From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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鈴木貴博さん

鈴木貴博さん

 ドーメル・ジャポン 営業本部長

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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 創業1842年、現存する最古の服地ミルマーチャント、ドーメルの日本支社にて、営業本部長を務める鈴木貴博さんのご登場です。就職されてからは、服地業界一筋で、カキウチ、エルメネジルド ゼニア、そしてドーメルとキャリアを積まれて来ました。ゼニア時代には、なんと私の家内も同じ会社で働いていました。

「社内の飲み会で、奥様とご一緒したこともありますよ」と仰っていましたが、いやはやご迷惑をおかけしていないといいのですが・・

そして、鈴木さんの奥様も私のことをご存知です。以前アンジュノワールというセレクトショップのPRをご担当なさっていた頃、何度かお会いしたことがあります。しかし鈴木さんの奥様だとは、まったく存じ上げませんでした。世間は狭い、そしてファッション業界はもっと狭いですねぇ。お互い気をつけましょう(笑)

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スリーピースのスーツはもちろんドーメルのオーダーメイド。ドーメルは服地を販売する他に、オリジナルも充実しています。この形は“パリ”というモデルで、ちょっとフレンチ風のディテールを持っています(フィッシュマウスラペルなど)。実は私も、パリのダブルスーツを愛用しています。

「生地は“スポーテックス・ヴィンテージ”です。スポーテックスは、ドーメルで一番有名な生地で、開発されたのは1922年。その名の通り、当時はハンティング、レーシング、そしてゴルフなどのスポーツを楽しむためのものでした。太い糸を使ってしっかりと織られています。同時のウエイトは700gもあったそうですよ。今では、さすがにそんなにヘビーなものはありませんが、いいところはそのまま。つまり耐久性に優れ、スーツのシェイプがキレイに出るのです。テーラー好みの生地と言えますね。わざわざ昔のものを探し求めるマニアの方もいるのです」

ドーメルのスポーテックス、そしてモヘア素材の“トニック”は、服道楽なら必ずその名を知っている名作生地です。

ネクタイもドーメル・オリジナル。15.7(フィフティーン ポイント セブン)というスーツ生地で作られています。

「15.7ミクロンの極細ウールで織られているので、この名前がついています。実はコレ、7フォールドなんですよ。しかもフランス製。先の方まで芯地が入っていたりと、同じ7つ折りでもイタリア製とはちょっと違うところが面白いでしょう?」

ドーメルは英国製の生地を扱いますが、実は本社はパリにあります。だから、ガチガチのブリティッシュじゃなくて、ちょっとフランス風の遊び心があるのですね。そこがこのブランドの最大の魅力だと思います。

 

ハンドメイドのシャツもドーメル。職人がナイフでひとつひとつ生地をカットして作っているそうです。

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 カフスはかつて奥様がPRをなさっていたアンジュノワールにて購入したもの。アンジュノワールは、日本を代表する写真家・田原桂一さんがディレクションをなさっていた骨董通りのセレクトショップです。独自の審美眼をお持ちだった田原さんですが、惜しくも本年6月帰らぬ人となりました。

 

時計は、なし。

「時間に縛られない男だから・・」とうそぶいておられましたが、実は現在いいものがないか物色中だそうです。時計ブランドの皆様、セールスのチャンスです(笑)

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シューズはクロケット&ジョーンズ。ロンドンにて購いました。年に何度もヨーロッパと日本を往復する鈴木さんは、真の国際派です。

 

「高校、そして大学は、アメリカで過ごしました。最初はユタ州。州都のソルトレイクシティからクルマで2〜30分走ったマレーという田舎町に住んでいました。とにかく何もないところで、日本のことなんて誰も知らない。『日本にはアイスクリームってあるの?』と聞かれた時は閉口しました(笑)。それからシアトルに移って、シアトル・ユニヴァーシティで国際経済を専攻しました。でもあまり勉強はしなかったな。テニス、ゴルフ、スノーボードなど、スポーツ三昧の日々でしたね」

な〜んて軽く仰っていましたが、シアトル大ってアメリカ人にとっても難関ですよ。鈴木さんの語学力は推して知るべしです。

 

「卒業後は台湾へ行って、今度は中国語の勉強をしました。『英語だけではダメだ。次は中国語だ』と思ったのです」

 

う〜ん、うらやましい。今の世の中、語学は非常に重要ですからねぇ。実は私もロンドンへ留学(遊学)していたことがありますが、渡英後数ヶ月で学校を辞め、日本人の女の子と同棲してしまい、毎晩クラブで夜遊びばかりしていました。もしタイムマシンがあるなら、あの頃の私を張り飛ばしてやりたいです。

鈴木さんと話していると「若い頃の努力が、後年実を結ぶ」という当たり前の事実を、痛感させられます。

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ドーメルのスーツ生地15.7で作った7フォールドタイ。¥28,080

ドーメル青山店

〒107-0062 東京都港区南青山1-1-1 新青山ビル1F
TEL 03-3470-0251

http://www.dormeuil.com/jp

山本祐平さん

山本祐平さん

株式会社ケイド代表取締役

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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東京を代表するテーラーのひとつ、ケイドの山本祐平さんのご登場です。ファッション&マスコミ業界に幅広い交遊関係を持つ山本さんを、ご存知の方も多いでしょう。

私が「今の日本で一番お洒落かもしれない」と思っているお洒落の天才、フェアファクス コレクティブ社長、慶伊道彦さんの御用達テーラーとしても有名です。

「慶伊さんと初めてお会いしたのは、もう17年も前のことになります。それから100着以上は作って頂きました。いまでもよくお会いしていますし、最も話が合う方の一人です」

お互いに、アメリカ文化が好きで、アイビーやジャズの話をしていると、止まらなくなってしまうそうです。

 

山本さんの服作りのルーツは、幼い頃に観たアメリカ映画にあります。

「小学校6年生の頃、映画『スティング』を観て衝撃を受けました。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードを目の当たりにして、『世の中にこんなにカッコいい男たちがいるんだ』と仰天しました。それからは、もう映画三昧。映画館に通って3本立て500円の映画を貪るように観ました。私のスタイルのルーツは、間違いなくその頃に観た映画にありますね」

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スーツはもちろんケイド。テーラー&ロッジに別注したオリジナルのヘビーウエイトのシャークスキン生地で仕立てられています。カラーはミッドナイト・ブルー。

「ソリッド(無地)のダークスーツに白シャツ、そしてソリッドタイといったスタイルが多いですね。引き算の美学を追求しています。そういったコーディネイトの方が、着ている男のパーソナリティを引き出すのです」

 

シルク・バスケットのタイは、ケイドのオリジナル。

シャツもオリジナルですが、これは映画監督の小津安二郎氏へのオマージュだとか。

「小津監督はいつも同じような格好をしていたのです。万年筆を入れるための大きなポケットがついたストレートカラー(長めの襟)の白シャツに、コットンピケの帽子を被り、グレイのパンツを穿いていた。しかし、実はもの凄くお洒落な人で、帽子はダース単位、シャツも5枚ずつ作っていたそうです。そういった昔の男の美学が好きで、ウチでも同じモノを作りました」

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チーフはラルフ ローレン。

時計はカルティエのタンク。

「タンクは、ドレスからカジュアルまで、何にでも合う時計です。わざわざ趣のある1970年代のものを探して購いました。ちなみにスポーツをするときは、ロレックスのGMTマスタ—をしています。これは故・石原裕次郎さんやスティーブ・マックィーンがしていたのがカッコよくて」

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シューズはオールデンのタッセルローファー。

「足元でちょっと“抜く”のが私のスタイルです。素材はあえてのカーフで。サヴィルロウより、ニューヨークのマディソンアヴェニューの感じ。舞踏会より街で映える男。バシっとキメていても、どこかフランクな格好が好きなのです」

 なるほど、その感じ、わかります。それはかつて山本さんが在籍していた名店、ボストンテーラーの雰囲気に相通じるものかもしれません。

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「ボストンテーラーでは、仕立屋の原点となる経験を積みました。いまと違って当時のテーラーには、さまざまな職種のお客様がいました。クセの強い人がたくさんいて、それぞれの突飛なデザインや特殊なリクエストにも応えなければならなかった。そして当時は年初から新しいスーツを着るという習慣もあって、その年にオーダーを受けた服は、必ず年内に納めなければならなかったのです。振り返ると大変でしたが、とても勉強にもなりました」

 

そういう山本さんのところには、不思議と若い人が集まって来ます。

「お店の常連さんや、私が社員として雇っている職人の中にも20代の人がたくさんいます。今の世代は服作りはウマいけれど、そのバックグラウンドにあるカルチャーを知らない。そういったことを次世代に伝えていきたいですね」

確かに、山本さんの話す、昔のダンディたちのエピソードは、聞いていてとても面白いものです。皆その話術に魅せられてしまうのでしょう。

 

往年の本や雑誌、レコードに囲まれた、男のおもちゃ箱のようなケイドの店内で、山本さんの笑顔はひときわ魅力的でした。

 

テーラーケイド

 〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町42−15

Tel:03-6685-1101

http://www.tailorcaid.com/