでも取り扱いが増えているため、目にしたことがある方も多いでしょう。

かつて在籍していた親会社のギャレットでは、ファッション雑貨の国内営業をご担当されていました。若干35歳で社長に大抜擢された赤石さんにとって、イタリア人と直接やり合うのは始めての経験です。

「イタリア人はクリエイティブだけれど、頑固なところもありますね。彼らの個性を尊重しつつも、社長として対等に付き合い、日本のマーケットに合った商品を提供しなければならない。そこが一番難しいところです」

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ヘビーオンスのリネン・スーツは、ルカ・グラッシアで仕立てたもの。ナポリ発の注目サルトです。

「三代続く、クラシックなテーラーです。しかし三代目のルカはアーティストに近く、とても新しい感覚を持っている。特徴としてはラペル幅が広く、ベントが深い。これがジャケットの独特の色気を生んでいます。またサルトなのに、シーズンごとにテーマがあるのも面白い。ちなみに今季のテーマは“水と土”です」

 

タイは、スパッカ・ネアポリス。こちらもナポリです。

「ニコラ・ラダーノという人が、学生時代から始めたブランドです。お父さんがネクタイ・コレクターだったとか。自分で小紋の柄からデザインしてしまう、こだわりがすごいです」

 

 シャツはバルバ。

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 時計はパネライのルミノール。

「25歳の時に自分へのご褒美として買いました。シンプルでどんなスタイルにも似合うところがいいですね。ストラップは後付けなのですが、実は私の父親に作ってもらったものです。父の本業は消防士なのですが、昔から手先が器用で、私にいろいろなモノを作ってくれるのです。頼みもしていないのに、ある日突然、財布が送られてきたりします(笑)」

それは素晴らしいお父上ですね。ステッチもキレイで、まさに玄人はだしです。

 

靴はジョン ロブのロペス。私も大好きな一足です。

 

 ちらりと見えるシューズ・イン・ソックスは、ギャレットのオリジナル。かつて赤石さんは、こういったものを扱われていました。

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さて、赤石さんと話していると、どうしても、この言葉が頭に浮かびます。

それは“いい人”という言葉。とことん温厚なお人柄です。

 

例えば、こんなエピソードがあります。

「若い頃働いていた家具ショップで、大事故に遭いました。ノコギリで間違って自分の親指を切り落としてしまったのです。しかし、その時心配だったのは、指のことよりも、『社長に怒られる!』ということでした。血をどくどく流しながら、『すみません、すみません』と何度も謝っていました・・」

その後、親指は無事くっついたので、皆さんご安心を。しかし、とことんお人好しですねぇ・・

 

私が調子に乗って、赤石さんって、怒ったりすることあるのですか? と聞くと、

「半年にいっぺんくらいかなぁ・・」と頭をポリポリ。

その理由は何でした? と尋ねると、

「すみません、覚えていません・・」とのお答え。

 

以前このブログにご登場頂いたギャレット専務、藤原寛一さんは、実は赤石さんの上司にあたるのですが、曰く、

「今回のプロジェクトは、一緒にやっていて楽しい人間とやりたかった。だから彼を社長に抜擢した」そうです。

 

バリバリ仕事はこなすけれど、ツンケンしたタイプより、コツコツと実直で、温かい人のほうが出世する―——これが世の中の真理です。そのお人柄は、きっとイタリア人にも通じますよ。がんばって下さいね!

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ルカ・グラッシアの最新コレクションより。

島田雅史さん

島田雅史さん

 ザ・クロークルーム代表取締役

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ジャケット¥204,000、シャツ¥26,000(ともにオーダー価格)The Cloakroom

銀座に昨年末オープンしたばかりのテーラー、ザ・クロークルームの島田雅史さんのご登場です。ザ・クロークルームは、今までにないオーダーメイド・ストアです。もともとはオーストラリアのブリスベンが発祥の地。現在はオーストラリアの他に、カナダのモントリオールにもショップがあります。イギリスやイタリア発のお店が多い中、これは異色です。オーストラリアのファッションって“クロコダイル・ダンディー”くらいしか思いつきませんが・・

「オーストラリアは長い間、ファッション後進国だとされてきました。ファッション雑誌がなく、情報が入ってこなかったのです。しかし、近年のSNSブームで、インスタグラムなどから、最新のファッション情報が手軽に入手できるようになりました。そこで好景気が続いていることもあり、一気にお洒落熱に火がついたのです」

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現在オーストラリアでは、クラシック・ファッションが大ブームだそうです。しかも、オーストラリアのザ・クロークルームで売られているのは、ほぼすべて日本製の洋服だとか。

「実は私が前職のときに、日本の作り手を紹介したのです。もともと彼らはイタリアなどにオーダーしていたようなのですが、納期が遅く、不良品が多いことに悩まされていました。ところが日本の工場は、納期は早いし、作りも正確。それにオーストラリアでは、クリーンでキレイな作りの服が好まれるのです。そういった服作りは、日本が最も得意とするところですよね」

 

いわば逆輸入的に日本へ上陸したザ・クロークルーム。銀座のお店で扱っている服も、当然日本製です。

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 ジャケットは、ザ・クロークルームのオリジナル。やはり日本が誇る尾州、葛利毛織のモヘアを使って、日本で仕立てたものです。

「これは自慢の新作です。19世紀の頃の洋服からヒントを得てデザインしました。胸に吸い付くようなシルエットでエレガントでしょう? パターンを作るのに1年かかりました」

 

ちらりと見えているホワイトのリネンベストも葛利毛織で作ったオリジナル。

「白いベストをトレードマークにしようかなと思っているんです」

 

パンツは、m039。パンタロナイオの尾作隼人さんが手がけたブランドです。

「尾作さんとは、同じ年で、いつも気になっている“心の友”のような存在です。以前尾作さんがこのブログに出たときも、しっかりチェックしていましたよ(笑)」

 

シャツは、ザ・クロークルームのオリジナル。生地は英国トーマスメイソン、縫製はポーランドになります

 

タイは、フランスのドーメル。ザ・クロークルームで扱っているものです。この店は、本当にインターナショナルですね。

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カフリンクスは、英国のアリスメイドディス。

お店ではダブルカフスのシャツに力を入れているそうです。

 

シューズは、職人・江川治さん率いるアルテアルト。

「サウンドクリエイトという日本屈指の高級オーディオショップでオーダー会が開かれていたときに作ったものです。同時になぜか、ギャッベ(ペルシャ絨毯に似た高級敷物)オーダー会も開かれていました(笑)」

瀟洒な靴が店の床に敷かれた、豪華な大理石によくお似合いです。

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現在ではメンズ・ファッションの世界では、名の通った存在となった島田さんですが、東京に出てきた頃は、何もかも知らない若者でした。

「生まれは茨城件の土浦です。地元のデル・ボマーズという(全国的に有名な)古着屋でバイトを始めたのが、この世界に入るきっかけでした。その後東京に出てきて、某アパレルブランドへ入ったのですが、その頃の私は本当に、何も知りませんでした。最初の配属で伊勢丹担当になったのですが、当時の私は、なんと伊勢丹デパートを知らなかったのです。『イセタンって何ですか?』と聞きました(笑)」

 

現在凝っているのは、写真撮影。ショップにはプロが使うようなカメラとストロボのセットが置いてありました。

「インスタグラムへ投稿する写真を撮影するために買いました。自分たちでやれば、お金もかからないし」

 

ファッション雑誌を生業としてきた私には、なんとも困った時代になってきました・・。でも、島田さんには昔からお世話になっているので、ぜひ成功していただきたいです!

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THE CLOAKROOM TOKYO

東京都中央区銀座7-10-5 ランディック第3銀座ビル5階
TEL:03-6263-9976
https://thecloakroom.jp/

 

松田修和さん

松田修和さん

 ドーメル青山店 店長

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 今年で創業176年の歴史を誇る老舗、ドーメルの青山店店長、松田修和さんのご登場です。ドーメルは会社はフランス、工場はイギリスにあって、その両者のいいところを取り入れた生地で知られています。がちがちのブリティッシュではなく、フランス風のスノビッシュな感じがするところが魅力なのです。

私もここんちのスーツを一着持っていますが、イギリスやイタリアのスーツとは、一線を画した存在感が魅力です。なんというか・・成熟した大人の色気といったものがあるんですよね。フランス贔屓の方には、ぜひお試し頂きたいブランドです。

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スリーピースのスーツは、もちろんドーメル。

「こちらは“DORSILK”という生地を使って作りました。シルクとウールを混紡した生地で、シルクは55%ほども使われています。光りすぎない、上品な光沢が特徴です。春夏の素材として、まずおすすめしたいものですね。シルクは夏でもべたつかず、さらっとしているんです。普通はジャケット用として使うのですが、私はパンツも作ってしまいました」

 

スリーピース¥345,000(オーダー価格)、ネクタイ¥16,000 Dormeuil

 

ネクタイもドーメルの新作。

 

シャツは、パリで買ったトーマス・ピンクです。

「ドーメル以外のブランドも、よく買ってしまうんですよ。これは英国製らしいカッチリとした作りがいいですね」

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カフスはドーメル。

「本国のCEO、ドミニク・ドーメル氏とお揃いです。しかし彼のものは、ゴールドでしたが(笑)」

 

シューズはナポリのパオロ・スカフォーラ。

「ハンドソーンでフィット感がいい。イタリア製なのに、ロングノーズではなく、英国っぽいところが気に入りました」

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松田さんは、かつてミユキハンドレッドクラブという銀座のセレクトショップに在籍されていました。その名前を、懐かしく思い出される方も多いでしょう。

「愛知県の出身なので、名古屋に本社を持つ御幸毛織に入社しました。そこではいろいろなことを経験させてもらいました。ミユキハンドレッドクラブ時代に東京に異動になって、現在のバーニーズ ニューヨークの裏にあった店で働いていました。高級路線で、キートン、アットリーニ、ベルベスト、バルバにボノーラ・・いわゆるクラシコ・イタリアのブランドは全部扱いました(笑)」

 

その時の経験が、今の仕事に役立っているのは、言うまでもありません。

 

「かつてはテキスタイル・デザインを担当していたこともあり、服地を見ることが大好きなんです。生地のテクスチャーを見てしまうんですよね。例えば、今着ているチェックも、よく見ると明暗2種類のオレンジ色を使ってある。もしも同じオレンジだったら、もっと派手に見えるはずです。色というものに興味があって、かつて色彩コーディネイターの資格を受験して取得したこともあります」

 

色に対する知識を、現在の接客にも取り入れています。

 

「“顔映り”ということを気にしています。服地とお客様の顔を比べつつ、似合うかどうかを考えます。同じグレイ、同じネイビーでも、さまざまな色があり、肌の色によって似合うもの、似合わないものがあるのです」

 

なるほど、そういったことは、自分ではなかなかわからないですよね。どんな生地が自分に似合うのかわからない方は、ぜひ青山ツインタワーのドーメルへお出かけ下さい。松田さんの選ぶ生地なら、間違いなさそうです。

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ドーメルの誇る春夏素材”DORSILK”

https://www.dormeuil.com/jp/

関口猛さん

関口猛さん

 オンワードパーソナルスタイル代表取締役社長

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 オンワードパーソナルスタイル社長、関口猛さんのご登場です。関口さんが指揮する“カシヤマ ザ・スマートテーラー”は、画期的なオーダーメイド・システムとして、いま話題です。どのへんが、他と違うのでしょうか?

「採寸は、こちらから会社やご自宅へ伺います。2回目からはネット上で生地を選んで頂くだけで、ご注文が可能です。価格は3万円から。納期は最短1週間です。特殊な圧縮パックに入れてご自宅までお届けします。パックから出して、しばらく吊るしておくと、ちゃんとスーツの形になるのです」

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へぇ〜、スゴイですね! 開発には、さぞやご苦労があったことでしょう。

「実は、オンワードに存在していた、数々のシステムを組み合わせただけなのです。もともと弊社には訪問採寸の部隊がいて、年間に数万着もオーダーを取っていましたからね。こだわったのは1週間という納期で、週末にオーダーすれば、翌週末には届いて、月曜日から着ていける。『欲しい!』と思ったモチベーションが下がらないうちに商品が手に入るというのが大事かと。それから自社工場なので、自分たちですべてのクオリティをコントロールできるところも強みですね。物流も見直して、中間マージンを徹底的に抑えました。圧縮パックを採用したもの、その方が輸送費がかからないからです。“いいものを安く”を突き詰めたら、自然といまの形になったのです」

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本日お召しのスーツも、カシヤマ ザ・スマートテーラーでオーダーしたもの。

「自分でネットから注文したものです。商品のテストを兼ねて、自分だとバレないよう、別の名前を使ってオーダーしました。はい、自腹です(笑)」

 

 一枚仕立てのタイは、かつてオンワードがやっていたセビロ&コー。

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 シャツは、銀座・和光のオーダーメイド。

「研究のために買ったのですが、これがよく出来ているんですよ(笑)」

 

シューズは、エドワード・グリーン。

「今日は社内で大切なプレゼンがあったので、カタめの靴を履きました。基本的には、シンプルでアンダーステイトメントな装いを心がけています」

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95年にオンワードへ入社してからは、ずっとカルバン・クラインをご担当されていました。

「カルバン・クライン本社のあるニューヨークへは、年5、6回ほど行っていました。そこでの経験は、本当に勉強になりましたね。例えば、同じグレイでも、彼らは100種類くらいを使い分けているんです。青っぽいグレイ、赤っぽいグレイ、黄色っぽいグレイ・・。そして、そのすべてに名前が付いている。プラチナム、スチールグレイなどなど。それらのコーディネイトを、真剣に考えているんです。その影響で、いまだにトーン・オン・トーンのコーディネイトが多いですね」

 

さらに遡って学生時代には、ヨット、そしてボーイスカウト活動にいそしまれていました。

「ヨットでは突然の風に流されてしまい、死にかけたことが何度かあります。それからボーイスカウトの活動では、高校生の時に、食料をまったく持たずに無人島へ上陸し、1週間滞在したことがあります。蛇を捕まえて焼いてみましたが、縮んじゃって、とても食べられませんでした。それからビニールシートを使って、海水を蒸発させ、真水に変えることも試してみましたが、得られた水は、しょっぱくて、飲めたものではありませんでした。1週間後には、体重が12〜3キロ減っていました(笑)」

ボーイスカウトの活動って、もっとマイルドだと思っていました・・

 

関口さんは、根っからのアウトドアズ・マンで、何かに挑戦することが大好き。そのチャレンジ精神が、ザ・スマートテーラーにも生かされているようです。

「新しいテクノロジーは、どんどん取り入れていきたいですね。例えば、ゾゾ・スーツのように、自分で採寸ができるようなシステムも、ご提供していきたいです。どうか、ご期待下さい!」

 

オーダーメイドの新時代は、この方が切り拓いていくのでしょう。

 

カシヤマ ザ・スマートテーラー https://kashiyama1927.jp/

 

平塚雄三さん

平塚雄三さん

 弁護士

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 さまざまなご職業の方が登場するのが、このブログの特徴でもありますが、今回は弁護士先生です。都内の法律事務所に所属なさっている、平塚雄三さんです。

弁護士というと、一般の方はあまり馴染みがなく、ちょっとカタそうで、近寄り難いイメージですよね?

「裁判長、異議あり!」みたいな。

しかし今回、平塚さんにお会いして、その印象が大分変わりました。

 

「古着が好きで、よく高円寺あたりをうろついています。もともと阿佐ヶ谷の出身で、大学が高田馬場でしたので、中央線沿線が落ち着くのです」

ウチのフジタに、似ていますね。

 

「予備自衛官として登録をしています。普段は弁護士をしていますが、危急の際には、戦場で戦います。格闘訓練や、実弾を使った射撃訓練も受けていますよ」

えええ、マジですか?

 

「趣味はトライアスロンです。10年前から始めて、一昨年からは、ホノルルで行われる大きな大会にも出場しています。バイク40km、スイム1.5km、ラン10kmと、なかなかタフですね」

すごい。私なら、途中で死んでいます・・

 

まぁ、ぱっと見、ここまでお洒落な弁護士先生がいるとは驚きでした。それには理由があって、実は平塚さんのファッションの師匠は、メンズ・ファッション界の大ボス、赤峰幸生さんなのです。知り合ってから、もう10年以上経つそうです。

 

「赤峰先生には、お洒落は“基本のき”が大切で、そこをしっかり学ぶことが肝要なのだ、と教わりました。それと男は外見だけ繕ってもだめで、中身が伴わないとダメだとも諭されました」

はい、私も同じことを言われています・・

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 スーツは、アカミネ ロイヤルラインで仕立てたもの。テーマは“裁判で勝てるスーツ”です。

「モヘヤ製で、折り目正しく見えるところがいいですね。『これなら、どこへ出ても恥ずかしくない』と言われて作ったものです。もう10年も着込んでいますが、ようやく体に馴染んできたように思えます」

やはり弁護士先生は、きちんとした格好をなさっていますね。

 

「クールビズの影響でしょうか、裁判所でも、カジュアルな格好の方を見受けることがあります。ジャケットにノータイ・・中にはスニーカーの方もいます。しかし、私は法廷では必ずスーツを着ます。職業としての歴史や、顧客からお預かりしている事件の重みに相応しくない格好はできないのです」

 

シャツも、アカミネ ロイヤルラインのもの。

「先達から教わった所作として、私は打ち合わせの際には、白いシャツしか着ません。これは真っさらな気持ちで、お客様の話を聞くという姿勢を表しているのです。われわれが扱っているのは、国内の身近な案件が多い。例えば、離婚や兄弟間の確執、お金の貸し借りのトラブルなどです。いわば人間社会の裏側を見る仕事なわけで、相手の方の本当の気持ちを聞き出すということが、とても大切なのです」

 

タイは、やはり赤峰さんから薦められたリベラーノ。

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 時計は父親から譲り受けた、グランドセイコー。レザー・ストラップは、友人が作ったものに交換してあります。

シューズはアレン・エドモンズのコードバン製。

 

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愛用の万年筆は、モンブラン。かつて日立造船の社長をなさっていたおじいさまの形見で“A LIFE DEVOTING TO SHIP BUILDING”(造船に捧げた生涯)とのメッセージが刻まれています。こういうものは、お金では買えませんね。

 

実は、平塚さんのひいおじいさまは、元・東京都知事、東龍太郎氏です。

「ダンディな人でした。いつも自宅の池の前で、シガーを燻らしていたのを覚えています。その匂いを嗅いだのが、大人の世界の入り口だったような気がします」

いまではシガーは、趣味のひとつだとか。

「私のスタイルの原点は、曽祖父にありますね」

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 なぜ、弁護士になったのですか? との問いには、

「弁護士が主人公のドラマを見て、かっこいいなぁと思ったのがきっかけです(笑)。私も正義の味方になりたい、と。しかし実際に弁護士になってわかったのは、弁護士は正義の味方ではなく“われわれを信頼してくれる人の味方”でなければならない、ということです。法廷では、何よりも勝たなければならない。日々是戦いです」

 

なるほど、この先生なら、何かあったとき、とても頼りになりそうです。できれば、顧客ではなく、友人としてお付き合いさせて頂きたいですが・・

 

牧野孝一郎さん

牧野孝一郎さん

シャロン チーフ

text kentaro matsuo  photography susumu tsunoda

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最近、私やらフジタやらが入り浸っている南青山のセレクトショップ、シャロンの牧野孝一郎さんです。シャロンはサルトリア ソリートやシャマットなど超高級ブランドを扱っており、その独自の品揃えが高い人気を博しています。

1992年生まれ、弱冠25歳の牧野さんですが、紳士服業界におけるキャリアは7年に及びます。ここシャロンでも、チーフとしてフロアを任されているのです。

「私は大阪出身なのですが、シャロンのホームページを見て、そのラインナップに魅せられて、どうしてもここへ入りたいと思いました。そこで、面接を兼ねて上京したのです。実際にお店を訪ねたのは、この時が初めてでした」

ホームページだけで入社を決めてしまうところが、いかにも今の若者って感じです。

 

「弊社に置いてあるのは、皆何十万円もするような品ばかり。最初は怖くて商品に触ることすらできませんでした。初めてシャロンで売られている商品を自分で買って、袖を通した時には、あまりの着心地のよさ、そして肌触りのよさにびっくりしました。あの時の感動は忘れられません」

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ジャケットは、イタリア、プーリアのシャマット。一見クラシックなのに、よく見ると、ものすごく凝ったデザインやディテールを持っていて、お洒落上級者の間で話題のブランドです。

「盛り上がった肩山、丸い独特のポケット、深く切り込まれたベントなど、面白いディテールがいっぱいです。それでいて、着心地はとてもいいのです」

 

タイはナポリのE.G.カペッリ。

「ナポリのショップへ行った時に買いました。9cm幅の太めのツイルで、ヴィンテージの生地を使ったものです」

 

シャツはナポリのモンテサーロのス・ミズーラ。

パンツもナポリのレ・スパーデ。

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時計とチーフはしません。

「本当は自分の生まれ年である、92年のヴィンテージ時計が欲しいのですが・・」

シューズは、日本人靴職人、久内淳史氏が仕立てたイル・クアドリフォーリオ。

「私は扁平足で、甲が薄いのですが、そんな自分の足でも、うまく立体感を持った美しい靴を作ってくれました。味のある革がいいでしょう?」

使われている素材は、ホーウィン社のホースフロント。

 

もちろんすべて、シャロンにて扱っているアイテムです。

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コーディネイトで気をつけている点は、服の本来持っている力を引き出すこと。

「私は背が低く、肩幅が狭いので、それをカバーしてくれる洋服を選びます。背が低い人はコンパクトな服を着ると、ますます小さく見えてしまうので、ある程度肩幅があるものを選んだほうがいいのです」

背が低い人へのファッション・アドバイスには自信があるそうですから、お悩みの方は彼に相談するといいと思います。

 

「手縫いの文化を後世に伝えていきたいと思っています。どんどん職人さんがいなくなってしまっているのです。今のセレクトショップを担っているのは、4〜50歳代の人が多いですよね。20年後には、私もトップといわれるような人になっていたいです」

 

彼のような若者が、日本の、そして世界のファッションを背負っていくのだなぁと思いました。

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Sharon シャロン

東京都港区南青山6丁目6−21 グロービル青山1F 〜4F
Tel. 03-6418-5131
営業時間:12:00am〜20:00pm(不定休)
URL: http://sharon-shop.jp/

 

 

 

林博文さん

林博文さん

某英国ラグジュアリーブランド 銀座本店ジェネラルマネージャー

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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銀座界隈のブランド好きの間では、知らぬ者はいないといわれる有名ショップマネージャー、林博文さんのご登場です。業界では、販売の天才と言われており、若い頃から彼が店長になると、あっという間に売上げが伸びることで知られていました。ご出身は、大分県佐伯市というところ。

 

「もともとは九州の地元企業で働いていました。コンビナートを擁する大会社で、作業着にヘルメットを被っていたこともありました(笑)。でも、どうしてもファッションでメシを食うという夢を捨てられなくて・・。上京してファッションの学校へ通い始めたのです。そんな時、中野の丸井で販売補助のバイトをしました。そうしたら、なぜかメチャクチャ売れてしまって・・・販売って、面白いなぁと思いました」

 

DC全盛の時代、入社したブランドでは、すぐに売上げ上位となり、3年目にして店長に抜擢されました。そうしたら、その店が売上げ全国1位となりました。その後に携わったブランドでも、成績はずっと右肩上がり。

 

「どうしたら、そんなに売れるのですか? コツは何ですか?」との質問には、腕を組んでしばらく考えた後、

「単品を押し付けるということはしません。必ずトータルなスタイルをご提案します」

「ニーズと提案は違います。例えばあるアイテムを買いに来た人に、まったく別の、意外性のある商品をおすすめしたりします」

「お客様がまわりから、どう評価されるかということを考えています。その人が自分でも気付いていない自分を、見せてあげたいと思うのです」

 などなど。

 林さんと私のご縁は古く、もう知り合ってから、15年以上になります。基本的にはラグジュアリーブランドのプレタポルテをご担当なさっていますが、林さんの得意技は、それぞれの顧客に合わせた、きめ細やかなお直し&オーダーメイドで、私も昔はずいぶんと林さんに洋服を作ってもらったものです。そしてそのうちの何着かは、今でも毎週のように愛用しています。

作ってもらった当時は、「ちょっと細すぎるのではないかな」と思ったりもしましたが、時が経つにつれそれが、「ちょっと太すぎるのではないかな」に変わり、いままた「ちょうどいい」と思えています。そのへんが林マジックで、多くの顧客を虜にするワザなのかもしれません。

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スリーピースは、ドーメルのトニックで仕立てたもの。一見するとブリティッシュ・スタイルですが、林流の遊び心が随所に散りばめられています。

 

「ターンナップ・カフで、シングルのピークトラペルですが、ウエストコートはダブル。パンツのポケットは、珍しいクロスポケットとしました。パンツの股上を深く、ウエストコートを短くして、脚が長く見えるよう工夫してあります。センターベントで後裾にゆとりを持たせ、後ろ姿がエレガントになるよう仕立てました」

なるほど、なかなかここまでこだわりを持てる人はいません。

 

自分で結んだボウタイと、ラウンドカラーでやはりターンアップ・カフのシャツもポイントです。

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時計は、ジャガー・ルクルトのレベルソ・デュオ。

リングはアンティークに自らのイニシャル“H”を彫っています。

 

シューズは英国製のサイドゴア・ブーツ。流麗なラインがキレイです。

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「販売の極意とは何ですか?」との問いには、これまたしばらく考えた後、

 

「例えば、もし超有名ブランドのデザイナー本人が店に立っていたとして、彼が『君にはこれが似合う』と言ったら、お客様は100%買いますよね。私もそんな存在になりたいのです。『お前がすすめるなら、買うよ』と言われるような、存在になることが極意でしょうか?」

 

なるほど、これは深く、また難しい道でありますね。

「販売一筋で30年間やってきて思うのは、販売には正解がない、ということです。それぞれの販売員がそれぞれのやり方を持っており、どれが正しいということはありません。しかし、ひとつ言えることは・・販売とナンパは違うということです(笑)。よく口が立つから、オンナを引っ掛けるのもウマいでしょうと言われるのですが、お客様に声をかけることは出来ても、女性に声をかけることなんて、とても出来ません(笑)」

 

林さんは根っから、ファッションというものが大好きな人です。そこには、「売りつけてやろう」という邪念がありません。そういった真摯な心が、買う人の心に響くのではと思いました。

 

 

田野浩志さん

田野浩志さん

guji代表取締役

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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 2006年に京都にてオープンした第1号店を皮切りに、現在では全国に9店を構えるguji/ring(グジ/リング)の代表、田野浩志さんのご登場です。いま急成長しているショップの社長ということで、もっとギラギラした感じの方を想像していましたが、昨年初めてお会いして、そのイメージは180度変わりました。とても温和でユーモア溢れるキャラクターなのです。

 

「関西の出身なので、どこか“三方よし”(近江商人の心得を説いたもの)を目指しているのかもしれません。つまり“売り手よし、買い手よし、世間よし”、すべてが丸く収まるような商売です。以前は『成功していい生活をしたい』とか『ライバルを蹴落としてやろう』と思っていた時期もありましたが、今ではメンズ・ファッション業界全体を盛り上げていきたいと思っています」

 

田野さんはもともと、シップスのご出身です。大学生時代より京都のシップスにてバイトを始め、20代にして店長にまで登りつめました。私が「相当なやり手だったのですね」と聞くと、

 

「セールスについて言えば、そこそこは売る方でしたが、決して売り上げが突出してよかったわけではありません。ただ、少しだけ世渡り上手だったのかもしれません。当時のファッション業界にはコワイ先輩たちがたくさんいて、若い連中は皆ビビっていましたが、そういう人たちと付き合うのは得意でした」

なるほど、人付き合いって、仕事がデキることと同じくらい大切ですよね。 そんな“好感度”を大切にする姿勢は、着るものにも表れています。

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オリジナルのシルク混スーツ¥120,000、ジレ¥35,000 、タイ¥24,000 all by guji

スーツは、gujiのオリジナルで、リングヂャケットにて作ったもの。

「リングヂャケットの大定番である184というモデルを、guji風に、ちょっとシャープにしたものです。素材はカルロ・バルベラのシルク混で、ほんのりとした光沢があります。世間では、英国調の渋い服がトレンドですが、お客さんからは、『もう少し、艶っぽいものが着たい』という声もよく頂くのです。そこでこのスーツを作りました」

 

シャツは、ルイジ ボレッリ。

「このところ、ピンホール・カラーやタブ・カラーを着ることがままあります」

 

タイは、アット ヴァンヌッチ。フィレンツェ発のネクタイ・ブランドです。

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 ブレスレットはエルメス。

「その昔、シップスの社員旅行でハワイへ行った時に買いました」

社員旅行でハワイとは、羨ましい限りです。

 

指輪はカルティエの3連とgujiオリジナルのカレッジリング。

時計はロレックス。

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シューズはオールデン。

「オールデンは大好きで、シップス時代には随分と集めたものです。一時、12〜3足は持っていました。しかし、起業するときにお金がなくて、全部ヤフオクで売ってしまいました(笑)」

ちらりと見えるソックスはパンスレラ。なんとラメ入りです。

 

「ウチの店のテーマは、イタリアらしい色気と艶を大切にすることです。ですから、こういった一見コンサバな装いでも、シルク入りのスーツやサテンのタイ、コードバンの靴などで、ちょっとした華やかさを演出します」

 

インタビュー中もひっきりなしにお客さんが出入りしており、その度に田野さんは席を立って、丁寧に挨拶をされていました。それぞれの人の名前と近況を覚えておられ、関西弁でのジョークも交えつつ、話が弾みます。田野さんと話しているときのお客様は、笑顔が絶えませんでした。

 

gujiの躍進の秘密は、この方の傑出した“人当たりのよさ”にあるのだと思いました。

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