From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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高橋幸宏さん

高橋幸宏さん 

ミュージシャン、デザイナー

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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ミュージシャン&デザイナーの高橋幸宏さんのご登場です。

幸宏さんといえば、かつて“サディスティック・ミカ・バンド”や“イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)”で一世を風靡し、その後もソロ活動のかたわら、鈴木慶一さんとのバンド“ザ・ビートニクス”や、原田知世さん等との”pupa”、最近では小山田圭吾さんやTOWA TEIさん等との”METAFIVE”での活動をはじめ、数々のミュージシャンのプロデュース、ファッション・ショウの音楽、映画のサウンド・トラックを手がけられるなど、常に日本の音楽シーンをリードされてきた第一人者です。

 

かく言う私も中学生の頃、YMOに夢中になり、幸宏さんがデザインされた通称”人民服”と呼ばれていたジャケットを真似て、人民服と丸いサングラスを買って、プチYMOを気取っていたものです。当時は今のようにネットやらインスタやらがなかったので、雑誌やレコジャケに掲載される幸宏さんの格好を見ては、一生懸命にマネをしていました。

 

幸宏さんは、ファッショニスタとしても超一流で、ご自身のブランド“バズ・ブラザーズ”、”ブリックス”、“ブリックス・モノ”、“YUKIHIRO TAKAHASHI COLLECTION”などのデザイナーを歴任なさっています。当時の私は、渋谷パルコ内にあったブリックスの店に恐る恐る近づいては、店員さんに声をかけられ、慌てて逃げ去るということを繰り返していました。

 

音楽においては、11歳からドラムを叩き始め、学生時代からスタジオ・ミュージシャンとして活躍し、19歳で武道館のステージに立ったという早熟の天才ですが、ファッションの方も、昔からスゴかったようです。

 

「僕は5人兄弟の末っ子なのですが、兄の影響で、中学生くらいからファッションに興味を持ち始めました。最初はアメリカン・トラッドでしたね。テイジン・メンズショップやVANが全盛の頃です。兄の世代は、皆それらのショップの紙袋に、アイロンを当てて持ち歩いていましたね(笑)」

 

19歳で武蔵野美術大学へ入ると、今度はお姉様(=伊藤美恵さん。ファッション業界では知らない人はいない、元祖アタッシェ・ド・プレス)から誘われ、バズ・ブラザーズのデザインを手がけられました。

「その頃には、ヨーロッパ志向になっていました。サンローランやセルッティ、レノマなどなど。20歳くらいから、姉とパリやミラノのコレクションにも通うようになりました。アルファ・キュービックの柴田(良三)さんや、タケ先生、加藤和彦さんなど、周りに面白い人がいっぱいいて、ずいぶんと影響されました」

私にとっては、キラ星の如き人たちばかりです。

 

「21〜22歳の頃には、トノバン(加藤和彦さんの愛称)としょっちゅうロンドンへ行っていました。“第一期、ロンドンが面白かった時代”です。グラムロックが流行っていて、ロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーやアンディ・マッケイがカッコよかった。ブティックでは、ヴィヴィアン・ウエストウッドの“レット・イット・ロック”や”グラニー”、マノロ・ブラニクの“ザパタ”など面白いお店がたくさんあった時代です」

ファッションへの情熱には、さらに拍車がかかります。

 

「ある日、ブリティッシュ・ヴォーグを見ていたら、イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュとマノロ・ブラニクのコラボ・シューズが掲載されていました。白いギャバジン製のプレーントゥ。その靴がどうしても欲しくて、トノバンとロンドンからパリへ、なんと日帰りで買いに行きました。いろいろな人から『いったい何のために?』と聞かれたのですが、僕の中では、『サンローランの靴を履いて、ドラムを叩いているのは、世界で僕しかいない』という自負があったのです。当時ドラマーといえば、長髪にタンクトップで、大汗かいているような奴ばっかりでしたから(笑)」

 

私が、幸宏さんって汗かかないイメージですよね。いつもクールにドラムを叩いて・・というと、

「いや実は、こっそり汗かいています(笑)」と。

 加藤和彦さんは本当にお洒落でしたね、との投げかけには、

「彼は世界のミュージシャンの中で、数少ないお洒落な人のうちの一人でした。実はミュージシャンって、あまりお洒落な人がいないのですよ(笑)」

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 シャツ、パンツ、シューズはすべてプラダ。

「プラダは昔から好きですね。これらはすべて今季ものです。基本的には、シンプルなスタイルが好きですね。今でも洋服はよく買うのですが、いつも同じようなモノばかり。よく人から『それ、前から持っていたヤツだよね?』と言われます(笑)。パンツなども何本も持っているのですが、コレクションごとに微妙にシルエットが違う」

 

自らもデザイナーだけあって、細部へのこだわりはハンパじゃありません。

「シャツの襟はぐるりと回して付けるので、下手なところだと、第1ボタンと第2ボタンの間が、妙に浮いてしまうものがある。それではダメなのです。一流ブランドのものは、すっきりと収まっています」

 

ハットはボルサリーノ。クラシックなブランドもお召しになるのですね、と感心すると、

「クラシックなアイテムもミックスします。やはり値段が相応にするものは、違いますね。いいモノはいい。実は(デザイナーの山本)耀司さんが被っている帽子もボルサリーノの特注だそうですよ」

 

 サングラスはオリバーピープルズ。製造を手がけるオプテック・ジャパンからは、YUKIHIRO TAKAHASHI EYEWEARもリリースされています。

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 時計はロレックスのデイトナ。

「趣味の釣りに行く時にもフツーに使っていたら、ベゼルの文字が擦れてなくなってしまいました。近々修理に出さないと・・」

 

他に好きなブランドは? との質問には、

「トム・ブラウンはよく着ています。定番ばかりですけれど。先日トム本人に会った時には、偶然にもトム自身とまったく同じコーディネイトをしていました(笑)。まあ、彼自身はいつも同じ格好をしてますからね。それから最近のグッチはいいですね。デザイナーが変わってから、本当によくなった」

 

soe(ソーイ)はどうですか? と続けると(ソーイのデザイナー、伊藤壮一郎さんは、前出、伊藤美恵さんの実子。つまり幸宏さんの甥っ子。つくづくファッション一家です)

「もちろん展示会に行って、ちょこちょこ買ったりしていますよ。あの子は、いちばん僕に似ているのです。ヒネくれていて、神経質で、病気に対してナーバスで・・しかもダマされやすい(笑)」

その口調は愛情に溢れていました。

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 幸宏さんは、今年はソロ・デビュー40周年を迎えられました。御年66歳とは、とても思えません。それどころか、ますます精力的に活動をなさっています。

鈴木慶一さんとのユニット、ザ・ビートニクス名義にて、ニューアルバム『EXITENTIALIST A XIE XIE』を出されたばかり。夏にかけてライブ活動も行われますが、すでにチケットは売り切れ続出です。

ソロ活動としては・・

 

「秋にかけて、ソロ・デビュー・アルバムである『Saravah!』のスペシャル・ヴァージョン盤を出す予定です。再現ライブもやります。なんと40年前のマルチトラック・テープが残っていたのです。でも、ずっと当時の自分のヴォーカルには不満がありました。なにせバックコーラスで、山下達郎さんや吉田美奈子さん等が参加しているアルバムですから(笑)。そこで、今の自分の声で、ヴォーカルを録音しなおしたのです」

 

これは楽しみですね。私のような古くからのファンには、たまらない一枚となるでしょう。幸宏さんの声質は独特の透明感があって、聞いていて実に気持ちがいい。

 

「当時はコンピューターを使う以前の録音なのですべてが生音。教授(坂本龍一さん)のアレンジもスゴイ。多くのミュージシャン仲間に参加してもらいましたが、当時の音を聞いていると、皆んなまだ若かったのにウマいなぁ、と思います」

 

それにしても、幸宏さんの話を聞いていると、日本の音楽界やファッション界で、もはやレジェンドとされている方々のお名前がポンポン出て来て、「この方は、本当にスゴイ存在なのだなぁ」との感慨を新たにします。音楽とファッションの両方を、ここまで極めている方は他にいないでしょう。

 

幸宏さんへの思い入れを綴るとキリがなさそうなので、このへんで駄文を終えることと致します。幸宏さん、お忙しい中お時間を取って頂き、本当にありがとうございました!

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  • オフィシャル・ブログ

http://www.room66plus.com/

  • LIVE情報

【フジオロックフェスティバル 2018】

2018年8月2日

http://fujio-botsu10nen.jp/fujiorock

【SUMMER SONIC 2018】

2018年8月18日

http://www.summersonic.com/2018

【THE BEATNIKS Billboard LIVE公演】

2018年8月14日(東京)、8月23日(大阪)

http://billboard-live.com

  • 新譜

『EXITENTIALIST A XIE XIE』

(ザ・ビートニクス / エキジテンシャリスト・ア・シェーシェー)好評発売中!

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赤石貢一郎さん

赤石貢一郎さん

 グレーディーS.R.L社長

 text kentaro matsuo photography tatsuya ozawa

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グレーディーS.R.Lの社長、赤石貢一郎さんのご登場です。同社は、ナポリのサルト「ルカ・グラッシア」やタイの「スパッカ・ネアポリス」、ニットの「フランカ ペルージャ」、レザーの「リフージョ」、カプリシャツの「マッシモ・ダウグスト」、そしてバッグの「アカーテ」など、8つのブランドをイタリアから輸入・企画している新進のアパレル・インポーターです。これらのブランドは最近、有名セレクトショップなどでも取り扱いが増えているため、目にしたことがある方も多いでしょう。

かつて在籍していた親会社のギャレットでは、ファッション雑貨の国内営業をご担当されていました。若干35歳で社長に大抜擢された赤石さんにとって、イタリア人と直接やり合うのは始めての経験です。

「イタリア人はクリエイティブだけれど、頑固なところもありますね。彼らの個性を尊重しつつも、社長として対等に付き合い、日本のマーケットに合った商品を提供しなければならない。そこが一番難しいところです」

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ヘビーオンスのリネン・スーツは、ルカ・グラッシアで仕立てたもの。ナポリ発の注目サルトです。

「三代続く、クラシックなテーラーです。しかし三代目のルカはアーティストに近く、とても新しい感覚を持っている。特徴としてはラペル幅が広く、ベントが深い。これがジャケットの独特の色気を生んでいます。またサルトなのに、シーズンごとにテーマがあるのも面白い。ちなみに今季のテーマは“水と土”です」

 

タイは、スパッカ・ネアポリス。こちらもナポリです。

「ニコラ・ラダーノという人が、学生時代から始めたブランドです。お父さんがネクタイ・コレクターだったとか。自分で小紋の柄からデザインしてしまう、こだわりがすごいです」

 

 シャツはバルバ。

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 時計はパネライのルミノール。

「25歳の時に自分へのご褒美として買いました。シンプルでどんなスタイルにも似合うところがいいですね。ストラップは後付けなのですが、実は私の父親に作ってもらったものです。父の本業は消防士なのですが、昔から手先が器用で、私にいろいろなモノを作ってくれるのです。頼みもしていないのに、ある日突然、財布が送られてきたりします(笑)」

それは素晴らしいお父上ですね。ステッチもキレイで、まさに玄人はだしです。

 

靴はジョン ロブのロペス。私も大好きな一足です。

 

 ちらりと見えるシューズ・イン・ソックスは、ギャレットのオリジナル。かつて赤石さんは、こういったものを扱われていました。

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さて、赤石さんと話していると、どうしても、この言葉が頭に浮かびます。

それは“いい人”という言葉。とことん温厚なお人柄です。

 

例えば、こんなエピソードがあります。

「若い頃働いていた家具ショップで、大事故に遭いました。ノコギリで間違って自分の親指を切り落としてしまったのです。しかし、その時心配だったのは、指のことよりも、『社長に怒られる!』ということでした。血をどくどく流しながら、『すみません、すみません』と何度も謝っていました・・」

その後、親指は無事くっついたので、皆さんご安心を。しかし、とことんお人好しですねぇ・・

 

私が調子に乗って、赤石さんって、怒ったりすることあるのですか? と聞くと、

「半年にいっぺんくらいかなぁ・・」と頭をポリポリ。

その理由は何でした? と尋ねると、

「すみません、覚えていません・・」とのお答え。

 

以前このブログにご登場頂いたギャレット専務、藤原寛一さんは、実は赤石さんの上司にあたるのですが、曰く、

「今回のプロジェクトは、一緒にやっていて楽しい人間とやりたかった。だから彼を社長に抜擢した」そうです。

 

バリバリ仕事はこなすけれど、ツンケンしたタイプより、コツコツと実直で、温かい人のほうが出世する―——これが世の中の真理です。そのお人柄は、きっとイタリア人にも通じますよ。がんばって下さいね!

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ルカ・グラッシアの最新コレクションより。